表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第4部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/110

第11話(表) 『境界圧 ― 英雄は“世界”と同期する』

――天城朔夜 視点


灰境州の霧は、

もはや“自然の霧”ではなかった。


脈動している。

意思があるかのように動く。


(……檻が、外と“繋がった”のか)


胸の奥で何かが引きずられ、

朔夜は思わず空を見上げた。


雷のフラッシュ――

だがこれは自分の力ではない。


外界のどこかで響いた何かが、

この土地まで届いている。


(蓮……)


(何をした――?)


そのときだった。


霧が裂けた。


黒い影が十数人、

直列隊形で突進してくる。


「第二制圧群――第二波、突入!」


副官が悲鳴に近い声を上げる。


「朔夜様ッ!

 相手は“英雄殺し”の本隊です!

 一波目とは格が違います!!」


たしかに“違い”は明確だった。


一波目はただの討伐部隊。

だがこの第二波は――


“英雄と戦うためだけに生まれた”兵たち。


彼らの装甲は軽く、

しかし魔導抵抗値は極端に高い。


手にするのは、拘束刃ではなく“対雷魔断杖”。


朔夜の雷を、切断するための兵器。


隊長格が叫んだ。


「天城朔夜――

 貴様の拒絶行動が、

 檻を震わせていると確認された!」


「貴様は世界秩序の“最優先排除対象”だ!」


朔夜は一瞬、息を呑んだ。


(……世界秩序の……

 最優先排除対象……?)


これはもはや、軍事命令ではない。


“世界の健全性を保つための排除”――

 そういう扱いにされたということだ。


副官が震えて言った。


「これは……

 英雄殿の存在が、

 “世界の運用そのものに干渉している”と見なされた……」


朔夜は握っていた剣を強める。


(……蓮……

 あの檻で何が起きている……?)


第二波が突入する。


霧が暴風のように押し返す。


だが――


第二波は止まらない。


霧に干渉し、

その抵抗を“測定しながら進む”ような動きを見せる。


「こいつら……

 霧のパターンを見切り始めてる……!」


副官の声は、焦りと恐怖に満ちていた。


朔夜は低く呟いた。


「……どれだけ俺を殺す気だ」


隊長が答える。


「どれだけだと?

 英雄を“完全排除”しない限り、

 新時代は創れないのだ!」


「貴様が立ち続ける限り――

 “例外”は残り続ける!!」


朔夜の心に、

強い怒りが走った。


(例外を、認めない……?)


(なら俺は――

 例外であり続けてやる)


雷が剣を包み、

空気が青白く震えた。


第二波の魔断杖が光る。


二つの力が衝突する。


衝撃波が霧を吹き飛ばし、

地面が割れた。


戦闘は、

“人間同士の戦い”をはるかに超えていた。


その瞬間、

朔夜の胸に“声”が流れ込んだ。


――蓮の声ではない。


――少女の声でもない。


もっと淡く、

遠く、

しかしはっきりとした光の声。


『…………助……ける……』


朔夜は一瞬、動きを止めた。


(今のは……誰だ……?)


隊長が叫ぶ。


「隙を見せたな!!」


魔断杖が朔夜の胸へ迫る。


しかし――


霧が、動いた。


霧が朔夜の身体を包み込み、

一瞬だけ“世界から切り離す”ように位相をずらした。


魔断杖は空を切った。


隊長の目が見開かれる。


「位相……ずらし……!?

 そんな芸当、英雄にできるはずがない――!」


朔夜はつぶやく。


「俺じゃない。」


「この土地が――

 俺を守っている。」


霧が朔夜の足元で渦を巻き、

雷が上下に走る。


第二波の兵たちが怯む。


副官が呟く。


「朔夜様……

 あなたは……もはや戦場の“中心”ではなく……」


「この土地の“軸”になっている……」


朔夜は理解した。


(俺の意思が、灰境州に反映されている……?)


(まるで――

 俺が“世界の側”に触れているようだ……)


そのとき、

遠くで雷が轟いた。


檻からの“外界接続”の音だ。


蓮の光が、また朔夜の胸を揺らす。


少女の声も、微かに届く。


ここに来て、

三者の光が再び同期し始めていた。


隊長が叫んだ。


「退けッ!

 隊列を維持できん!!」


第二波の隊列が崩れ始める。


朔夜は剣を構えた。


(……終わりじゃない)


(ここは序章だ)


(檻の向こうで蓮が動いている以上、

 俺も――進む)


雷が上へ伸びた。


そして朔夜は、

次の段階へと踏み込む決意を固めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ