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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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深夜、領主邸の門前に立った美咲達は互いに顔を見合わせ頷き合うと堂々と中へと入る。


領主邸に居る見張りの兵士だけでなく、寝ている人起きている人関係なくグリとパピで気付かれる前にあっという間に無力化して行き、美咲はグリに教わった通りに真っ直ぐ領主の寝室へと向かう。


そして扉の前に立ち止まり美咲が大きく溜息を吐くと、異変を感じたのか領主から声が掛かった。


「誰か居るのか。何用だ」


美咲は静かに扉を開きゆっくりと中へと入る。グリとパピは扉の影に待機し、姿を見せず様子を窺っている。


「何者だ。こんな夜中に何をしている」


「あなたが私を探していると聞いて伺いました。何の御用でしょう」


「何を…。えぇぃ、出会え出会えくせ者じゃ!」


剛勇が声を荒げるが、誰一人として部屋に近づく気配がないと知り異常事態を認めたのか布団から勢いよく抜け出した。


美咲はそれに合わせ拙い演技力を駆使しておどろおどろしい雰囲気で笑顔を作ると、領主は少しだけたじろいだように見えた。


「生まれてすぐに殺せと命じておいて、今度は探すとはまったく自分の都合しか考えないんですね。お望み通り現れてあげたのに追い払うつもりですか」


「何が目的だ」


「だから私があなたがお探しの娘ですよ。信じられませんか? 跡継ぎを生んだことは褒めてやる。ならば女の方に用は無い始末しろ。同じ男なら養子に出す手もあったが今回は諦めろ。あなたはそう言って泣く母から私を取り上げ産婆の手によって始末させたんです。お忘れではないですよね? 私はあなたに殺されたのだと思っています」


「ば、馬鹿な…」


美咲が生まれた時のことを知る者など居る筈がないと思っていたのか明らかに狼狽えているようだった。


「あなたを恨み成仏できない私に今さら何の用があるのです。わざわざこうして来てあげたのですよ、もっと喜んではいかがですか?」


「な、なっ…」


美咲を本当に怨霊だと信じたのか、それとも思いもかけない展開に思考が停止しているのか、剛勇は金魚のように口をパクパクとさせるばかりだった。


「用がないのなら私の恨みを晴らさせて貰いますね。あなたは人を殺しすぎです。そんなあなたを恨み成仏できない者が大勢居ることを知るがいい」


美咲が詰め寄ると剛勇は何故か尻餅をつき後退るようにする。反撃に出られるかと心配していたのに、まさかここで怯えるとは思っていなかったので、美咲も少々慌ててしまう。


しかし美咲は腰にぶら下げた払子を手に持つと、剛勇の煩悩を祓うべく振り上げる。


「欲を捨てこれからは自分の犯した罪と向き合って生きなさい」


美咲が浄化を願い目一杯に力を込め埃を払うように剛勇の体を叩くと、剛勇の中から何かが抜けて行くのが見えた。

するとガクンと体勢を崩した剛勇はそのまま布団へと倒れ込む。見ると白目を剥き意識も無いようだった。


「あ、あれぇ~」


煩悩を祓った剛勇を怯えさせるだけ怯えさせて、その後プライベートダンジョンを展開させ姿を消し、本当に怨霊が現れたように見せかけて退場する予定だったのに、まさか倒れられるとは思ってもいなかった。まったくの予定外だ。


「グリぃ、どうしよう」


不安げな声を上げるとグリとパピも部屋に入って様子を確認してくれた。


「気絶しているだけです。払子の効果が効き過ぎたのかも知れませんね」


「それってヤバかったりする?」


剛勇がどうなろうと美咲の知ったことではないし、寧ろこの先ずっと苦しめば良いと思う気持ちもどこかにあるが、だからといってここで命を奪うようなことになったら、それではまったく剛勇と同じだと後悔するだろう。


「煩悩が多すぎたのか邪気が多かったのか、それともこの者は案外小心者だったのかも知れませんね」


「それって何か関係あるの?」


「毒と一緒です。少量なら薬にもなりますが、どんな副作用があるか分かりません。しかし神器でなしたこと、けして間違いはないでしょう」


「えっとぉ、じゃぁこれは払子を使った副作用ってこと?」


どうも払子で一気に煩悩を祓いすぎたらしい。本来はもう少し手加減しながら祓って行くのかと美咲は本来の払子の使い方を知る。


「ええ、目覚めてみないことにははっきりとは言えませんが、多分そうだと思います」


「案外目覚めずにこのまま悪夢にうなされ続けるかもな」


グリの説明よりパピの一言が美咲の心に何かを響かせた。そのくらいの罰が当たっても良いのではないかと。


「では、これで完了ということで良いですか?」


「そうね。言いたいことは言えたし、こんな姿を見たらもう良いかなって思うよ。でもまた悪事を企むようだったら次はもっと容赦しないけどね」


「ふふ、では邸の者が目覚める前に戻りましょうか」


美咲には復讐が果たせたという実感がまったくなかった。

寧ろ初めからこうしておけば誰にも迷惑をかけず、ましてや少女の命を奪うこともなかったのじゃないかと思うと、ここから逃げ出した頃の自分を叱りつけたかった。もっとちゃんと戦うべきだったと。


すべては結果論なのだが、やはり改めて身代わりになった少女の成仏を心から願い、輪廻を司るという神様に会い少女の幸せを願おうと堅く誓った。


そしてパピが言ったように剛勇が悪夢にうなされ続け、食事も摂れずに衰弱し、死の直前に目を覚まし、その後は魂が抜けたようにすっかり大人しくなったと美咲はだいぶ後になってから知るのだった。



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