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灰色の鳥  作者: 伊川有子
番外編
70/73

記念番外編・お騒がせ魔女


ヤンキーな魔女総合評価6000p突破(下がっちゃったけど)&灰色の鳥総合評価2000p突破の記念番外編です。

ヤンキーな魔女とのコラボ作品になりますが、たぶん単体でも読めると思います。


本編終了後、短いです。





ポスッと小さな煙を吐いたそれに、中心の国の王妃であるエルヴィーラ――――通称ヴィラが怒鳴った。


「なんでそんな簡単なことができねえんだ!!」


「だって教え方下手なんだもの」


「なんだと!!?」


キー!!と怒りが頂点に達したヴィラを宥めるのは中心の国の王レオナード。

不機嫌に頬を膨らませて文句を言うレジーナを宥めるのはアダムである。


「ドカッとか、ズバッとか言われても分かんないわよ。

アダムの意味分からない錬金術講座の方が100倍マシだわ」


「氷の壁は作れるのになんで水は出せねえんだよ!!

それくらいなんとなくで分かるだろうが!!」


「一緒にしないで頂戴。

私は魔物の魔力使ってるんだから」


踵を返してさっさと部屋を出て行くレジーナの後を追うアダム。

ヴィラはレオナードの腕の中で尚も暴れまくる。


「待ちやがれええええ!!」



















レジーナが中心の国の王妃の弟子になってから早1年。

魔術の修行をするたびに騒ぎになり、男性陣総出動したのも片手では足りないくらい起こっていた。


そもそも錬金術という理の禁忌を犯したアダムとレジーナが、理の総本山とも言える中心の国の王城に住まうこと自体が異例である。

肩身が狭いというよりも、歓迎されていない、というのが正直なところ。

王と王妃はそうでもないのだが、特に頭の固い連中は2人を迎えることを快く思っていない。当然のことではあるが。


魔術の修行でぐったりしたレジーナの肩を撫でるアダム。

大抵のことならこなせる器用なアダムは平気なようだったが、どちらかというと不器用なレジーナは疲れ切っていた。


「まったく、恩人になんて扱いなの」


レジーナが言うのは神であった前世のこと。

月の女神であったらしい王妃と太陽神であったらしい王の逢瀬を手伝ったのは、愛欲の女神だったらしいレジーナなのだ。全てに“らしい”がつくのは、アダムから聞いた話だからだ。


「覚えてないなら仕方ないだろう」


「アダムはいいわよね、皆に猫っ可愛いがられて」


貴重な頭脳として重宝されているアダムはレジーナほど冷遇されていない。

実際にはレジーナが言うほど可愛がられてはいないのだが、特定の部署に限らず仕事をこなせるアダムは割と大切に扱われていた。


アダムは口端を僅かに上げてレジーナの頬に唇を寄せる。

レジーナはくすぐったさに身を捩ってアダムの首に腕を回した。


「お前ら!!今会議中だろが!!」


ヴィラの罵声が響く。

そう、今は大切な定例会議の途中であり、大勢のお偉い方がテーブルを囲って話し合っている最中。


「あら、放蕩して会議に出席しないランスよりマシじゃない」


「うぐっ・・・!!」


中心の国の第一王子であるランスは放浪癖の持ち主で、ほとんど国に帰って来ない困った人である。

息子のことを持ち出されたヴィラは口をつぐんで拳を握った。


「ヴィラ」


「・・・・わかったよ」


レオナードに名を呼ばれ、しぶしぶ拳を下ろして声のトーンを落とすヴィラ。


「でもせめてアダムの膝から降りろや!」


レジーナは不満そうに唇を尖らせてアダムの膝から降り、会議が始まってから20分経った今、やっとのことで自分の席に着いたのだった。





















執務室でぐったりしているのは男性陣。

気まぐれで突拍子もなく好き勝手にやらかすレジーナと、毎度お騒がせ事件を起こすヴィラのダブルパンチに振り回されているのはまぎれもなく男共であった。


逆に振り回している調本人である2人は至って元気いっぱいである。


「ううう・・・今月は破壊された城の修繕費が予算オーバーです」


宰相のルードリーフは嘆く。

レオナードの騎士であるアルフレットとヴィラの騎士であるシルヴィオは終始使いっぱしりさせられ、ここに居る誰よりも疲れ切った青い顔で項垂れていた。


「魔女って皆あんな感じなんすかね」


アルフレットは力無い笑顔で言う。


「予算どこから回しましょう・・・。

先月もオーバーしているというのに・・・」


「・・・腰が痛い」


「何故そこから予算を取るんだ。

調度品から捻出すれば問題ない」


「アルフレット、調書はどこへやったんだ」


ある意味ここもカオスである。

男性陣が働き蟻の如くあくせく働くレオナードの執務室に、廊下からパタパタと軽い足音と笑い声がだんだん近づいてくる。

部屋へ飛び込んで来たのはレジーナ、そしてその後を追うヴィラだ。


「ぎゃはははははははは!!もうやめてえええ!!あははははは!!」


「待てええええ!!」


唖然としている男性陣の前でレジーナをくすぐっているらしいヴィラ。

笑いの止まらないレジーナは身を捩って逃げようとするが、すぐに追いついたヴィラの手によって脇腹をくすぐられている。

ヴィラはまるで獲物を捕える肉食獣の如く真剣だった。


「わかった!!!ああははははあ!!もう・・・っ、苦しいってば!!」


「言うまで止めねえからな」


「いやっ・・・きゃああああ!!わかったって・・・あはははは!」


「残念だな!!アタシはもう騙されねえ!!」


「はあっ・・・あはははっ・・・ううっ・・・!」


顔を赤く染め息絶え絶えに呻くレジーナに一気に気まずくなる男性陣。

アダムは眉間にしわを寄せて頭を抱えた。


結局部屋へやって来た時のように逃げるレジーナを追ってヴィラも執務室を出て行き、静かになった部屋は書類が竜巻が通った後のように散乱している悲惨なものであった。

あれだけ暴れれば同然である。


「せっかく仕分けしたのに・・・」


「今月の予算表が・・・・」


「この書類、俺達が拾うんですかね・・・」


「・・・ハア」


「・・・・・」


なおも廊下から聞こえるレジーナの笑い声と爆発音、その他もろもろが破壊される音。


そして今日も、男性陣が総出動で片づけに奔走するのであった。




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