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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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3/13


(どうせ転生させてくれるなら生まれる場所ももっと気遣って欲しかったよ)


王族だとか貴族だとか大富豪だなんて贅沢は言わないにしても、普通の温かい家庭って状況は選べなかったのかと大いなる不満を抱いていた。


それにしても今世でも自分はとことん家族運が無いとみえる。

もっとも前世の記憶があるせいで、今新たに家族ですと言われてもどこかで違和感を抱いてしまうだろうから、これはこれで良かったのかも知れないと納得する部分もあった。


冷徹な父親も気弱な母親も泣き声しか知らない兄(?)も、今なら情を移さずにこの先何を聞こうが何を目撃しようが他人と割り切ることができると思えた。


とはいえ命の危機はまだまだ続いたままで、かと言って今自分にできることなど何も無く、せめて目が見えれば何か打開策を思いつくかも知れないが、かろうじて話し声が拾える程度に耳が聞こえているだけだ。

こんな事なら下手に前世の記憶など持たなければ良かったと後悔しても遅すぎる。


(神様仏様、あの爺さんの名前を聞き忘れたけれど、どうかお願いです、せめて殺されることだけはありませんように…)


誰にも頼らずに人生を一人で完結させるなどと息巻いていたのに、転生してすぐにまさか神様を頼りにするとは思ってもいなかった。


誰かにどうにかして貰えるなんて考えないと堅く誓っていた筈なのに、今まさに誰かを頼りにしている自分を情けなく感じる。


それにあの名前を聞き忘れた爺さんは数多の世界を観測しているだけらしいし、加護をくれるとは言っていたが、きっとお供えを受け取るための指標みたいなものだろうから助けは期待できない。


となったら、ここで来るかどうかも分からない助けを待っている場合でも、有るか無いか分からない幸運を期待している場合でもないのは確かだ。


取り敢えず泣く以外に自分にできそうなことを考えてみる。


(う~ん……。あの爺さんはダンジョンのある世界へ転生させると言っていたってことは、ここは考えているよりファンタジーな世界かも知れない。だとしたらアレがでるか? いや、絶対に出て欲しい!)


切実なる願いを込めて、できる限りの気合いを入れ脳内で叫んでみる。


(ステータスオープン!!)


すると驚いたことに、何も見えていないはずの瞼の裏というか脳内に淡い光を帯びた文字が表示される。


ステータス

名 前 ??? 年齢 0歳

スキル プライベートダンジョン

加 護 ???の加護


思っていたステータスとは違うが、どんな形であれ表示されたことには驚きだった。それにツッコみどころが満載だ。


名前がないのは生まれたばかりで名付けをされていないから仕方ないとして、スキルがプライベートダンジョンってなんだよと思う。


スキルってそもそも技術とか能力の筈なのに、プライベートダンジョンはどう考えても技術でもなければ能力でもない。だからスキルになり得るとは到底思えなかった。


(何考えてるんだろうあの爺さん。それとも何か特別仕様だったりするのか?)


《私だけが利用できる超絶私にだけに都合の良い私の為だけのダンジョンが欲しい》と言うねだり方をしたから能力たり得る何かがあるのかも知れないと言う考えに至り、だとしたらどんな特別仕様なのか是非その内容を知りたいところだと考える。


(お願い、教えて偉い人~)


………。


……。


またもや脳内で叫んでみるが、どこからも返事はなかった。まぁ当然と言えば当然である。

少し待ってみたが期待するのもそもそも無理があった。


(まぁ、ちょっとしか期待していなかったから大丈夫。今はまだ焦る時じゃない。こうなったら実際に使ってみれば良いのか?)


プライベートダンジョンがスキルだとしたらいつでもどこでも使える筈だとは思うが、ダンジョンと言うからにはダンジョンでしか使えないスキルかも知れないとも考える。


それに生まれたばかりのこの状態でダンジョンに入ったとして本当に大丈夫なのかと心配にもなった。


その昔一万歩ウォーキングが流行だした頃、自分もダイエット目的で夕飯後に歩いたことがある。

街灯も無い広いキャベツ畑脇の農道を必死になってひたすら黙々と歩いていた時だった。

突然どこからか現れた放し飼いにされた犬の集団が、自分目がけて猛烈に吠えながら駆けて来るのだ。

その様子はまるで獲物を見つけ狩りをする獣のようで、咄嗟に全速力で逃げたがあえなく追いつかれる。


少し距離を置いた場所で吠え続ける犬の集団には恐怖しか無かったが、獣と目が合ったら絶対に逸らしたらダメだとか、自分より大きい物を恐れる習性が有ると聞いていたので、念のために持っていた傘を開いたり閉じたり振り回したりしてどうにか追い払ったが、あの時の恐怖を今でも忘れることはできないでいる。


だから迂闊にダンジョンに入って本当に魔物と対峙できるのか疑問でもあった。

じゃぁ何故プライベートダンジョンを望んだのだと言う話になるが、それはあくまでも夢だと思っていたからで、ゲームだとダンジョンが好きだからとしか言いようがない。

それとそもそも目も見えない体も禄に動かせない状態で戦えるとも思えない。


(でも、このままじゃ確実にこの人に殺られるよね)


ダンジョンで殺られるか人の手で殺られるかの二択なら、スキルだというプライベートダンジョンに掛けてみようと決めるしかなかった。


それにプライベートダンジョンがダンジョンの中でしか使えないスキルだったなら、後はもう幸運を祈るしかないだろうとありったけの祈りを込めて脳内で叫んだ。


(プライベートダンジョン!!)


そう叫んだ瞬間は幸か不幸か、まさに赤子を抱いた女がその子を葬り去る為に神社の鳥居を潜った瞬間と見事被ったのだった。



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