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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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「手続きを始める前に先に確認しておきたい事があるのですがよろしいですか」


「何でしょう」


美咲達が座ったのを確認した職員の問いかけに答えたのはグリだった。


「お隣の領主様よりお触れがございまして、何やら生まれてすぐに攫われていた子が最近若い男女に連れられ姿を現したそうなのです。領主様はこの七年間とても心を痛めておいでだったそうで、その知らせを聞きたいそう喜んだそうですが、またもや姿を消してしまったので是非捜索に協力して欲しいとの要請でございまして、私共としてはその年齢の女の子を連れている人々全員に一応確認させていたたいております。本当にご家族で間違いありませんか?」


「ええ」


ギクリとするパピと怪訝な表情を浮かべる美咲を余所に、即座に平然と答えられるグリは凄いと思う。


本当に攫っていたとしたら、家族に違いないかと聞かれて素直に実はなんて話す人がいるのだろうかという疑問もあるが、美咲を殺そうとしていた領主が心を痛めている訳がないのに、なんの茶番でどんな裏があるのかと美咲には疑う気持ちしかなかった。


「その女の子を発見した者だけでなく、女の子を連れていた男女にも今まで保護してくれた謝礼を出すと領主様は仰ってますよ」


「なんでしょう、私達にこの子をその見つかった子として差し出せと薦めているのですか? もしかしてあなたは偽物を仕立て上げてでもその報奨金が欲しいと言うことでしょうか?」


「いえ、違うのでしたらよろしいのです。私共としてはそこまであの領主と関わる気はありませんからね。しかしもし本当に見つけられればあの領主に貸しが作れると我が領主様はお考えのようで、私共も上の命令には逆らえないのですよ。不愉快な思いをさせてしまったのならお詫びいたします」


「よろしいですよ。そちらも色々とご都合がおありでしょうからね。ところで一つお伺いしたいのですが、その攫われていた子が見つかったと言うからには断定できる判断材料があったのですよね。本物かどうか確認できなければ本当に偽物があちこちから湧いてきそうですがその辺を何かご存じですか」


グリのグッドな質問に美咲も心の中で何度もうんうんと頷いていた。

どうして今さら見つかったと大騒ぎになったのか。心当たりがあるとしたら神社にお酒を売りに行った時のことしかない。


あの後襲ってきたあの黒装束の男は美咲だと分かっていて襲ってきたのだ。だとしたらはっきりと美咲だと判断できた理由があるはずで、それが分からなければこの先の対処のしようがないと考えていた。


「えっと、その辺までは聞いていませんが、勿論本人だと断定できる何かがあるとは思いますよね普通。ですからそう簡単には騙せないですよ。なので一応念のために言っておきますが、けして私共が偽物を仕立てようとしているなどとは考えないでくださいね」


「ええ、勿論そうでしょうね」


ニコリとした笑顔を見せる職員に同じく笑顔を投げかけるグリを見ていると、何やら恐ろしいものを見ている気になり、これが本物の大人の腹の探り合いなのかと美咲はなんだか背筋が寒くなってくるのだった。


「では、採掘者登録に入らせていただきますが、この領に戸籍はお持ちですか?」


「戸籍がないと作れないのでしょうか?」


「採掘者登録はどこの領のダンジョン管理課でもできますが、鉱石の買い取りの際の徴収税率が変わります。我が領では領内に住む者でしたら三割徴収ですが、領内に戸籍のない者は五割と決まっております。一応念のためにお教えしますがこの徴収税率は領によって変わりますのでご注意ください」


「それはダンジョン内で採掘した鉱石はすべて提出しなければいけないということでしょうか」


「ああ、その説明が先でしたね。そうです。採掘した鉱石はダンジョン脱出後即座に提出いただき、すべてその場で買い取る形を取っています。その際当然利益を得る採掘者には税を納めていただくのですが、これはどこの領のダンジョンに入っても同じ決まりです。けして我が領で採掘した物を隠して持ち出し他の領で売ることのないようにお願いいたします。もしそのような事が行なわれたと発覚した場合最悪極刑もあり得ますのでご注意ください」


美咲は話を聞いていて採掘者なんて言っているが、なんだか体のいい炭鉱夫じゃないかと思っていた。


もっと異世界っぽい普通のダンジョンで普通の冒険者を想像していたのに全然違うじゃないかと既に期待が薄れ、この世界のダンジョンへの興味をすっかりとなくしていた。


「それで強い魔物は出るのか?」


職員とグリのつまらない話に痺れを切らしたのかパピが職員に飛びつくようにして聞くと、職員は話を中断させられ戸惑ったのか答えに窮してしまう。


「ここのダンジョンは第二級難題ダンジョンと言われているそうですが、ダンジョンの等級に関して少し詳しく教えていただけますか?」


職員に威圧的に迫るパピを抑え助け船を出したのはグリだった。


「そ、そうですね。第五級から三級までは一般のダンジョンとして扱われ、中で採掘できる鉱石もあまり珍しい物は無く危険も少ないとされています。そして第二級からは難易度が跳ね上がるので難解ダンジョンと呼ばれ、階層も深く下へ行くほど珍しい鉱石が発掘され当然魔物も強くなっていきます。ここ第二級難解ダンジョンはまだ十一層までしか攻略されていませんが、それでも我が領をかなり潤してくれているのですよ」


何故か得意気な顔をする職員に美咲は少し可笑しさを覚え、表情が緩むのを必死に堪えた。


難解ダンジョンなんて言うからもっと深くて大変なダンジョンを想像していたのに、十一層と聞いてたいしたことないじゃないかと思っていたのだ。

もっともっと深くて凄く強い魔物が出るダンジョンを美咲は物語を読んで知っていたのでそう判断したのだった。


「ちなみに採掘できる鉱石や出現する魔物を教えていただけませんか」


「五層までは他のダンジョンと変わりなく石炭や銅や鉄と言った鉱石が採掘でき、五層を超えるとこのダンジョンでは銀や金の他にも翡翠やアメジストなどの宝石や原石も採掘されるようになります。そして何と十一層ではミスリルが見つかっているのですよ。噂ではもっと深く潜ればもっと貴重な鉱石が見つかるだろうと言われています。ただ残念なのが十一層にたどり着ける採掘者グループが今はまだ一つしかないことですね。皆様も採掘者登録するのでしたら是非頑張ってください」


「そんなことより魔物の情報だよ!」


採掘にはまったく興味が無いらしいパピは職員に掴みかからんばかりの勢いだった。


「そんなこと私に聞かないでください。私はダンジョンに入ったことなどないのですから」


「魔物の情報は無いってことか!?」


「採掘者達は何故か情報を出してはくれませんので仕方ありませんよ。何が採掘できるかは買い取りの段階で分かりますが、ダンジョンの中までは私達では管理しきれませんからね。しかし命を落とす採掘者も少なくないので多分強い魔物が出るのだろうとは推察しています」


職員の言葉に美咲はダンジョン内は無法地帯なのだと察して、もしかしたら命を落とした採掘者は魔物ではなく同じ採掘者によるいざこざに巻き込まれたのではないかと想像すると、ますますダンジョンへ入る気が無くなっていた。


別にお金なら今のところ不自由していないし必要になったらお酒を売ればいい。それに美咲はそもそも地位や名誉を望んではいない。


と言うか寧ろあの領主に探されていると知って、ますます姿を隠さなくてはと思っているのに目立つ行為など絶対にしたくかった。


美咲がもう採掘者登録なんてしなくてもいいじゃないかと言おうとしていた時だった。


「さっさと登録してくれ。自分の目で確かめてくる!」


パピが叫ぶように断言するのだった。



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