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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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ダンジョンに入ってまず驚いたのはその人の多さだった。


「見ない顔だな、新入りか? 何だったらうちの組に入れ。子供連れでの採掘は大変だぞ。その点うちの組なら対策もバッチリだ」


そう言ってくるだけあって美咲と同じような歳の子達が手子として採掘者の間を走り回っている。


「待った待った。うちの組はそこより報酬がいいぞ。欺されんな」


そしてそこに居る誰も彼もがどこかの組に所属しているらしく、美咲達を新入りだと把握した途端に勧誘合戦が始まった。


しかしその間もまるでスペースを確保するかのように採掘者は自分の居る場所から動かずに居る。採掘する者は採掘に夢中だし、勧誘者は美咲達を引き留めることをせずに声を掛けるだけだ。


「興味は無い。失礼する」


パピが声を掛けてくる採掘者の悉くを無視して人々を避け奥へと進んでいくので、美咲もそれに従い必死に後を追った。


次に驚いたのがダンジョン内に出たのは魔物と言うより魑魅魍魎妖怪のような雰囲気の何かだったことだ。


そしてその悉くは涌いたと同時に採掘をしていない見張り番らしい採掘者達にフルボッコにされ、美咲がその姿をはっきりと確認する前にあっという間に消滅させられていた。


どうやら魔物が涌く兆候があるらしく、同じ組の者達が声を掛け助け合って倒しているようだ。


当然ダンジョン内のフロアがそんな状態では採掘どころか魔物との戦闘も無理そうだと判断したのか、パピは脇目も振らずどんどん下の階層を目指した。


五階層まではまったく同じような雰囲気で、違いと言えば勧誘の台詞が段々脅しに近くなっていったくらいだった。


「ふん、ガキ連れが。ここから先そんな人数で行って無事で帰れると思うなよ」


「おまえ達には関係のないことだ!」


パピの言葉も殆どけんか腰になっているのに、グリはまるで他人事のように素知らぬ顔で小さくなっている美咲の後ろを歩いていた。


そうして六階層に下りるとガラリと雰囲気が変わった。

五階層までは少し広めに整備された鉱山洞窟のようだったのに、ここからはただの剥き出しの洞窟といった感じだ。


それも今までは迷うほどでもない作りだったのがここからはやたらと岐路が増え迷路のようになっていて、それにだいぶ人口密度も減り、涌いたままの魔物もそこここに跋扈していた。


「フン!」


パピの気合いの入った一閃でそこに居た魔物はあっという間に姿を消した。


「たいしたことないな」


そう言いながら魔物の残した経験値石をパピは足で踏み潰す。


「その経験値石は妖石と呼ばれ鉱石の一種として買い取って貰えるそうですよ」


「売るのか?」


「必要無いですが、ご存じないのかと思い一応お知らせしたまでです」


魔物が消滅すると経験値石を落とすのは美咲のプライベートダンジョンと同じ仕様のようだった。

もっともここへ来るまではそれが売れるなどと知りもせず、グリもパピもそして当然美咲も遠慮なくレベルアップに使っていたので、今さら持ち帰って売ろうなどと考えてもいなかった。


「次に行くぞ」


迷う素振りも見せずにズンズン進むパピに美咲は不安になる。


「道は分かってるの? そんなに急いで進んで大丈夫?」


「魔物の気配なら分かってるから任せとけ。魔物が居るってことは人が居ないってことだろうからな」


さっきまでの不機嫌でけんか腰だったのとはガラリと変わってパピはとてもご機嫌になっていた。それに魔物が居る場所も正確に把握できているようなので美咲はちょっとびっくりだった。


そうしてまるで導かれるように下へ下へと一度も迷うことなく階層を進み、十階層を超えると今度はとても大きく広い蟻の巣のようになった。


出現する魔物は大きな異形の者で魔物と言うよりは人型の妖怪のようになり、美咲はホラーのような怖さを感じ気味が悪く、できることなら今すぐに帰りたいと震えながら歩いた。


「ねぇもう十分でしょう。そろそろ帰ろうよ」


「何を言う、漸くまともに戦えそうな魔物が出てきたんだぞ。今からじゃないか」


「そうですね。どうせもう来ないかも知れませんし、このままこのダンジョンの全貌を確かめてしまいましょう」


グリもパピも帰る気は無いと知って美咲はガックリと項垂れた。


「それより美咲も少しは戦ってみたらどうだ。ここでなら美咲のレベルも簡単に上がるんじゃないか」


「無理無理無理無理無理っ、絶対に無理ぃぃぃ~」


自分の体の何倍も大きな異形の妖怪と対峙し戦うなんて絶対に無理だと美咲は全身で全否定した。


「チッ、仕方ないな。私は戦闘で忙しくなる。美咲はせいぜいその瓢箪を使って身を守っとけ」


「あぁ、大丈夫ですよ。一応私は美咲の傍から離れないようにしますから」


「絶対に絶対よ。絶対に離れないでね」


美咲はグリにしがみつくようにして魔物を探し先を進むパピの後を追った。


しかしまだ未踏破の階層にたどり着くと、グリはどんな鉱石が採掘できるのか気になったらしく、寄り道が多くなりなかなか先へは進めなくなった。


パピもグリのそんな行動を理解したのか、見張り番守護者として美咲とグリの傍に陣取り涌いてくる魔物と戦っている。


「ねぇ、まだまだ時間が掛かりそうだから今日はこの辺で休もうよ」


「そうですね。急ぐと危険も増えますからね」


「休むってここでか?」


「やだなパピってば。ここにプライベートダンジョンを展開させてお社を出せばいいだけじゃない」


ダンジョンもプライベートダンジョン化できるし、お社は魔物が近づけないしようになっているのでいつでもどこでも安心して休める。パピはそんな基本的なことも忘れていたようだ。


「そ、それなら初めからそうしていれば面倒なヤツらに絡まれずに魔物と戦えたんじゃないか!」


「まぁまぁ、実際のダンジョンがどういったものなのかも知りたかったのですからこれで良かったのですよ」


「じゃあ決まりだね」


美咲はやっと休めるとテンション高く最小限の広さでプライベートダンジョンを展開させ、少し広くなった場所に簡易お社を設置するとそのまま中へと逃げ込むのだった。



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