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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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グリが美咲の服を作ってくれた余りの布や唐衣を仕立て直すのに切り取った布を捨てるのも勿体なくて、美咲はつまみ細工の髪飾りにお手玉やフクロウの置物にもなるミニのぬいぐるみなど、布が小さくても作り易く売れそうな小物を作っていた。


お手玉やぬいぐるみに巾着などは生地や柄を見て思いつきで作った物だが、つまみ細工に関しては転生直前暇な時間を埋めるために趣味で始めたものだった。

当時かなり嵌っていた事もあり、自分で言うのも何だがプロが作った物に遜色ないと思っている。

苦労した点と言えば木工糊がなかったので、ご飯粒で作った糊の強度が心配で試行錯誤した点くらいだろう。


藤上領に戻ってきた美咲達は今回は領都を中心にプライベートダンジョンを展開させ、美咲はその一角に設置した簡易お社に相変わらず引き籠もり、グリは行商人に扮し美咲が作った小物を売り歩きながら情報を集め、パピはプライベートダンジョン内の魔物を狩り、怨霊を見つけては美咲を連れ出していた。


この世界にお手玉という遊びはまだ無かったらしく、実演してみせるとすぐに真似して作る人が増えたが、ずっと作り続けるつもりはなかったので別にそれで良かった。

商品を売り広めるのが目的なのではなく、あくまでも情報を集めるために始めたことだからだ。


そしてつまみ細工で作った髪飾りは少々値が張ったこともあり、売れることは少なかったが一気に話題が広がり、そのお陰もあって簡単に領主邸にも入ることができ、かなり正確な情報を集められたらしい。


「領主邸の者も領民の噂でもとても聡明で優しい子だという話です」


「良かったぁ~、捻くれた子にはなってないんだね」


心配していた兄はちゃんと真っ直ぐに育っていると知り美咲は心から安堵した。


「そのために領主に疎まれていたようで、今回美咲を探すという名目ではあるものの、実際には家を追い出されたのではないかと言う噂です」


「じゃぁ、今どこに居るかは分からないのかぁ」


「私達が高名な神社を目指していると知り、絶対に現れるだろうと信じて総本社に滞在していたところをどうやら領主が呼び戻したようです」


領主に隠れて連絡を取り合っている人が居たらしく、かなり正確な動向をグリは探り出していた。

兄の味方になってくれる人が居ると知り、美咲は心から良かったと思う。


「家を追い出したんじゃ無いの?」


「私の推測ですが、ダンジョン衰退の責任を押しつけるつもりではないかと考えます」


「えぇぇーー。なんでそうなるのよ…」


美咲はあの領主を表舞台から引きずり下ろすことで復讐が果たせると思っていたのに、その余波がまさか兄にまで及ぶとは考えてもいなかった。


このままでは復讐を果たすどころではなく、まったく関係のない兄に迷惑をかけるだけとなってしまう。

そんなのは美咲の望むところではなく、寧ろ余計なことしかしなかった結果だけを残すことになると大きく落胆した。


「仕方ありません。ダンジョンの衰退を止めるしかないでしょう」


「衰退を止める?」


「風早領に提供した妖石を回収し戻せば良いだけです」


「それって…」


美咲が復讐をしたいと願ったばかりに何のために何をしたのか、まったく無駄な事をグリとパピにさせてしまっただけではないかと美咲は愕然とした。


「元に戻すだけの話です。そもそも私達は下界に介入しすぎたのです」


「そうね」


美咲一人だったら何もできなかったし、しようともきっと思わなかった。

グリとパピが力を持っていたことで気が大きくなり、頼りすぎたことで事が大きくなってしまった。

その結果の影響力は計り知れないと、もっと早くに気付くべきだったと美咲は深く反省した。


「でもやっぱりあの領主を一発くらい殴らないことには気が済まないわ。そうじゃないと私はこの戸籍を堂々と使えない。それに私の身代わりになった子が成仏できたとは言えちゃんとあの世で幸せに暮らせているのか知りたいよ」


そもそもあの世があるのかどうかも分からないが、少女が幸せでいるという納得できる何かが欲しいと願ってしまう。

これはただの自己満足なんだけれど、こんな事なら少女の思念玉を自分で消滅させ、その思念をちゃんと受け止めれば良かったと後悔が浮かぶ。


「それは神社ではなく仏閣の領分となりますね」


「知る方法があるの?」


「詳しくは分かりませんが、輪廻を司る神が居ると聞いたことがあります」


「じゃあその神様に会いに行こう!」


美咲は即座に返事をしていた。


輪廻を司る神様が本当に居るのなら、是非少女の魂が今どうなっているのか聞きたい。そしてこの後どうなるのか知りたい。


「それは構いませんが、その前にやらなければならない事を済ませてしまいましょう」


「ダンジョンを元に戻すんだっけ…」


「大丈夫です。増えた階層の魔物を相手にすれば然程時間は掛からないでしょう」


面倒をかけさせた美咲を責めるでもなく、こともなく言うグリには本当に感謝しかなかった。


「ダンジョンの調査をするって事?」


「あやつの手助けなどする気はないと言ったはずですよ」


顔を顰めるグリを見て、美咲はこれ以上余計なことは言うまいと口をつぐんだ。

しかしそれでもやはりどうしてもあの領主をギャフンと言わせないことには気が済まないと美咲は考える。


「ねえグリ。ちょっと考えたんだけど私やっぱりあの領主に会うわ。会って言いたいことを言ってやろうと思うの。付き合ってくれる?」


「ええ、勿論ですよ。領邸の見取り図は把握しています。領主の寝室にでも忍び込むのですか?」


「凄い! 私が考えてることがどうして分かったの」


「私もパピもいつだって美咲と伴にあります。そのくらいの事は分かりますよ」


「じゃぁ作戦を煮詰めましょう」


「はい」


こうして美咲は領主に一矢報いるための作戦を自分で考え、そして自分で実行するために夜を待って領主邸へと向かうのだった。



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