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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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美咲達は今、藤上領にある第二級難解ダンジョン十五階層のボスフロアに簡易お社を設置し、ひたすらダンジョン攻略をしていた。

風早領にある第二級難解ダンジョンを特級ダンジョンへと成長させる手伝いをするためだ。


藤上領の難解ダンジョンは十二階層まで攻略していると公式に発表されていたが、実際は十二階層どころか十階層にも採掘者の居る気配はなかった。


あの領主はとりあえず採掘者に十二階層まで攻略させたが、鉱石の採掘量などのコスパを考えて六層から八階層あたりを重点に活動させているようだ。


少しの人数で少ししか採れない貴重鉱石を無理して手に入れるより、そこそこの値段で取引できる鉱石を大量に手に入れる方が潤うと考えたのだろうか。


しかしそのお陰で誰に遠慮することもなく深層あたりを重点に、グリとパピは思う存分魔物を倒し妖石を手に入れることができていた。


この藤上領で魔物を倒し手に入れた妖石を風早領のダンジョン成長に使う目論見だ。


勿論見つかったら死刑もありうる重罪だが、ここへ来るまでずっと人目を避けプライベートダンジョンを展開して移動してきたので、ダンジョンに入ったことさえ誰にもバレていない。


これがグリが考えたあの憎き領主への復讐の第一歩で、グリの予定ではこの藤上領のダンジョンをまずは衰退もしくは消滅させ、風早領のダンジョンを成長させるのが目的だ。


隼人は妖石がダンジョンを成長させると王に報告したが一概には信じて貰えず、実証してみせろという命が下ったのを逆に利用した作戦だった。


風早領のダンジョンが見事成長し、攻略が進んだらあの領主は絶対にそれが許せず何かしらを仕掛けてくるだろうと予測していて、それを迎え撃つ作戦も着々と練られている。


それに上手く藤上領のダンジョンを衰退もしくは消滅に追い込めれば、さらに思うつぼといったところらしい。


政治的なやり取りは美咲にはあまり良く理解できなかったが、作戦を聞いていて何となくあの領主が怒り狂う様子を想像できたので少しだけ胸がすいた。是非とも成功させて欲しい。


そして美咲は魑魅魍魎に似た魔物相手では今はまだ手も足も出せないので、グリとパピがボスを倒した後にプライベートダンジョンを展開させて、ボスをラージサイズの属性スライムに変え一人レベルアップに励んでいた。


それになんと美咲はとうとう武器らしい武器を手に入れられたのだ。


ここ藤上領でお酒を買ってくれた神主から聞いた神社へ行き、ゴールドなスライムのお酒と翡翠彫刻を供えたら、孫悟空が使っていた如意棒の元となったとされる宝棒を授かった。


伸縮自在で強力な力で敵を打ち砕けるだけでなく、とても綺麗な宝珠まで付いていてなんと富と幸運をもたらしてくれるらしい。その効果なのか、スライムの属性攻撃を回避するのもかなり簡単で、何ならスライムの攻撃を打ち返すこともできた。


孫悟空のように耳の中に仕舞ったりしないが、ダンジョンで戦うときはいつも持ち出し、今では危なげなく振り回し魔物を蹴散らしていた。


美咲が力を入れる必要もなくちょっと振り回すだけで、ビュンと風を切る音をさせ魔物を攻撃できる様は美咲にちょっとした快感を覚えさせた。


多分魔物を変える必要もなく、ここのボスも一撃で仕留められるとは思うが、やはりどこかまだ気持ちで負けていた。自分の体の三倍はある気味の悪い鬼に向かって行くなんて到底無理だ。


「怖いものは怖いの! 見た目が怖いんだから仕方ないじゃない! 攻撃を避けられなかったら絶対に死ぬよ!!」


ボスフロアに戻ってきたパピに、まだスライムを相手にしているのかと馬鹿にされ、美咲は思わず反発する。


ボスフロア以外はリポップがあるが、パピはリポップを待ちきれないと美咲にプライベートダンジョンを展開させた。


下界のダンジョンとプライベートダンジョンをスイッチすることでかなり効率が良くなるらしく、美咲にスイッチさせるために戻ってくることも多かった。


しかしボスフロアは一度倒してしまえばその日は何度スイッチさせても復活することはないので、美咲は安心してボスフロアで過ごせた。


復讐を誓いこれからは自分の足で立つと誓ってはみたが、いくら怨霊には慣れた美咲でも、いまだに魑魅魍魎のような魔物は怖い。グリやパピのようには戦えない。だからそれ以外でちゃんと協力している。


グリやパピが持ち帰る妖石の大きさを分け数を数えたり、ボスフロアで採掘できる鉱石を手に入れたりだ。

やれることからコツコツと。無理をしない。今度の人生では甘えられる相手がいるのだから、子供で居る間は子供らしく甘えられるところは甘えさせてもらおうと開き直っていたのもあった。


「それより妖石もそろそろ三万を超えるし、一度隼人さんの所へ戻らない?」


グリも戻ってきたので美咲はさっそく提案してみる。


何しろ二人は他に採掘者の居ない階層で思う存分魔物を相手にしているので、毎日軽く千を超える数の妖石を手に入れていた。

多分美咲が眠っている間も活動しているのじゃないかと疑っているのだが、それにしてもホント驚きだ。


「それは良いですね。魔物のリポップ間隔がだいぶ開くようになったので、もしかしたらダンジョンの衰退が始まっているのかも知れません。となるとここボスフロアに居るのも危険です」


「何で?」


「このフロアが無くなるかも知れませんよ」


「えぇぇー」


「一気に消滅するのか徐々に消滅するのかそこまでは私にも分かりませんが、どちらにしても消滅となったらここボスフロアが一番先に消滅することになるでしょう」


すでにダンジョン衰退の兆しがあるのだとすると、消滅もあり得るのだと美咲にも即座に理解できた。


「それじゃ早くここを出ようよ。グズグズしている場合じゃないじゃん」


ボスフロアも安全じゃないと知り、美咲は一刻も早くダンジョンから出たいと焦るのだった。



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