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「もっとオークキングを出せないのか」
プライベートダンジョン内の魔物を好きなように選択できるようになったとは言え、元々その地に居る獣や虫を魔物に変えているのでオークキングはボス扱いとなり一日に一匹しか出現しなかった。
最近のパピはメタルなスライムエンペラーから手に入る経験値を選ぶかオークキングとの戦闘練習を選ぶか悩んだ結果、オークキングとの戦闘に夢中になっていた。
雑魚魔物ならばそこそこの数を変換できるのだけれど、キングやエンペラー級ともなるとさすがに数は限られるためパピは物足りなさから不満たらたらだった。
「せいぜいあの老人にお供えして次のレベルアップでその辺の改善を願ってみるよ」
「改善できるのか!?」
「可能性はあるんじゃないかな」
美咲は自分に都合の良いダンジョンをと願ったからにはその辺の要望も聞き入れられるのではないかと考えていた。
「それじゃ今日のお供えを探しに街へ行こう。美咲もそろそろ何か食べたいだろう」
「待って、その前に近くにお社があるわ。先にそっちにお供えをしよう」
最近の美咲はそれがたとえどんな小さなお社やお地蔵さんだろうと、既に廃れて無人となったお寺だろうと、ダンジョン内にある神社仏閣神にまつわる場所が把握できるようになっていた。
多分だが、今まで出会って来た小さな神社や無人のお社にお寺にお地蔵様の悉くにお酒を供え手を合わせた結果貰った能力だと思っている。
そういう小さなお社やお地蔵様は人の生活する場所にはたいてい数多くあるので、魔物を探して徘徊していると毎日必ずと言っていいほど幾つか見つけられた。
神様の声を聞くことはなかったが、そういう場所にお供えをするとなんとなくその地の邪気が払われるだけでなく、少なからず御利益があるように感じてなんとなく続けていたのだ。
美咲的にはその地に何らかの御利益があればその地に住む人々にも何かしら良いことが起こる気がして到底見逃すことなどできなかった。
戦闘ではあまり役には立てないので、小さな御利益を集めて少しでも運気を高めるくらいのことはしたいという下心があったかも知れない。
とても小さく古い既にボロくなり始めているお社の前に立ち、お社に白い杯を置くと瓢箪からお酒を注ぎ入れ手を合わせる。
「どうぞお納めください」
お社の修繕もできないし、これからずっと信仰することもできないけれど、こうして出会った一期一会の縁を喜ぶつもりで美咲はそう呟いた。
そうするとなんとなくだがこの社の神様も喜んでくれている気がするから不思議だ。
そしてお供えしたお酒が無くなるのを確認してから杯を下げ、もう一度深くお辞儀をしてお社を後にする。
杯は小さい社やお地蔵様のために用意した物で大きさがいくつかあり、他には大きな所用に瓶子も幾つかサイズを変えて用意してある。使い回しではあるが、美咲が考えた簡易お供えセットみたいなものだった。
「次は街だな。さっさと急ぐぞ」
「何をそんなに急ぐ必要があるのです。特別なお供え品などそう簡単に見つかりはしませんよ。それに美咲のご飯なら私が用意します」
グリは最近料理に凝っていった。と言うより料理道具を揃えてからすっかり嵌っている感じだった。
あの簡易お社に荷物を置いておけるのを良いことにお社の一角を台所のようにし、神棚しか無かったお社が今ではまるでワンルームマンションのようになっていて、美咲は本当にこれで良いのかとツッコみたくなったが、神様が嫌がることをグリがする訳が無いと一人納得し、その快適さをありがたく受け入れていた。
「美咲はたまには街に出て何か食べたいと思ってるかも知れないだろう」
「パピはどうしても街へ行きたいようですね。そんなに頻繁に街に出ていいことなどありませんよ」
「なあ美咲はどうなんだよ?」
グリとパピの言い合いは美咲にまで飛び火し、劣勢を悟ったパピは美咲に意見を委ねたようだった。
「次に大きな街があったら寄るで良いんじゃないかな。休暇のつもりで楽しむのも良いし何か珍しい食材が手に入るかも知れないし、それに一度試したいこともあるんだよね」
「試したいことですか?」
「うん、人が住む街だけをダンジョン化させたことって無かったでしょう。どんな風になるのかちょっとだけ興味があるの」
「街だけをですか…」
「なんかそれ面白そうだな」
今まではなんとなく森の中にダンジョンを展開させることが多かったので、ダンジョン内に街の一角が含まれているという感じだった。だから魔物の多くは森に住む獣が魔物に変換されていた。
それが廃墟となった街をダンジョンにしたらホラーも真っ青な感じになると想像し躊躇するところもあるが、そうなったらボスはどうなるのかとか、いったい何が魔物と変換されるのかなど一度湧いた興味を消すことはできなかった。
まさか人間が魔物化されるなんてことは無いと思いたいが、それすらも分からないので是非確かめたいと思っていた。
「何でも試してみるのは良いことです。興味が湧いたのならやってみましょう」
「じゃあ街まで急ぐぞ」
「だからぁ別に急がなくても良いでしょうって言ってるんだってばぁ」
美咲はダンジョン探索はパート感覚の時間に納め、後は快適になったお社で半日はまったりしたいと考えているのに、やたらと急ぎたがるパピに引っ張られ今日も確実に体力作りにはなっているのを実感するのだった。




