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雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第一部 奪われた鍵

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第六話 桜雷作戦・決戦 ― 雷は裂け、桜は舞う

夜明け前の空は、まだ藍色の膜に包まれていた。

だがその下で、千を超える桜花帝国兵が静かに息を潜めている。

魔導灯を消した陣列は、風の音すら飲み込むほどの静寂に沈んでいた。


天城朔夜は、丘の上で遠眼鏡を構えた。

白い息が細く揺れる。


(今日……全てが動き始める)


背後では、尚玄将軍が戦列を確認している。

第三陣、第四陣、第五陣。

その全てが朔夜の立案した戦術のもとに配備されていた。


「朔夜。

 お前が描いた“雷の線”――

 本当に信じていいのだな?」


尚玄の問いに、朔夜は迷わず頷く。


「はい。

 黒鋼の前線基地は、補給線が一本だけです。

 その“喉元”を断ち切れば、敵は動けなくなる」


「……若造の作戦に全軍を預けるのは、なかなか肝が据わるものだぞ」


「僕ではありません。

 ――桜花の未来に賭けてください」


尚玄は短く笑い、背を向けた。


(夕凪……この道の先に、必ず手がかりがある)


朔夜の胸の奥で、雷のような緊張が走った。


「……総員、前へ」


尚玄の号令が、風を裂くように響いた。

帝国軍の“静寂”が、ゆっくりと“進軍”へ変わっていく。


──ギギギギ……ン。


その瞬間、遠方で黒鋼塔の蒸気警報が鳴り始めた。


(気づかれた……!)


だが朔夜は冷静だった。


「想定内だ。

 黒鋼は感知能力が高い。

 むしろ、ここからが本番……!」


朔夜は作戦盤を展開し、音声式魔導伝令に命じた。


「第五陣、影山隊を“左斜め前”に展開!

 敵の第一波を誘導して斜めに崩す!」


『了解! 影山隊、転移陣起動!』


桜花兵たちが蒸気術式で高速移動。

黒鋼の索敵を“ずらす”陣形に切り替わる。


(黒鋼獣は前面視界が広いが、側面は弱い……

 ここで一気に突破できる!)


朔夜の脳内に、昨日の情報が蘇る。

黒鋼の初動速度、操兵の癖、動力炉の安定時間――

全てが描く“弱点の形”。


その弱点のど真ん中を、

朔夜の作戦は突いていた。


黒鋼側の霧の向こうに、

巨大な影がゆっくりと立ち上がる。


四脚の鋼鉄。

胸部で蒼い魔導炉が唸る。


陸蒸気兵《黒鋼獣》――十数体。


(来た……!)


朔夜は震えそうになる指先を押さえ、号令を飛ばした。


「侍工廠、第弐班!

 “桜踏影おうとうえい”――発動!!」


『了解!』


蒸気の噴射音が一斉に鳴り、

桜花の忍装兵たちが地面を駆け抜ける。


その姿は、まるで夜明けの前触れの“影”。

朔夜が生まれ育った村で何度も見た

侍工廠の誇り高き姿だった。


黒鋼獣の巨体が一歩踏み出すたびに地面が震える。

だがその足元、わずかな死角――

そこへ侍工廠が潜り込み、刃と蒸気と魔導が交錯する。


──刃閃!

──蒸気爆裂!


黒鋼獣一体の脚部が切断され、膝をつく。


朔夜が声を上げた。


「今だ!!

 第三陣、前進!!

 黒鋼獣の中央突破を狙え!!」


部隊が雪崩れ込む。


黒鋼側の監視塔が警告を上げた。

魔導灯が点滅し、陣形が乱れる。


(読める……全部、見えてる……!

 黒鋼の反応も、配置の癖も……)


自分の脳が高速で“計算”を始めているのが分かった。


(これは……僕の力なのか?)


その時、参謀の一人が叫んだ。


「天城士官!

 敵の後方から――補助操縦と思われる魔導反応!!

 索敵が異様に精密です!!

 まるで我々の位置を――!」


朔夜の心臓が痛いほど跳ねた。


(……蓮?)


言葉にならない衝撃が走る。


敵の索敵――

動きの癖。

魔導パルスのリズム。


(……蓮の、読み方だ……)


かつて、隣で畑の害獣の位置を“匂い”だけで言い当てた少年。

風の流れだけで雨の訪れを察した少年。


(蓮……

 本当に……黒鋼にいるのか)


胸の奥が熱く、苦しく、張り裂けるようだった。


「朔夜!」

尚玄が振り返る。


「動揺するな!

 作戦を完遂させることが最優先だ!!」


朔夜は歯を食いしばり、視線を地図に戻す。


「……はい!!!」


雷のような声だった。


蓮の存在が、この戦場に影を落とした。

だが同時に、朔夜の決意をさらに強くした。


(蓮……

 もし本当にいるなら、

 僕は――戦ってでも、夕凪を取り戻す)


遠くの空で、黒鋼塔の蒸気爆音が轟く。


戦場の中央に、

雷のような光が走った。


桜雷作戦――開戦。

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― 新着の感想 ―
初めてのバトルですね。 陸蒸気兵とか、出てきましたが。 ロボット? サクラ大戦の光武的な奴ですか? もしくは、ガンダムくらいのサイズ?? こちらも、ロボットある感じですか?? 基本、ロボットバトル?…
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