絶交
絶交した親友と5ヶ月ぶりに会った。
彼は信じられないことを聞いてきた。
「絶交の理由
何だっけ…?」
なんて奴だ。
俺は激怒した。
俺も覚えてないが。
長年の付き合いだ。
彼は
俺も覚えていないことを
すぐに察した。
ほっとした顔が
腹立たしい。
俺達は
思い出そうと
必死に議論を続けた。
下らない理由だったのではないか。
いや
下らない理由なら絶交までならない。
何か重大なことだったに違いない。
どちらかが裏切ったとか。
彼は慌てて否定する。
そんなことはしない。お前こそ。
俺も急いで否定した。
議論は暗礁に乗り上げた。
しかし、二人とも諦めない。
諦める訳にはいかない。
絶交というものは
人と人との約束である。
約束は守る必要がある。
犯罪者とか毎回嘘を付く者とならば
話は違うが。
しかし
今回の絶交は
信頼する親友との約束である。
絶対に守る必要がある。
そうでなければ
我々は親友ではなくなるから。
そして、
我々の友情を破壊した
その理由は
我々の友情の次元に
見合ったものでなくてはならない。
そうでなければ、
我々の友情を壊せるはずがないのだから。
その特
俺の頭に電撃が走った。
見ると親友も同時に思いついたようだ。
顔を見合わせて頷く。
我々の間に
誰か美しい女性がいたに違いない。
三角関係だ。
古典的だが
美しい友情を壊すに相応しい。
しかし、
その理由に
重大な欠陥が見つかった。
俺と彼の好きなタイプが
全く違う、ということだ。
悩んだ末、
俺は思い出した。
彼女が
俺達の幼馴染だということを。
俺達は互いに
彼女の容姿、特徴
彼女との記憶を
思い出していった。
可愛らしく健康的
大人になるにつれ
美しく変わっていった。
絵が得意な彼は、
彼女の姿を
描き出した。
俺達の目の前に
彼女の
走り、跳ね、笑う姿が
生き生きと蘇った。
絶交の理由は
分かった。
俺は満足した。
しかし
彼は変な顔をしている。
尋ねると
おかしなことを言い出した。
「なぜ我々の部屋には
彼女の写真一つ
置いてないんだ?」
「なぜ彼女は今
我々の側にいないんだ?」
彼は言った。
「彼女は
本当に
存在するのか…?」
俺は
彼の言葉に激怒した。
親友だからといって
許される発言ではない。
俺の喉から
再度の絶交の言葉が
出掛かった。
だが、
彼の苦悶の表情に
発するのを
止めた。
俺は彼の肩に手を置き
言った。
「彼女に電話をしてみよう。
それで全て分かる」
どちらのスマホにも
なぜか
彼女の電話番号は
なかった。
俺達は必死に
彼女の電話番号を
思い出そうとした。
090の後
次の4桁までは
思い出した。
最後の下4桁に
頭を悩ませた。
その時、二人同時に思いついた。
「記念日だ」
彼女の誕生日が
下4桁になっている。
思い出した。
そして
緊張の中
彼は
電話番号を押して
掛けた。
呼び出し音の後
彼は
スマホを耳にかざしたまま
呆然としていた。
俺は
彼のスマホを取り上げ
耳に当てた。
「現在、
使われておりません」
音声が流れていた。
二人、顔を見合わせた。
全て
分かった。
「現在、使われておりません」
という音声に
彼女の強い意志と
切なる願いを感じた。
彼女は
自らの痕跡を全て消し
我々の元から
立ち去ったのだ。
我々の友情が戻ることを
願ったのだ。
自分の幸せよりも。
彼女は
そういう人だ。
俺達は泣き
彼女を思い
酒を酌み交わし
彼女の切なる願いを汲んで
絶交を止め
永遠の友情を
誓った。




