第28話(表) 最終話 『終焉と蒼の統合 ― そして少女はひとつになる』
扉心臓領域は崩壊寸前だった。
蒼い稲妻が世界を裂き、
天井はひび割れ、
床は光の奔流に飲み込まれていく。
統合の光の中で、
夕凪と影夕凪の輪郭が完全に重なりつつあった。
真白の悲鳴が響く。
「まずい!!
扉が“鍵の完全覚醒”と誤認してる!!
夕凪ちゃんが飲まれたら……
もう、戻ってこられなくなる!!」
蓮が走る。
「夕凪!!
離れるな!!
俺たちが絶対に助ける!!」
朔夜は刀を構え、光の奔流に抗いながら叫ぶ。
「蓮!! 真白!!
夕凪を中心に《蒼の結界》を張るぞ!!
暴走扉を鎮めるには……
夕凪の心の統合を“守り切る”しかない!!」
蓮は片膝をつき、
血を吐くような息で頷く。
「わかった……!!
どんな光でも……
夕凪に触れさせない!!」
朔夜と蓮、真白の三者が夕凪の周囲に円を描き、
蒼光を必死に押し返す。
だが——
扉の咆哮はさらに激しくなる。
《認識――鍵統合進行。
大陸再編計画、起動準備》
朔夜が目を見開く。
「……再編計画……!?
扉は大陸そのものを書き換える気か!!」
(影夕凪の統合が“鍵の完成”扱いになっている……
このままでは……夕凪が……!!)
光の中心で、
夕凪が震えながら手を伸ばす。
「お兄ちゃん……
蓮くん……
助けて……
影ちゃんと……一緒に生きたい……
消えたく……ない……!!」
影夕凪の声が重なった。
『夕凪……
わたしも……
一緒に、生きたい……!!!』
二つの声が共鳴し、
夕凪の胸に蒼い紋章が浮かび上がった。
真白が叫ぶ。
「これ……!!
〈蒼の共鳴核〉……!!
夕凪ちゃんの“心の統合”が……
新しい力になってる……!!」
朔夜の瞳が鋭く光る。
「夕凪が……
自分の弱さも、痛みも、影も——
全部抱きしめようとしている……
なら……
俺たちがやるべきことはひとつだ!!」
刀を構え、
蒼光へ突き立てた。
「《皇桜式・対扉封呪》
——蒼心抑制!!」
蓮が夕凪の肩に触れ、力を流し込む。
「夕凪!!
お前の“生きたい”が……
一番強いんだ!!
行け!!」
真白も叫ぶ。
「夕凪ちゃん!!
あなたの光で……扉を止めて!!」
夕凪は涙の中で微笑み——
胸の紋章に手を当てた。
「影ちゃん……
いっしょに……行こう」
蒼光が大爆発する。
扉が揺れ、悲鳴を上げた。
《認識エラー。
鍵の波長……複合化。
想定外構造……抑制不能……》
夕凪が叫ぶ。
「わたしは……
“夕凪”のままで生きたい!!
影ちゃんも連れて……
前に進みたい!!
だから……
扉なんて……知らない!!
わたしは……選ぶ!!
自分の未来を!!」
蒼い紋章が輝き、
扉の暴走した光を吸い込んでいく。
蓮が目を見開く。
「夕凪の力が……
扉を“上書き”してる……!!」
真白が震える声で呟く。
「……これは……
“鍵の完成”じゃない……
“鍵の拒絶”……!!
夕凪ちゃん自身の意思が……
扉の支配を否定してるの……!!」
影夕凪の声も響く。
『夕凪……
あなたは……
こんなに強かったんだね……』
夕凪は静かに笑った。
「ううん……
わたしひとりじゃ……できなかったよ。
影ちゃんが……泣いてくれたから……
蓮くんが……抱きしめてくれたから……
お兄ちゃんが……信じてくれたから……
わたし……
ちゃんと自分を見れたんだ……」
朔夜の目がわずかに潤む。
「夕凪……誇りだ」
その瞬間、扉が大きく砕けた。
蒼光が吸い込まれ——
静寂が訪れた。
夕凪は影夕凪を胸に抱いたまま倒れそうになり、
蓮が優しく抱きとめた。
「あとは……眠ればいい……
お前は……よく……がんばった……」
夕凪は涙を浮かべながら微笑んだ。
「……ありがとう……
蓮くん……」
朔夜が静かに言う。
「第二部——終幕だ」
蒼い光が完全に収束し、
扉心臓領域は静かに沈黙した。
だが——
真白だけは空間の奥に残る“気配”を感じていた。
(……これは……
まだ終わりじゃない……
扉の奥に……
“別の意思”……?)
第二部は幕を閉じる。
しかし。
影夕凪の統合で生まれた〈蒼の共鳴核〉は——
第三部への“新たな脅威”を呼び覚ます。
物語は、次の章へ進む。




