表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/110

第27話(表) 『蒼光の終曲 ― 四つの願いが交わる時』

蒼い結界が震え、崩れ落ちるように形を変えた。


影夕凪は“第三形態”へと覚醒していた。


蒼結晶の翼が十枚以上に増え、

髪は光の粒子となって舞い、

顔には涙と怒りと渇望が交錯した色が宿っている。


その姿は、美しく、哀しく、そして——

危険すぎた。


「もう……いやなの……

 否定されるのも……

 いらない子みたいに扱われるのも……

 夕凪が強くなるたびに……

 いらなくなるのも……

 そんな世界……いやぁぁああああああ!!!」


空間そのものが裂けた。


蒼光の奔流が全方位を襲う。


朔夜は夕凪を抱え込むようにして前へ出た。


「夕凪!! 下がっていろ!!」


「お兄ちゃん……!

 影ちゃん……泣いてる……!!」


「泣いていても……暴走は止まらない!!

 夕凪……ここからは、俺に任せろ」


朔夜の声音に、参謀の冷静さも、兄の迷いもなかった。


ただ一人の男として——

妹と、彼女の痛みの影に向き合う。


蓮が朔夜の横に立った。


「朔夜……

 俺も戦う。

 俺は……逃げない。

 夕凪と、影夕凪と……全部に向き合う」


朔夜はちらりと蓮を見た。


その瞳には、かつての疑いも怒りもない。


あるのは、ただ——背中を預ける覚悟。


「……任せるぞ、蓮。」


真白が蓮の背に手を当てた。


「蓮……

 あなたの選択、私が支えるから。

 怖くても、進んで」


蓮は強く頷いた。


その瞬間、影夕凪が叫ぶ。


「やめて……!

 三人だけで……

 勝手に“物語”を作らないで!!

 わたしだって……

 夕凪なのに……!!

 わたしだって……

 愛されたかったのに……!!」


その叫びは、

夕凪本人の胸にも深く突き刺さった。


夕凪は朔夜の腕を離れ、一歩前に出た。


「影ちゃん……」


朔夜が驚き叫ぶ。


「夕凪!?」


夕凪は震える声で続ける。


「わたし……影ちゃんの気持ち……わかるよ……

 わたしも……ずっと……

 誰にも言えなかったから……

 寂しくて……怖くて……

 泣きたくても……泣けなくて……

 “いらない子”だって……思ってた……」


影夕凪の蒼い瞳が揺れる。


「……夕凪……?」


夕凪の声は震えていたが、確かだった。


「影ちゃん……

 あなたはわたしの“弱さ”じゃない。

 わたしが……生きるために必要だった部分だよ。

 だから……

 “いらない”なんて言わない。

 あなたは……わたしなの」


影夕凪の翼が大きく揺れた。


朔夜は刀を下げ、夕凪の言葉を静かに聞いた。


(夕凪……

 お前は……こんなにも強くなったのか……)


蓮は胸を押さえながら呟く。


「夕凪……

 お前がそう言うなら……

 影夕凪も、もう“敵”じゃない……

 でも……

 このままじゃ……世界が持たない……!」


真白が叫ぶ。


「影夕凪は“存在理由”が揺らいでる!!

 夕凪ちゃん本人に肯定されて……

 蓮に認められて……

 でも“どう生きればいいか”が分からないから……

 暴走してるの!!」


影夕凪が震える。


「わたし……どうしたら……

 どうしたら……生きていいの……?

 夕凪がいれば……わたしは不要……

 蓮くんが夕凪を選ぶなら……

 わたしは……消えるだけ……!!」


その言葉で、夕凪は影へ走った。


「違う!!

 わたしは——

 あなたと一緒に生きたい!!

 影ちゃんは“わたしの涙”なんだから……

 ひとりにしない!!

 帰ろう……一緒に……!!」


影夕凪が泣きながら叫ぶ。


「ほんとうに……!?

 ほんとうに……“わたし”を……

 いれてくれるの……!?

 夕凪の中に……

 また……戻っても……いいの……!?」


夕凪は涙の中で笑った。


「戻って……きて。

 わたしはあなたと一緒じゃなきゃ……

 前に進めない」


影夕凪の身体が震え、

蒼い光が強く脈動する。


だがその瞬間——


扉そのものが激しく軋んだ。


真白が絶叫した。


「まずい!!

 “統合が始まる”!!

 影夕凪が夕凪に戻ろうとすると……

 扉が“鍵の完成”と誤認する!!

 このままだと——

 大陸全域が蒼光に飲まれる!!」


蓮が叫ぶ。


「どうすればいい!?

 夕凪と影夕凪を……助けるには……!!」


朔夜が刀を構え直し、低く言った。


「夕凪……

 影……

 どちらかを“失う”選択をする必要はない。

 だが……

 この暴走を止める力がいる」


夕凪が朔夜を見上げた。


「お兄ちゃん……?」


朔夜は力強く頷く。


「俺が道を作る。

 夕凪、お前は影を“迎え入れろ”。

 蓮、真白……お前たちは夕凪の心を支えろ。

 影、お前は夕凪に“帰る勇気”を持て!!」


影夕凪は泣き叫び——

その涙が空間に蒼雨を降らせた。


「こわい……!!

 でも……いきたい……

 夕凪と……いっしょに……!!」


四者がそろって前に進む。


扉が最終形態へと変わり、

蒼い柱が天を貫く。


第二部最終決戦、

いよいよクライマックスへ突入。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ