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雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第3部

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48/110

第1話(表) 『蒼揺れの朝 ― 帝都、静かなる異変』

夜が明けきる前の帝都に、

ふわりと蒼い風が吹き抜けた。


朝霧に混じる淡い蒼光は、

まるで世界そのものが呼吸しているような

静かな脈動を帯びていた。


天城朔夜は、早朝の参謀本部を一人歩いていた。

一週間前、扉心臓領域の戦いを終えて帰還してから、

帝都の空気はずっとどこかおかしい。


(……また揺れている)


足を止めると、大地の奥から微かな振動が伝わった。

目に見えない“蒼揺れ”。

第二部の戦いが残した爪痕だ。


桜蒸塔が、低く唸りをあげていた。

燃えるはずの赤い蒸気が、青白く染まっているのを

朔夜は見逃さなかった。


「……地脈が完全に乱れているな」


背後から気配がした。


「おはようございます、朔夜様。

 今朝の観測結果、まとめてきました」


朱雀院燈子が現れ、

資料を丁寧に差し出してくる。


朔夜が目を通すと、眉がわずかに動いた。


「……北部結界、再び蒼反応上昇。

 西方でも地脈の連動揺れか」


「はい。各地で“蒼揺れ”の報告が相次いでいます。

 ただ……まだ原因が特定できません」


燈子は静かだが、

どこか不安を隠しきれない声だった。


朔夜は資料を閉じ、壁地図を見据える。


「……夕凪の統合後、世界は一度落ち着くはずだった。

 だが実際には、扉が沈黙した瞬間から“別の何か”が動き始めている」


燈子が小さく頷く。


「やはり……夕凪様の力が作用しているのですか?」


朔夜は言葉を選ぶことなく答えた。


「“蒼の共鳴核”は、

 扉を抑え込んだだけで終わったわけじゃない。

 夕凪自身が鍵として変質した以上、

 世界のどこかと“繋がり続けている”可能性が高い」


燈子の瞳が鋭く揺れた。


「つまり……

 夕凪様が、また狙われると?」


朔夜は短く息を吐いた。


「狙われる、ではない。

 “呼ばれている”のかもしれない」


蒼い風が窓を震わせた。

二人の会話に答えるように。


燈子は、朔夜の横顔をそっと見つめる。

兄としての苦悩がそこに滲んでいた。


その時、部屋の扉が急に開いた。


「失礼します! 緊急報告です!」


若い通信兵が駆け込んできた。


「東方戦線の監視塔から……

 “蒼色の光柱が発生”との報告が!

 位置は……中立国ストラタ方面です!」


「ストラタ……!」


朔夜は立ち上がった。


燈子が素早く地図を確認する。


「この距離で光柱が確認できるなんて、

 通常の魔導現象ではありえません。

 これは……」


朔夜は静かに言った。


「扉の残響だ。

 そして――ストラタが動いた」


通信兵がさらに続ける。


「帝都西部でも、蒼い地鳴りが再発生しています!

 町の結界が一部“蒼化”しているとのこと!」


燈子は息を呑んだ。


「まさか……

 世界規模で同時多発の蒼揺れが……?」


朔夜は決断した。


「燈子、すぐに参謀本部を招集しろ。

 “蒼揺れ対策本部”を立ち上げる」


「了解です!」


燈子が走り去る。


朔夜はひとり窓辺に立ち、

蒼く染まる帝都を見下ろした。


(夕凪……

 お前は今、どこで何を感じている?)


妹を思う兄の心は、

風に乗りどこか遠くへ流れていく。


帝都を渡る蒼風は、静かに告げていた。


——第三部は、すでに始まっている。

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