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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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「じゃ~ん!! どうよ! ねぇねぇ、可愛いでしょう?」


美咲はグリが美咲の煩いほどの注文を聞き入れリメイクしてくれた洋服(?)を着て、グルグル周りながらご機嫌に二人に披露していた。


若草色の生地に金糸を交えた多分藤の花をイメージした模様が全面に入っていた産着を和装ケープの様に仕立て、神主の白衣を二部式着物に仕立て直し、下を産着の残りの生地と合わせて膝丈のフレアスカートのように仕上げてある。


勿論二部式着物なので着るのも簡単で帯も必要無く、和装ケープがちょっとミニ丈なのがとっても可愛くて、見た雰囲気が洋服風なその出来映えに美咲自身とても満足だった。


「うん、いいじゃないか。どっかのお嬢様みたいだぞ」


「ええ、とっても可愛いですよ」


「でしょうでしょう。やっぱりお洒落は大事よね。これならどこへ出かけても恥ずかしくないわ」


「それでは折角その気になっている内に出かけますか」


「ああ、そうしようぜ」


美咲はグリとパピに促され、鳥居の場所からプライベートダンジョンを出て、そのまま鳥居の脇から神社内へと足を踏み入れた。


神社の鳥居がプライベートダンジョンの入り口に設定されているのは知っていたので、こうすれば下界の神社に行けるのも当然知っていた。


プライベートダンジョンを消してしまう方が簡単かとも思ったが、まだこの場所を離れる予定はなかったので念のため敢えてそうしたのだった。


第一消すのはいつでもできるけれど、展開させるのは人目を気にしなくてはならないと思っているので一応用心したとも言う。


「それじゃぁあとは任せたわよ。私はグリに従うだけだからね。その辺は忘れないでね」


神社で職員と挨拶するのもお酒を売る交渉も美咲にできるとは思えないので改めて念を押しておく。それに突然何かを振られても絶対に対応できるとは思えなかった。


美咲は瓢箪からお酒を出すだけのために付いて来たので、ここではそれ以外をする気は初めからまったく無かった。


「それで良いですよ。私にお任せください」


美咲はとても頼もしいグリの後をパピと並んで付いていく。さっきまでのご機嫌なテンションはすっかり落ち着いていた。


そしてあれよあれよと話が進み、酒壺にお酒を注ぎ入れ終わりふっと気を抜いていると、金貨が山になって乗った三宝を目の前に置かれた。


その金貨の数にあまりにもびっくりして、声も出せずに何度も目をしばたたかせ思わずゴクリと唾を飲み込んでいた。


下手をしたら物々交換が可能なこの世界でこれほどの金貨を所有していた神社にも驚きだったが、それを一升入るか入らないかの酒壺に入れたお酒に惜しむことなく出したのも驚きだった。

どう考えても金貨の価値が低い訳がなく、このお酒がそこまで高値で売れるとは思ってもいなかった。


しかしもっと驚きなのはグリの反応だった。


「これほどの大金はありがたいのですが、私達はこの金貨を使えるような店とは取引がありません。申し訳ありませんが庶民が使える貨幣での取引をお願いします」


「そうなりますとかなりの量になりますが…」


「でしたらこれに入るだけでお願いします」


グリが出したのはスニーカーを買ったときに付いてくるような大きさの巾着型の革袋だった。


「何でよ!?」


絶対に喋らずに大人しくグリに従うと決めていたはずの美咲だったが思わず叫んでいた。折角くれるという大金を断るなんてどうかしていると憤ってしまったのだ。


「お金はあって困るものじゃないわ。どうして自分から値段を下げに行くのよ」


美咲の必死の叫びに似た言葉をグリは静かに顔を振り溜息を吐くと諭すように話し始める。


「美咲、簡単に大金を手にすると碌な結果になりませんよ。折角の神器も神のご機嫌を損ねるような振る舞いをしていたらその効果をきっと無くしてしまうでしょう。堅実が一番です。この取引が最後になる訳ではないのですから納得してください」


言っている事は至極もっともで、もっとも過ぎてグリの言葉に美咲はぐうの音も出なかった。


「それにこれだけあれば平民なら節約すれば一年は暮らせるはずですよ」


そう言って新たに神主が用意してくれた金子が入った革袋をグリは持ち上げる。かなりずっしりと重そうだった。


ついさっきまでプライベートダンジョンでこの神社の厄介になってお金なんて必要としていなかったのに、金貨を目にした途端必要以上の欲をかいたと凄く恥ずかしい気持ちになっていた。


あのお酒はこの瓢箪のお陰であって、それを記憶していて美咲のために見つけてくれたグリにも感謝だし、お酒が売れると教えてくれた老人にも感謝だし、それに何より美咲専用にしてくれた神様への感謝を忘れてはいけないと思う。

そして美咲自身なんの努力もしていないのに確かに欲をかき過ぎたと心から反省した。


「ごめんなさい。生活できるだけのお金があれば良いのを忘れてた」


「分かれば良いのです。では次は必要な物を買い揃えましょうか」


「おっ、街へ行くのか」


大人しくしていたパピが途端に元気になる。ついさっきまで見事に気配を消していたとは思えない早業だった。


そうして美咲達は神主を始め神社職員総出で丁重に見送られながら神社を後にし、次は買い物のため領都の中心部へと向かうのだった。



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