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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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4/11

今回の作品は少しばかり物騒な表現が多めになっています。苦手な方は読み飛ばしてください。


「? … ? … ? … ぎゃぁぁぁーーーーー」


真っ暗闇の森閑とした森の中にあるそこそこ名の知れた神社に女の甲高い声が響き渡る。


鳥居を潜った女は何度も自分の腕の中を確認し、自分が抱いていた赤子の姿が忽然と消えていることに気づき、驚くと同時に恐怖を覚えだらしなく尻餅をついていた。


そして腰の力が抜け立ち上がることもできずにいた女は、四つん這いのままに逃げるようにして踵を返す。


「か、神隠しじゃぁぁーー!!」


いくら生まれたばかりの小さな赤ん坊とはいえ、何の痕跡も残さず姿が消える理由など女には他に思いつかなかった。

転ぶようにして駆けながら領主邸へと戻った女は領主に報告すべく慌てていた。


「りょ、領主様~。た、た、大変でございますじゃ。か、か、か、神か」


「何事だ! 見苦しい。言いつけた仕事は終わったのか!」


ドスドスとした足音を立て領主邸奥から姿を現した男は見苦しい女の様子に思わず怒鳴り声を上げる。

領主の言う仕事とは先程生まれたばかりの赤子を葬り去ることだ。

勿論女もそれを承知で返事に困り、お陰で随分と冷静になれたようだった。


「は、はい。…いえ、そうではなくて…」


威厳を持った態度で領主に睨まれた女は思わず竦み上がりしどろもどろになる。

しかし女は考えた。ここでありのままを報告したとして本当に信じて貰えるのか。もし赤子を殺すのを躊躇い隠したと疑われたら、どんな拷問を受け処罰されることになるか知れない。この領主はそういう男だと女は良く知っていた。


前領主を亡き者にしその座を奪ったと言う噂もあながち間違っていないと女は思っている。実際この男はすべてを自分の思い通りにしないと気が済まない男だ。


「はっきりしろ。何が言いたい」


「赤子は神社裏に埋めておきました。その際何やらあやかしの気配があり慌ててしまい申し訳ありません」


結局女は神隠しの一軒は隠すことに決め口をつぐんだ。自分でもまだ信じられないでいるのに、目の前の男が信じるとは到底思えなかったからだった。


それにもし神隠しではなく後で見つかったとしても、その子があの赤ん坊だと誰が知るだろう。誤魔化し通すことはきっとできると考えた。


「ならば良い。ご苦労であった」


女は男が投げて寄越した金子を拾い上げると、鷹揚に頷く領主に深々と頭を下げ領主邸を急ぐようにして辞した。


その姿を怪訝そうに見送ると男は両手を叩き誰かを呼んだ。


「これに」


どこからともなく聞こえる姿なき声に男は指示を出す。


「今回あれが双子を産んだことを知る者を速やかに始末しろ。良いな一人残らず全員だ」


「奥方様はいかがいたしましょう」


「跡継ぎを生んだとはいえ、あのような気弱な女にもう用は無い。あやつの父親も男子を産んだと知れば納得し後ろ盾の継続を約束するだろう。それとあの産婆は何を隠しているのか必ずや探り出してから始末せよ」


「御意」


陰の声の気配が消えると男は悠々と自室へと戻るのだった。



「随分と早かったな」


女がガラリと音を立て玄関の扉を開けると、囲炉裏端で酒を飲んでいた男が声を掛けてきた。


「思ったより安産だったからな」


「その割にはしけた面して、何かあったか? それより領主の所のお産ともなれば随分と貰えたんだろう。祝いになにかしら貰えなかったのか」


飲んだくれていた男はしかめっ面をしている女を揶揄うようして指でお金の形を作り手を振りながら言って見せた。


「あんたは気楽で良いね。こっちはいつもより大変だったんだよ」


「安産だったんだろう。何がそんなに大変だったんだよ」


「奥方様が双子を産んでな。片方を始末しろと命じられたが神隠しに遭った」


「神隠しだぁ? おめぇそんなこと本気で言ってんのか?」


「本気も本気さぁ。実際この手で抱いていた赤ん坊が突然姿を消したんだ。他に何があるって言うんだね」


「夢でも見てたんじゃねぇのか」


「夢な訳あるか。だけど赤ん坊とはいえあんな綺麗な女の子を手に掛けるなんてしたくはなかったから助かったと言えば助かったんだけどね」


「そんなに綺麗な子だったのか?」


飲んだくれていた男は興味深そうに聞くが、その顔はかなり下卑たものになっていた。


「奥方様に似て色白だったのは確かだね。何人も赤ん坊を取り上げてきたが中でも一番だね」


「それは勿体ねぇことをしたな。そんなに別嬪ならちょっと育てて郭にでも売ったら大金になっただろうになぁ」


「馬鹿を言うでないよ。そんなこと領主様に知れたら大変だよ」


玄関扉に鍵を掛け、上がり框で草履を脱いだ女が囲炉裏端で飲んだくれている男の隣に座ると同時に何者かが突如現れ、驚く間もなく二人とも斬り殺された。一瞬の出来事だった。


そして翌日、盗に遭い産婆の一家が惨殺されるという衝撃的な事件が領都を深閑とさせる。

しかしその陰で産婆の手伝いをしていた助産婦が行方不明になり、領主邸の侍女が一人変死していることは噂されることも事件になることも無く隠蔽された。


領主の奥方様も産後の肥立ちが悪く亡くなっており、本来なら領内は喪に服すことになるのだが、領主の跡取りの誕生の方が重要とされ領都全体にお祝いムードが漂い、事件もすぐに忘れ去られて行った。


そしてそれらすべては領主が企んだことだと知る者は影以外いなかった。



独り自室で寛ぐ領主の傍には一人の影が蹲るようにして控えていた。


「それであの産婆はいったい何を隠していたのだ?」


「お子様が神隠しに遭ったそうです」


「神隠しだと。馬鹿げたことを」


「実際に腕の中から姿が消えたとのこと」


「それではなにか。あの赤子には何か特別な力でもあったというのか? よくよく神に愛されていたとでも言うのか…。面白い。それが本当ならあの赤子にも使い道があるやも知れん。探せ。赤子の身でそう遠くへなど行ける筈もない」


男は神隠しなど信じてはいなかった。かと言ってあの産婆がどこかへ隠したとも考えてはいない。ただそれよりもごく希に変わった力を持つ神に愛される子が生まれるという話の方を信じたのだ。


自分はまだ実際にそのような者を見たことは無いが、王城のある王都に行った時にそんな話を耳にしたことがあった。


そしてもしあの赤子が本当に特別な力を持つのだとしたら、万が一跡取りとした子が役立たずだった時に利用できると瞬時に考えた。


「特別な力を持つのだとしたら使い道は他にもあるだろう。必ずや生かしたまま見つけ出し、しばらくは人目を避けて里で育てよ」


「御意」


こうして始末される筈だった双子の片割れである女の赤子は、一転して探されることになったのだった。



作品ごとに文調を変えてみたりストーリー構成を変えてみたりと試行錯誤しているのですが、なんだかどんどん正解が分からなくなっている感じです。読みづらくてすみません。

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