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雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第3部

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第6話(表) 『中央石室 ― 蒼の王国、最初の声』

――朔夜視点


ストラタ中央域は、異様なほど静かだった。


風が吹いているはずなのに、音がない。

蒼く透き通る空気が、音そのものを吸い取っているかのようだった。


結界を越えた瞬間から、

朔夜ははっきりと“世界が切り替わった”感覚を覚えていた。


「……ここが、中央石室の外周……」


燈子が低く呟く。


足元の岩盤には、幾何学的な紋様が無限に刻まれ、

それらが淡く蒼く脈動している。

魔導でも、機械でもない。

それは“世界の設計図”のようにも見えた。


(……まるで、世界そのものの内部だな)


朔夜の胸が、嫌な予感で締めつけられる。


そのとき――

蒼霧の奥から、静かな足音が響いた。


コツ……コツ……。


やがて現れたのは、人影。


だが“人”とは、どこか違う。


白と蒼の衣をまとい、

仮面のように感情の読めない顔。

年齢も性別も判別できない。


「ようこそ、天城朔夜」


静かな声だった。

だがそれは、耳ではなく、頭の奥に直接響いた。


燈子が即座に符を展開する。


「名を名乗れ。

 あなたは、ストラタ王族か?」


その存在は、首を横に振った。


「我は“王”ではない。

 我は**《管理端末・第一位階》**。

 この中央石室を守護し、

 “監視者の意思”を伝える役割を持つ者」


朔夜は一歩前へ出た。


「……監視者の代理、というわけか」


「その通り」


管理端末は淡く輝いた。


「天城朔夜。

 あなたは“鍵の一族”の現当主。

 そして同時に、“鍵を否定する意思”を持つ者」


朔夜の目が鋭くなる。


「夕凪のことも、すべて知っているという顔だな」


「知っている。

 天城夕凪は、扉と統合し、

 “世界修復機構”の一部となった」


燈子の手が、わずかに震えた。


「……世界修復?」


管理端末は淡々と答える。


「古代文明は、予測していた。

 文明は必ず、臨界点を越える。

 武器、思想、生命改造。

 すべてが“世界の許容量”を超えたとき、

 世界そのものを一度“再構築”する必要がある」


朔夜は低く言った。


「……それが、“蒼化”の正体か」


「肯定する。

 現在の蒼揺れは“再構築前兆現象”である」


その言葉は、

帝国も、黒鋼も、ストラタも――

すべてが“消去対象”に含まれていることを意味していた。


燈子が強く言う。


「ならば聞く。

 夕凪様はその“引き金”に選ばれたのか?」


管理端末は即答した。


「天城夕凪は“最適解”の一つだった。

 しかし、唯一ではない」


朔夜の心に、嫌な冷たさが走る。


「……代わりがいる、と?」


「条件適合者は三名存在する」


朔夜は、はっきりと悟った。


その三人とは――

夕凪、朔夜、そして……


(……蓮)


管理端末の声が続く。


「天城朔夜。

 あなたには“選択権”が付与されている」


「選択……?」


「天城夕凪を正式に“鍵”として確定させるか。

 あるいは……

 代替となる“別の意思”を差し出すか」


燈子が息を呑む。


「……まさか……

 朔夜様ご自身を……?」


管理端末は静かに肯定した。


「鍵は“命”ではない。

 “世界を書き換える権限”そのものだ。

 それを渡せば、個は不要となる」


朔夜の背後で、蒼霧がざわりと揺れた。


(……俺が、夕凪の代わりに消えれば……

 妹は、“人として”生きられる……?)


一瞬だけ、

そんな考えが胸をよぎる。


だが、次の瞬間。


朔夜は、剣に手をかけた。


「……ふざけるな」


その声は、低く、だが揺るぎなかった。


「俺は“選ばれる側”じゃない。

 夕凪もだ。

 お前たちの“都合のいい修復部品”になるために、

 生きてきたわけじゃない」


管理端末の光が、わずかに強まる。


「感情的拒否を確認。

 交渉フェーズ、強制移行」


石室全体の紋様が、一斉に発光した。


燈子が叫ぶ。


「朔夜様!!

 中央石室が“戦闘形態”へ移行します!!」


朔夜は剣を抜いた。


「ちょうどいい。

 まずは“代理人”から、叩き壊す」


蒼い世界の中心で、

兄は、妹の未来を懸けて剣を構えた。


そしてこの時、

別の場所から、

同じ“中心”へ迫る一人の男がいることを――

朔夜は、まだ知らない。

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