1/8
序
原稿用紙三十枚程度のお話です。
昔昔、とある国の小さな村に、大きな瞳が愛らしくも印象的な、一人の不思議な少女が住んでおりました。
その少女の不思議とは、彼女が悲しみに涙すると、それが真珠に変わるというものでありました。
少女は、この不思議な力を厭うことはあれども、誇りに思うことは、一度としてありませんでした。それは、苦しみの源にこそなれ、喜びの源には決してならなかったからでございます。
ですが、背負ってしまった運命に、逆らう事はできませんでした。零したくなくとも、泣けば真珠が零れてしまうのを、どうすることもできなかったのであります……。