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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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カキーーーン!!


鋭い金属音に驚いた美咲がいったい何事かと辺りを確認すると、すぐ傍でパピと黒装束の男が対峙していた。


そしてグリは咄嗟に美咲を背にして庇い結界を張りだしていた。


(凄い凄い! グリって結界を張れたのね)


美咲は黒装束の男に襲われた事実よりグリとパピの実力に感心していた。と言うか、気配も無く襲ってきた男に咄嗟に対応できるグリとパピは凄いと心から感動していた。


そして何より結界という魔法みたいなものを実際に見たことでかなり興奮していた。


「死ね!」


剣を合わせたまま睨み合っていたパピと黒装束の男。先に動いたのは黒装束の男だった。


「剣を手にしたが私は殺生はしない。去れ」


(毎日熊の魔物を倒してたって自慢してたのに今さら?)


美咲はパピの言葉がまるで時代劇の台詞に聞こえ、目の前のやり取りを芝居のように感じていた。


「美咲プライベートダンジョンの中へ逃げなさい。美咲の姿が見えなくなれば彼も引くでしょう」


パピと黒装束が激しく剣を交える中で、グリが小声で美咲に指示を出す。美咲の命が狙われているのだとグリは気付いたらしい。


「逃げるなら三人一緒よ。今さら一人にしないでよ」


一人で逃げろと言われ、美咲は漸く事の重大さに気付きグリとパピのことが心配になる。


「心配はいりません。私達もすぐに戻ります」


「やめてよ。それ確実にフラグだから!!」


フラグが通じる訳もないと思いながらも美咲は叫ばずには居られなかった。

プライベートダンジョンのボスである熊を軽々倒せるはずのパピが苦戦しているようにも見えて、美咲の不安はどんどんと募っていく。


「分かりました。ではこのまま私も一緒に行きます。パピ先に戻りってますよ」


「了解! すぐに後を追う」


プライベートダンジョンの入り口である鳥居までの十メートルほどを美咲はグリに手を引かれダッシュで走り、そしてプライベートダンジョンへ押し込められるようにして入る。


「何で外の様子が見られないのよーーー」


パピのことが気になった美咲は咄嗟にダンジョンの入り口を振り返り叫んでいた。


そして今にも外へ行こうとしていたグリが美咲の大声に驚き振り返る。


すると驚いたことにプライベートダンジョン入り口前の様子が透けて見えるようになった。

入り口部分の前だけでなくその方向全面が見渡せるようになっていて、黒装束の男が美咲を追って今まさに鳥居を潜ろうとしているのが見えた。

そしてその後を追うように鳥居に向かって走るパピの姿もしっかりと確認できた。


「良かったぁ~…」


プライベートダンジョンの外が見られるようになった事より、パピの無事が確認できて戻ってくるのが見えたことに美咲は心から安堵した。


「お待たせ~」


「パピってば心配したんだからね」


「悪かった。刀は使い慣れていないから少し手こずった。やっぱり薪割り斧とは勝手が違うな」


武器屋で刀を気に入り新たな武器として購入したパピだった。グリは短めの脇差しを購入している。

服はグリもパピも一般的な平民服にしたので何の目立った特徴も無いのに、その姿で刀や脇差しを持つ方が美咲にはすごく違和感があった。


しかし街中を良く見ればそう驚くことでもない格好なので、ダンジョンのあるこの世界ではこれが冒険者の普通なのかと納得するしかなかった。


「薪割り斧だったらあの黒装束に負けてたんじゃないの?」


黒装束の短剣は切れ味が良さそうだった。薪割り斧の柄を切られたらきっと戦うのも不可能だったのじゃないかと美咲は考えていた。


「あっそうか無力化させれば良かったのか。つい刀を手にしたら使ってみたくなって忘れてた」


「無力化って?」


「グリも私もその気になればそのくらいはできるって事だよ」


「そうですよ。私達は元々霊獣ですし、神の使いをしているのですからそれくらいできて当然です」


「えぇぇ~何よその反則みたいな話」


どういった無力化なのか答えは貰えなかったが、なんだか美咲では考えも付かないような力を使えるのだと想像すると心配したことが損だった気がするから不思議だ。


「この姿になって力を使うことがなかったので忘れてた」


「私達はまずこの姿でもどの位の力が使えるのかもう少し確認しておく必要がありそうですね」


「ダンジョンの魔物を倒すのに力を使ってなかったってこと?」


「そうですねぇ…。力を使う必要を感じませんでしたね」


「それに人間のマネをして戦うのも楽しかったしな」


グリとパピとそして美咲も黒装束の男のことなどすっかりどうでも良くなっていたが、当の黒装束の男はパピの姿が消えたのを目の当たりにして、何度も確認するように鳥居を出たり入ったりと繰り返していた。


「なんだか目障りね。外の景色よ消えて!」


外の様子を見たいと願ったら見られるようになったのだからその逆もあり得ると考えて試しに叫んでみると思った通り外の景色は消えた。本当に便利な機能だと美咲はちょっとだけ喜んだ。


「それにしてもさっきの男はいったい何者でしょう」


「あっそうだ。もしかしたらプライベートダンジョンのことがバレたかも」


「それは無いでしょう」


「なんでそう言い切れるのよ」


「そもそもプライベートダンジョンなどと言うものを知る者が居ないからですよ。この場所柄を考えて神隠しとでも思う方が理解しやすいです」


「そんなもの?」


「そんなものです」


「そっかぁ。じゃぁ取り敢えずは安心だね」


美咲は偶然とは言えこの場所にプライベートダンジョンを設置できた幸運に心から感謝した。

そしてきっとこれもこの神社の神様もしくはあの老人の思し召しなのかも知れないと思うと、今まで以上にもっとちゃんと感謝をしてお供えをしなくてはと思うのだった。



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