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雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第4部

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第14話(表) 『境界呼応 ― 英雄は“深層の座標”を見る』

――天城朔夜 視点


霧が、震えていた。


ざわり、と空間が揺れる。

風ではない。

魔導反応でもない。


世界そのものが呼吸している。


(蓮……

 少女……

 お前たちが“境界線”へ踏み込んだのか)


胸の奥にある光が、

鼓動のように脈打っている。


副官が恐怖混じりの声で言った。


「朔夜様……この霧……

 まるで“生き物”のように動いています……!」


霧が円を描くように回転し始めた。


朔夜は直感した。


(――呼ばれている)


遠くで雷が鳴る。

しかしそれは、朔夜の雷ではない。


蓮の光だ。

少女の光だ。


そして――

それらを取り囲む、もうひとつの波形。


(世界意思……)


霧が朔夜の足元で静かに裂け、

細い道のように“深層方向”を示す。


副官が叫ぶ。


「ダメです朔夜様!

 あれは……“この世界ではない場所”です!

 行けば……帰ってこられない可能性が――!」


朔夜は静かに答えた。


「行くつもりはない。」


副官が安堵しかけた瞬間、


「まだ“行けない”だけだ。

 境界座標が揃っていない。」


胸の光が熱を宿す。


少女の声が微かに響く。


『……にいちゃん……

 もうすぐ……』


蓮の声も届く。


『朔夜……

 境界の“鍵”が揃うまで待て……』


朔夜は剣の柄を握り締めた。


(――あと少しだ)


その瞬間だった。


空が“鳴った”。


雷ではない。

地震でもない。


空そのものが、

音を立てて割れた。


殲滅隊の残兵が霧をかき分けて現れる。


だが、彼らの表情は恐怖に染まっていた。


隊長格が叫ぶ。


「天城朔夜――

 新たな命令が降りた!!」


「世界意思より、

 英雄排除任務は“強制更新”!」


「貴様を――

 境界線ごと封じる!!」


朔夜の眉がわずかに動いた。


(……境界線ごと?)


副官が震えた声で言う。


「朔夜様……“封じる”とは……

 世界の深層へあなたを“落とす”ということです……!」


殲滅隊の周囲に黒い歪みが生まれる。


重力のようでもあり、

穴のようでもあり、

生き物の口のようでもある。


世界意思が作り出した“深層への落とし穴”。


英雄を殺すのではなく――

存在ごと隔離するための魔法構造。


朔夜は霧の動きに気づいた。


霧が、

その穴を避けるように震えている。


(……霧が嫌がっている)


(――ここで俺が“落とされる”ことを、

 霧は拒絶している)


殲滅隊が詠唱を開始する。


「座標固定――」

「位相縫合――」

「対象:天城朔夜――」


朔夜は静かに剣を抜いた。


「……悪いが、

 落ちるつもりはない。」


雷が剣を走る。


副官が叫ぶ。


「朔夜様!!

 霧が――!!」


霧が一斉に広がった。


殲滅隊の術式を

“飲み込んだ”。


隊長が絶叫する。


「馬鹿な……!?

 世界深層系魔導を“吸収”だと……!?

 そんなこと……存在するわけが――!」


朔夜は理解した。


(霧が……境界になっている)


(蓮……

 少女……

 二人が境界を開いたことで、

 この土地も“世界の外側”に触れた)


雷がさらに強くなる。


胸の光が、

霧と共鳴する。


朔夜は低く言った。


「俺を封じたいなら――」


「“世界そのもの”が来い。」


雷が爆発した。


霧が“黒い穴”を粉砕する。


殲滅隊が吹き飛ぶ。


隊長は信じられない表情を浮かべた。


「もはや……英雄ではない……!

 貴様は……“境界側の存在”だ……!!」


朔夜は前を見つめた。


霧の先に、境界がある。


蓮がいる。

少女がいる。


三つの光はすでに揃っている。


(……行ける)


(いや――

 行く)


朔夜は胸の奥で宣言した。


(待っていろ。

 必ず辿り着く)


霧と雷が応じた。

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