第25話(表) 『兄の誓い、刃は蒼光を裂く ― 最終決戦、開戦』
扉が震えた。
まるで巨大な心臓が鼓動するように、
空間全体が脈動する。
蒼い光が奔流となって吹き荒れ、
“選択の門”が完全に開きつつあった。
その中心で——
影夕凪が咆哮を上げる。
「もう……いや……!!
夕凪は痛いまま……
蓮くんは迷ったまま……
朔夜さんは私を否定する……
こんなの……いや……!!
ぜんぶ……壊す……!!!」
巨大な蒼の羽根が広がり、
空間の結晶を切り裂いた。
影夕凪はついに**“鍵の守護体”**として覚醒したのだ。
朔夜は夕凪を抱えながら、刀を抜いた。
「……影。
お前の痛みは理解した。
夕凪の涙から生まれた存在だ。
その痛みを俺は否定しない。
だが——」
夕凪が震えながら朔夜の服を掴んだ。
「……お兄ちゃん……
影ちゃんを……殺さないで……
あれは……わたしの……一部だから……」
朔夜はその言葉に痛みを覚えた。
(夕凪……
お前はいつも、優しすぎる……)
だが——
影夕凪は優しさでは止まらない。
「朔夜さん……
夕凪がそう言うからって……
私を否定していい理由にはならない……!!」
影夕凪は蓮へ向かって手を伸ばす。
「蓮くん……!!
私を選んで……!!
夕凪を苦しめたくないなら……
“本物”は……私!!」
夕凪本人が苦しげに叫ぶ。
「違う……!
影ちゃん……違うの……!!
あなたは……
わたしの涙でできた……優しい子……
そんなふうに……言わないで……!!」
蓮は胸を押さえ、膝をついた。
「……やめてくれ……
お前ら……
俺にそんな……
そんなこと言うな……」
真白が蓮を支えながら叫ぶ。
「蓮!!
聞いちゃだめ!!
あなたの心が……消される!!」
影夕凪の瞳が蒼光の中で揺れる。
「蓮くん……
私と一緒にいて……
夕凪を守るためにも……
あなたが必要なの……
あなたの優しさが……
私を作ってくれたんだよ……?」
蓮の息が詰まる。
朔夜は振り返り、蓮に怒鳴った。
「蓮!!
迷うな!!
夕凪を救う道は一つだ!!
“影に呑まれない”ことだ!!」
蓮が震える声で返す。
「……わかってる……
頭では……わかってる……
でも……
影夕凪を……見捨てるなんて……
俺には……できない……!!」
影夕凪が微笑む。
「ほら……ね?
蓮くんは……優しい……
夕凪にはない優しさ……
それが……私は嬉しかったの……」
真白が蓮の胸を殴りつけるように叫んだ。
「蓮!!
優しさってね……
“選ぶ力”がなきゃ成立しないの!!
全部抱えるのは優しさじゃない!!
ただの逃げ!!!」
蓮の目の色が揺れた。
影夕凪が真白へ向けて光の刃を放つ。
「黙って!!
あなたなんか……
蓮くんの痛みも、夕凪の痛みも……
何一つわかってない!!」
「真白!!!」
朔夜が叫ぶ。
光の刃が真白を切り裂く——その瞬間。
「——させるか!!」
朔夜が夕凪を抱えたまま身を投げ出し、
光の軌道を変える。
刀が蒼い刃を受け止め、
激しい火花が散る。
朔夜の腕が裂け、蒼火が迸る。
「朔夜!!」
夕凪が叫ぶ。
影夕凪の声が震える。
「どうして!?
どうしていつも……
夕凪のために……そこまで……!!
夕凪ばっかり……ずるい……!!!」
朔夜は影へ向かって歩みを進める。
夕凪を守るために。
「影。
夕凪を傷つけるものは……
たとえ“夕凪の痛み”であっても……
俺が斬る。」
影夕凪が絶叫する。
「やめて……!!
来ないで……!!
もう……誰にも否定されたくない……!!」
その叫びとともに——
扉が完全に開いた。
蒼い結界が朔夜・蓮・夕凪・真白を包み込み、
影夕凪の巨大な守護体が翼を広げる。
最終決戦、開始。




