第3話 教会で告げられた立場
受付は昼間だったこともあって暇そうにしており、受付嬢から
「本日はどのようなご用件で?」
と聞かれ、二人の冒険者登録をお願いした。
「本日、登録を担当しますユミルと申します。こちらのカードの光っている部分に触れてください」
と、それぞれに名刺サイズのカードを手渡してきた。
光っている部分に触れると光は収まり、カードの真ん中にクラマの名前が表示された。
それを見たユミルは
「これで登録は完了です」
と告げ、カードを入れるケースと首から下げる紐を手渡してきた。
ナナコルも同様に完了し、それぞれが首から下げると、
「今日は依頼を受けられますか?」
と聞かれたが、
「この後に用事があるので、明日以降にします」
と告げ、ギルドを出た。
古着屋へ向かう途中で、ナナコルに
「武器は魔法杖を使うの?」
と聞くと、小さく頷き、
「地味な方ね」
と微笑んだ。
僕が剣にするか、槍にするか、弓にするか悩んでいると、
「戦闘経験のないクラマは、とりあえず槍がお勧めだよ」
と言って、
「神殿騎士のを複写したんでしょ?」
と笑った。
騎士から複写した槍と鎧は、ギルドにいた冒険者の装備を思い出すと、新人が持っていれば絡まれるか、どこかの貴族のお忍びに見られることが必至なので、当分は〈収納〉の肥やしになることが決定した。
古着屋で学生服を売り払い、僕は冒険者の服と皮の鎧、靴と帽子を、ナナコルは魔法使いのローブ、ブーツと帽子を買った。
学生服は相当仕立てが良く、生地もいい物だったようで、金貨一枚と銀貨五枚を渡された。
槍はさすがに扱っておらず、隣にある道具屋を紹介してくれて、店主おすすめの鉄の槍を購入した。
買い物を終えたあと、教会に向かって歩きながら、
「爺ちゃんの手紙の中身って?」
と訊くと、ナナコルは
「私も、このまま神官に渡せって言われただけだから、知らないよ」
と返してきた。
宿屋代が要らないのは助かるけど、僕のことをどういうふうに説明したのかは気になる。
それに、ナナコルが「爺ちゃん」と呼んでいたから僕もそう呼んだけど、神官の前でそう言ったら文句を言われるかもしれない。
「神官の前では、グラバル様って呼んだほうがいいのかな?」
とナナコルに訊くと、
「うーん、どうかな」
と、はっきりしない返事が返ってきた。
ナナコル自身も、よく分かっていないのかもしれない。
神官にどう対応すればいいのか考えがまとまらないまま、教会に着いてしまった。
教会に入ると、神官に応接室へ来るように言われ、ナナコルと一緒についていく。
ソファに座るよう促され、ナナコルと並んで腰を下ろした。
神官は正面に座ると、
「早速で申し訳ないが、この手紙の内容はご存じですか?」
と訊いてきた。
開封済みの爺ちゃんの手紙を、封筒に入れたまま示される。
ナナコルと二人で首を横に振ると、神官は言った。
「内容は、お二人の冒険者活動を支援するように、という指示です。
それと、お二人を女神や転生者として特別扱いする必要はない、という連絡でもあります」
そう告げたあと、
「今後は、ナナコル様ではなく、ナナコルと呼び捨てにさせていただきます。ご了承下さい」
と言って、神官は頭を下げた。
僕とナナコルの扱いは、教会にゆかりのある冒険者という立場になるらしい。
朝食と夕食の提供、宿舎の利用が可能で、対価については当面は無償。
ただし、冒険者活動に余裕が出てきたら、教会への寄付をお願いしたい――そう説明された。
そのあと、教会の食堂で夕食をご馳走になった。
夕食の後、今後について話そうとナナコルと相談し、隣のテーブルで食事をしていた神官に
「神官さん、ここで打ち合わせても良いですか?」
と尋ねた。
「ここでは人目がありますので、先ほどの応接室をお使いください。私は神官長のエストルです」
そう言って名乗ると、彼はそれぞれの部屋の鍵を渡してくれた。
部屋には風呂は無いが、男女別の共同浴室があることも教えてくれる。
応接室でナナコルと向かい合って座り、いろいろと話し合った結果、次のことを決めた。
・二人で冒険者パーティーとして活動すること
・四日間活動したら、一日休みを取ること
・冒険者報酬の半分をパーティー資金とし、残りの半分ずつをそれぞれの個人資金とすること
(爺ちゃんから受け取った餞別も同様とする)
・武器や防具の買い替え、ポーションの補充などはパーティー資金から出すが、時期については話し合って決めること
以上を決め、休みの前日の夕食後に、今回のような打ち合わせを行うことにした。
ナナコルがあくびをこらえ始めたので、俺たちは応接室を出て、静かな廊下を抜け、共同浴室へ向かった。
風呂から上がり、指定された部屋のベッドに身を横たえると、いろいろあった一日の疲れのせいか、すぐに眠りに落ちてしまった。




