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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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2/11


(ぐっ、く、苦しい。痛い痛い痛い痛い痛い)


気付くと真っ暗な世界で全身を締め付けられる痛みに声も上げられずにいた。


(夢から覚めていないのだとしたら痛みを感じるなんておかしいでしょうよ~)


あまりの苦しさに声を上げたいのに声を出すこともできず、どうすればこの痛みから解放されるのかとただひたすらに考えていた。


夢の中で突然なんの脈絡も無くシーンが変わるなんて良くある事だが、それにしては出来すぎていると思わずにはいられない。

転生させると言われたすぐ後のこの状況。多分きっと今まさに生まれ出でる瞬間なのだと推察できたからだ。


(それならそうとさっさと早く出してよぉ~。マジで痛いってばぁ~)


本当に転生できた嬉しさを噛み締める余裕もなく、痛みや苦しさという現実から逃れたい一心だった。


声なき叫びが届いたのか、誰かに頭を掴まれたかと思うとそのまま引きずり出される感覚のあと一気に痛みから解放される。だがしかし、息ができず何やら苦しいままだ。


「出ました!」


パシン、パシン、パシン!


取り上げてくれただろう人の声が聞こえたと思うとそのまま逆さ吊りにされ、おもいっきりお尻を叩かれている。


(痛い痛い痛いってば~)


「オギャーーー、オギャー、オギャー」


泣いたと同時に一気に肺に空気が入るのを感じ苦しさから漸く解放される。


「おめでとうございます。女の子で」


「もう一人生まれます!」


誕生を知らせる声と被るようにして突然響き渡る声があった。


「なんと双子であったか…。もしやとは思っていたが」


多分年長者だろうしわがれた女の声が、この場には似つかわしくないほどに酷く深刻そうに沈んで聞こえた。


「母体も心配だ。早く出してやれ」


(何何? 双子だと何かダメな理由でもあるの?)


なんだか途端に心配になる。そう言えば自分が生まれた頃はまだ双子を忌み嫌う風習が日本にも残っていて、片方を養子に出したという実例を知っている。


それにその昔は普通に片方が殺されることもあったらしく、障害児を死産扱いにするのも産婆の仕事だと話していたのを聞いたこともある。本当に怖い時代もあったものだ。


(これってもしかしなくてもヤバいんじゃないの? 転生したと同時に命の危機ってどうなのよ)


この世界が先に生まれた方を長子とするか後に生まれた方を長子とするかでも話は変わってくるだろうが、どっちにしても自分かもう一人の兄弟のどちらかの命が危ないかも知れないってことなのだ。


しかし泣くことしかできないこの赤子の身で何を心配しても仕方ないと状況を見守ることにした。

ここは転生させてくれたあの爺さんを信じて見守るしかないだろう。状況次第ではお供えは無しになるのだから、きっとどうにかしてくれるに決まっていると少々高をくくっていた。


(まさか、そこまで考えて無かったとか言わないよね?)


「オギャー、オギャー、オギャー!!」


もう一人の子がどうやら生まれたようで、元気な泣き声になんだかホロッとしてしまう。


(歳をとると涙もろくなり子供の誕生に立ち会えたと思うと感慨深い。って、私もまだ赤ん坊だった…)


「おめでとうございます。男の子です」


「なんと、二卵性であったか…」


「無事に生まれたか。それでどちらであった!」


先程よりさらに沈んだ老婆の声が聞こえたと同時に、父親らしき男の人の大声にちょっとびっくりする。知らせを待ちきれずに乱入したといったところだろうと見えないながら判断する。


「女の子と男の子の双子でございます」


「なんと…。双子と言うだけでも不吉だというのに二卵性だと…」


「も、申し訳ありません、旦那様…」


弱々しい声を出したのは双子を産んだ母親だった。お産の直後とは言えかなりやつれ今にも意識を失いそうなほど弱っている。


「まったくだ。それで男子の方はどうだ、健康なのか」


「はい、五体満足にございます」


「跡継ぎを生んだことは褒めてやる。ならば女の方に用は無い始末しろ。同じ男なら養子に出す手もあったが今回は諦めろ。良いな」


「申し訳ありません…」


(さっきから何を謝ってばかりなのよ)


弱々しく謝るばかりの母に少々イライラするが、そういう風習で時代なのだと不思議と他人事のように冷静で居られた。と言うか、まるで韓ドラでも見ている気分で聞いていた。


父親らしき人が出て行く気配がした後は、一気に重々しい空気が辺りを埋め尽くして行く。

重い重い空気の中で元気に泣く兄(?)の声とか細く泣く母の嗚咽を聞きながら、体を綺麗に洗われ何かを着せられていくのを感じていた。


(目が見えないって本当に不便だわ。誰か何か喋ってよ)


経験で部屋の様子を想像することはできるが、実際今どんな状況なのか声でしか判断できないのを辛く感じていた。

そしてしばらく重い重い沈黙が続いた後、産婆が女の子の方の赤子を抱きかかえる。


「それではお預かりします」


「嫌な役目を押しつけてしまい申し訳ありません…。最後に一度乳を与えたいのですが」


「そんなことをしては返って情が移ります。奥方様はその子だけを産んだと思いこの子のことは早く忘れることです」


「し、しかし…」


「この子も最後にこのような立派な服を着られて本望でしょう。では失礼します」


(いやいやいや、ちょっと待って。そうだよね。話の流れ的に始末しろってそういう事だよね。ヤバいヤバいヤバい。私もしかしなくても本当にこのまま殺されちゃうの? ちょっと本当に勘弁してよぉぉ~)


遠ざかる母と兄の泣き声を後に不安しか抱えていない赤子は、暖かい部屋からどこかへ連れ出されたようだった。


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