第4話 初めての勝利と魔石
翌朝、教会で鳴らされる一の鐘で目を覚ます。顔を洗い、身だしなみを整えていると、部屋のドアがノックされ、ナナコルが「起きてる?」と声を掛けてきた。
「食事に行こう」と返す。
二人で朝食を済ませた後、エストル神官長に出掛けの挨拶をし、ギルドへ向かった。
ギルドには、朝の依頼票の貼り出しを待つ冒険者たちが大勢いたが、そちらには目を向けず、受付のユミルの元へ向かう。
ユミルは
「おはようございます。初期依頼をご用意しておきました。お二人が相当にお強いことは理解しておりますが、ご無理はなさらないように」
と言い、依頼票の受理を済ませてくれた。
最初に登録カードに触れた際、受付の水晶にレベルが表示されたはずだが、ユミルは特に動じる様子もなく対応していた。
もっとも、依頼内容は初心者向けの薬草採取と森の入口付近の状況報告で、薬草の種類と採取方法についても丁寧に説明してくれた。
ギルドを出たところで、白い犬のような獣を連れた冒険者とすれ違う。
「あれって魔物じゃないの?」と訊くと、ナナコルは
「首輪を付けてたでしょ。テイムされた従魔だよ」
と教えてくれた。
「クラマもできるはずだけど、まだ早いよ」
そう言って、軽くたしなめられる。
従魔のテイムを一つの目標にしようと心に決め、森の入口に到着すると薬草探しを始めた。
鑑定を使わなくても、治癒草と魔力草が光って見える気がする。
「これが治癒草で、あれが魔力草だよね」
ナナコルに確認すると、
「もう見つけたの?」
と驚かれた。
教わった通り、少し残す形で周囲の治癒草と魔力草を採取する。
その後、周囲を見渡すと、森の木陰に違和感を覚えた。
指差すと、ナナコルも気付いたようで、そっと頷く。
草むらに身を伏せて様子を窺っていると、緑色の人型をした獣が二匹現れた。
「ゴブリン?」と小さく囁くと、肯定の頷きが返ってくる。
このまま二匹の発見を報告するだけでも依頼達成だと思いながら、槍を構えた。
倒したい――そう念じ、炎をイメージすると、槍の先端が炎をまとった。
躊躇することなく駆け寄り、一匹に槍を突き立てる。
一撃だった。
突然の攻撃に驚いたナナコルだったが、すぐに残った一匹へ杖から水の玉を放ち、こちらも一撃で倒した。
「やるなら、先に言ってよ」
ナナコルは顔をしかめる。
「魔石を取らないと」
そう言うと、
「『魔石抽出』って念じてみて」
と返された。
言われた通りにすると、手の中に小さな魔石が二つ現れた。
その後ギルドに戻り、ユミルに報告すると、
「いきなりゴブリン二匹討伐に、治癒草と魔力草の大量納品ですね」
と言われ、提出したギルドカードに「E」の文字が浮かび上がった。
達成報酬を受け取り、説明を受ける。
初期依頼の達成度によって初期ランクが決まる仕組みらしく、僕たちはFランクを飛び越えたことになる。
報告を終えると、まだ昼を過ぎたばかりの時間だった。
昼食を済ませ、もう一度依頼を受けようと掲示板を眺めている。
その時、朝も見かけた冒険者パーティーの話し声が耳に入った。
「朝の可愛い娘、連れの男と一緒にEランクに上がったみたいだぞ」
「男は寄生だろ? 初期依頼で解散するって言ってたの誰だよ」
「まぁ、あんな可愛い娘は滅多にいないけど、もう諦めだな」
そう言いながら、彼らは去っていった。
改めてナナコルの可愛さを認識し、気を付けなければと思う。
あまり良さそうな依頼が残っておらず受付へ行くと、ユミルが言った。
「ゴブリンとかリトルボアなら常時依頼だから、依頼票がなくても大丈夫だよ。肉と薬草も納品してね」
昼からは森の入口だけでなく、少し奥まで入ることにした。
治癒草と魔力草を採取しながら魔物を探す。
木陰に違和感を覚え、指を差すと、ナナコルも頷いた。
「リトルボアが二匹だね」
ナナコルが杖を構え、水の玉を放つ。一匹がその場で倒れた。
僕ももう一匹へ駆け寄り、炎をまとわせた槍で突き刺す。一撃だった。
ユミルから突進に注意するよう言われていたが、ナナコルの先制攻撃と僕の突撃で問題なく対応できた。
ゴブリンと同じように魔石を抽出した後、
「解体」
と念じると、肉がアイテムボックスに収納され、残った部位は土魔法で掘った穴に埋めた。
ナナコルは苦笑いする。
「普通に魔法を使いこなしてるけど、自分がどれだけ異常か分かってる?」
その後、森の浅い場所で
ゴブリン十五匹、リトルボア十匹を討伐した。
陽が沈み始めたところでギルドへ戻る。
受付で魔石と薬草を納品し、ボアの肉も出すとユミルが目を見開いた。
「解体も済んでるの?」
一つ出すと、「こんなに綺麗に解体する初心者がいるの?」と呆れられ、十匹分を出すと――
「これならすぐにDランクに昇格です」
と言われた。
二人が納品を終えて帰った後、ユミルは隣で受付をしていたミミンに声をかけられた。
「さっきのナナコルって新人さん、ナンパ冒険者の言う通りに相当可愛かったけど、クラマっていう男の子も相当に格好良かったよね」
ユミルは「そうかな」とはぐらかしたが、気になっていることは、ミミンには丸わかりであった。
「すぐにDランクだとか言ってたけど、そこまでの実力あるのかな?」と訊かれると、
ユミルは答えた。「レベルとかは守秘義務で言えないけど、初日にボア肉を十匹分も持ってくる二人パーティーをFやEランクのままにしておけないでしょ。これからギルマスに相談してくるよ」
そんな大事になり始めたことを知らない二人は、教会へ帰る途中で話していた。
「明日は森のもう少し奥へ行ってみる?」とクラマが言うと、
「ビッグボアやボアリーダーが出てくると肉が増えるね」とナナコルは嬉しそうに応えた。
その後、何事もなく教会に戻った二人は、食事と入浴を済ませ、静かに眠りについた。




