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雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第二部

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35/110

第18話(表) 『参謀外し/扉戦線へ向かう影』

桜花帝国・参謀本部は、

ここ数年で最も混乱していた。


天城朔夜が参謀職を一時的に外され、

その代理として朱雀院燈子が指揮権の一部を任された。


「燈子少尉、扉方面の偵察部隊、整いました!」

「蒸気装甲隊、いつでも出撃可能です!」


兵たちの声が飛び交う中、

燈子は地図の前で静かに目を閉じた。


——朔夜様の影響力は強い。

——でも、彼が迷っている間に国は崩れる。


燈子は深く息を吸い、参謀としての覚悟を固めた。


「扉前線へ向かう。

 桜花の未来は、私たちが掴む」


力強い宣誓だったが、

胸の奥には重い痛みがあった。


(……朔夜様。

 どうして、私を信じてくれなかったのですか……?)


その痛みをごまかすように、

燈子は軍装を整えた。



一方その頃、朔夜は参謀本部の外で空を見上げていた。


参謀職を外されたからといって何もしないつもりはなかった。

むしろ、自由になった今こそ動ける。


『……お兄ちゃん……』


夕凪の声が、また聞こえた。


「夕凪……どこだ……?

 どこにいるんだ……」


蒼い光は、東の空——扉の方向へと伸びている。


そこへ、参謀本部の若い兵が駆け寄った。


「天城参謀!……いえ、元参謀殿。

 あなたに……渡すよう命じられた資料があります」


「資料……?」


兵が差し出したのは、

燈子の手書きの作戦案だった。


——桜花反攻第七号

——指揮官:朱雀院燈子


その端に、小さく走り書きがあった。


《あなたが迷うなら、私が進む。

 でも……本当に行くべき場所は、きっと別にあるはず》


朔夜は目を細める。


(燈子……お前は……)


夕凪の声がさらに強くなった。


『いや……怖い……

 お兄ちゃん……』


その悲鳴に近い声で——

朔夜の迷いは完全に吹き飛んだ。


「……俺が行くしかない」


朔夜は武具庫へ向かい、

自らの蒼桜式軍衣を取り出した。


それは参謀の象徴でもあり、

戦場に立つ覚悟そのものでもあった。


朔夜は鎧を身に着け、刀を手に取る。


「燈子……

 先に行くお前を、危険な目には合わせない」


夕凪。

蓮。

そして燈子。


全員の声が、朔夜を扉へ誘っていた。



その頃——扉前線。


朱雀院燈子は前線高台から蒼い光柱を見つめていた。


あまりの巨大さに、

兵たちがざわめく。


「これが……扉……?」

「空まで届いているぞ!」


燈子は視線を鋭くし、

部隊に指示を飛ばした。


「各隊、陣を敷け!

 黒鋼もストラタも近づく。

 誰が最初に来てもおかしくない!」


彼女は強かった。

だが——その背で、誰も気づかない震えがあった。


(……朔夜様。

 本当に……来てくれないのですか……?)


その時だった。


蒼い光柱が一際大きくうねり、

世界全体が低い音を響かせた。


兵の一人が叫ぶ。


「か、風が……!

 扉から吹き出してる……!」


燈子の瞳が揺れた。


「これは……結界の崩壊……?」


蒼光の中から、声が聞こえた。


『……お兄……ちゃ……』


夕凪の声。

しかし燈子の耳にも届いてしまった。


「夕凪様……?

 朔夜様の……妹……?」


燈子は息を呑む。


夕凪が何かに呼ばれている。

そして朔夜は——

その声に応えようとしている。


(……朔夜様。

 あなたが守りたいのは……)


胸が締め付けられた。


だが、その感情を押し込めるようにして、

燈子は再び剣を握った。


「朱雀院隊、前へ!

 扉へ向かう道を切り開く!

 帝国の未来は、私たちが守る!」


その声は、揺るぎなかった。


蒼い光柱が轟き、

扉の境界がついに崩れ始めた。


帝国・黒鋼・ストラタ・そして三人。


すべてが——扉へ向かう。


戦記は、いよいよ激流へ突入した。

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