第四部・プロローグ ――神なき世界、新時代の戦争――
世界は、静かに終わった。
――そして、何事もなかったかのように、始まった。
蒼揺れは消え、
世界修復装置は沈黙し、
“神の介入”と呼ばれていた現象は、すべて過去の記録になった。
空は、もう揺れない。
大地は、もう書き換えられない。
この世界はついに――人間だけのものになった。
だが皮肉なことに、
世界が人の手に戻ったその瞬間から、
「新しい戦争」は、すでに始まっていた。
各国は、再編を急いだ。
桜花帝国は「英雄」を抱え込み、
黒鋼連邦は「新秩序」の再設計を進め、
中立国ストラタは「時代の均衡」を掲げて表舞台へと進出した。
人々はそれを、こう呼び始める。
――新時代創世戦争。
それは、
神のいない世界で、
人間が“自分たちの正義だけ”を武器にして行う、
最初の大戦だった。
誰もが言う。
「未来のためだ」と。
「次の時代のためだ」と。
「もう、世界に縛られる必要はないのだ」と。
だが誰も気づいていない。
“支配”は、世界から人へと姿を変えただけだということに。
英雄は、再び旗に担ぎ上げられ。
鍵だった少女は、象徴として利用され。
世界を壊した男は、名もなき“危険因子”として追われる。
それでも人は、まだ信じている。
――これは「新しい時代を作るための、正しい戦争」なのだと。
だが本当にそうなのか。
正義は、誰のものなのか。
時代は、誰の手に委ねられるのか。
そして――人は、何に支配されて生きるのか。
世界が消えた、
その“次の日”。
天城朔夜は、
再び人々の前に立つことになる。
英雄として。
否――
新時代という名の戦争に、最も縛られた男として。
運命は、もう“神”によって決められない。
だからこそ今、
人間だけが、互いの運命を縛り合おうとしていた。
ここから始まるのは、
神なき世界で行われる、
「時代の取り合い」と「支配の連鎖」の物語。
その中心には――
光になれなかった者たちの選択がある。




