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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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「な、何でだ…」


隼人は完全に三人を味方に付けたと思っていた。

どうやって手に入れたか知らないがダンジョンに関する有益な情報を持ち、多分特級難解ダンジョンでさえ攻略可能と思われる圧倒的な強さを手に入れられたと浮かれていた。


このまま自領の第二級難解ダンジョンを特級難解ダンジョンまで成長させ、それを攻略したとなれば辺境の一領主の息子では終わらず中央の政治に参加できるようになり、この領都を王都のように栄えさせられると夢見ていた。


いや、夢ではなく実現可能で、ダンジョンの調査さえ済めばそれが果たされる筈だった。


今回の件は新たなる可能性を秘めたそれ程までに大きく重要な事項で、隼人を中央へ押し上げてくれる力となるものだった。


それなのに、何が原因なのかも分からない。急に機嫌を損ね、この先は手を貸す気もないとばかりに帰ってしまったグリの後ろ姿を隼人は呆然と見詰めた。


藤上領の領主藤上剛勇がやはり中央政治への参加を狙い、領土の拡大を狙っていると言う噂を聞いてからはいつ攻め込まれるかと気が気ではなかった。


しかし藤上剛勇が探していると言う美咲を見つけたのを切っ掛けに、まるで幸運が味方をしているかのように話が進みみるみるうちに自領が潤いだした。


ダンジョン景気だけではなく、最近では街での揉め事が減り豊漁豊作の兆しも見え、いつもならこの時期に蔓延する流行病の気配さえ無い。何もかもすべてが嘘のように上手く行っていた。


「あの子供に何があると言うんだ。たかだか剛勇の隠し子ってだけだろうが。わざわざ様付けまでして面倒見てやってたのに何が不満だと言うんだ!」


隼人はグリの機嫌をとるために美咲にも精一杯気を遣っていたつもりだった。

そもそも美咲が神隠しに遭っていたなどと言う噂を信じていない。都合が悪くて隠していた子供に逃げ出され、焦って探しているだけなのだろうと思っていた。


だから始めに美咲に気付きその護衛らしき男女のその強さをオーラで見たときは驚いた。藤上剛勇はこれほどに強い戦力を持っていたのかと。


そして話を聞けば藤上剛勇に知られたくないと言う。余程酷い目に合い逃げ出して来たのだろうと同情したが、それよりもこの二人が藤上剛勇を裏切るというのなら引き込むことができればと考えた。


そしてそれは戸籍を提供することであっさりと成功し、望むものを提供さえしていればこの関係は続くと思っていた。


「仕方ない、特例を許す口実を考えるしかないか…」


隼人は先程は特例は認められないと言ってしまったが、仕方ないと諦めて逃げ道を考えることにした。


「どうせあの子供は茶菓子目当てでまた訪ねてくるんだ」


隼人は美咲達がどこに居を構えているのかなど知らない。しかし何日も置かずに美咲がダンジョン管理課を訪ねて来るので、このまま縁が切れるなどという心配はしていなかった。


「今回は怒らせてしまったが次は気をつけるとしよう」


既に次がもう無くなっているとも知らず、隼人はグリが何に腹を立てたかなど気にする様子もなく、これからは機嫌を損なわないように気をつけるしかないと考えるのだった。



「ええい、何故名乗り出て来ない! 泉玖はまだ帰らぬのか! 里の者に状況を報告させろ!!」


藤上領の領主である藤上剛勇はイライラを隠そうともせずに家臣を怒鳴りつけた。


神隠しに遭っていた子供が姿を現したという噂を流せば、喜んで名乗り出てくるものと高を括っていた。


だから頼りなく感じる総領息子を捜索させると言う名目で家から出した。別に戻ることなど期待してはいなかったが、ここへ来て状況が変わりだした。


剛勇の仕打ちを恐れてか偽物でさえも姿を現すことは無く、剛勇に付きそう筈の影を泉玖に付き添わせたことで諜報活動も上手く行かなくなっていた。


そしてここのところダンジョンでの採掘量がガクンと減っている。中央が望む良質な銀の採掘に特に力を入れ、そのために採掘者を増やしたことで藤上領はその他の特産らしい特産を持たない。自領を賄えるかどうかの作物生産がギリギリと言ったところだ。


採掘した銀を王都に届けるのには陸路では時間が掛かる。かと言って運河を遣って運ぶとなると風早に船の賃料や通行料を出さなくてはならない。それが本当に業腹だった。


風早領は交易に使える運河の他にも水量の多い河を有している。なので藤上剛勇は風早領全土とは言わないまでも、是非ともあの運河だけでも手に入れたいと考えていたのだ。そうすれば自領の船を持て、風早に賃料や通行料を出さなくて済む。


しかしこのままダンジョンの採掘量が減り続ければそれどころではなくなり、中央へ打って出るどころか下手をしたら領地没収の話になりかねない。


藤原剛勇の予定では今頃は特別な能力を持つ娘を手に入れ、その能力次第では風早領に攻め込むかもしくはそのまま中央に打って出ている筈だった。


名乗り出て来ないのなら泉玖が本当に見つけて帰ることを期待するしか無い。それに万が一ダンジョンの採掘量が減ったことに責任が生じたら、後を継がせたいと考えている次男を差し出す訳には行かない。ここへ来てまさか泉玖の使い道が出てこようとは思ってもいなかった。


それに一度は殺そうとした子供が神に愛される特別な能力を持つと聞いて期待した分、他に対策を考えられないほどに藤原剛勇の焦りは大きくなっていた。



影の里はかつて無い危機に瀕していた。


里を逃げ出した裏切り者を追っていた何人かが返り討ちに遭い、その者達が請け負っていた仕事を引き継ぐために新たな人員が駆り出され、藤上剛勇の総領息子に付き添って頭領の他にも人員が割かれ、里に残る者の姿は殆ど無かった。


そもそも血が濃くなり過ぎたために出生率も下がり、生まれてきたとしても障害を持つ赤子ばかりになった。勿論障害を持つ赤子は生まれたと同時になかった者とされる。


閉鎖的な里はいまだに厳しい掟で若者を縛り、逃げ出した者をけして許すことなく制裁を加えることで増えない人口を減らし続けていた。


仕事の依頼は減ることは無いのに動ける人員は減る一方で、体面を保つのもままならなくなっている事に気付き、その対策として考えたのは血を薄めることではなく、より厳しく使える者を育てる事だった。


そのせいで既に破滅へと転がり出していると気付いている者は、里には誰一人居ないのだった。



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