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雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第二部

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9話 蒼光の裂け目 ― 夕凪の声が呼ぶ方へ

結界外殻が砕けた音は、

谷の骨をへし折るような轟音だった。


パキィィィィン――ッ!!


霧が吹き飛び、

蒼光が奔流のように溢れ出す。


明朱が悲鳴を上げる。


「やばい! 本当に結界が破れた!!

 あれは……暴走してる!!」


伊吹が顔を覆った。


「目が焼けるほどの光だぞ……!」


鷹守は蒼光の向こうを睨みながら言った。


「天城。

 あれは、もう巫女の意思では抑え込めん。

 あと数分で結界は崩壊し、黒鋼の地下施設ごと吹き飛ぶ」


朔夜の心臓が跳ねた。


(夕凪……!!

 時間が、ない……!!)


しかし――

目の前には蓮が立ちはだかっていた。


黒鋼の外套が風に揺れ、

短剣が蒼光に照らされて青白く光る。


蓮は荒い息で朔夜を見据える。


「……朔夜……

 俺は……それでも……

 “お前を止めなきゃいけない”!」


震える声。

泣き叫ぶような眼差し。


朔夜は深く剣を構え直した。


「――来い、蓮。

 俺を止めろ。

 お前の“覚悟”が本物なら」


蓮が踏み込む。


カンッ!!


刃が火花を散らし、

二人の影が交錯する。


だが、ふたりとも互いの急所を避ける。

それは戦闘というより――

「止め合い」であり「必死の時間稼ぎ」だった。


鷹守が声を荒げる。


「天城!! 時間がないぞ!!」


明朱も叫ぶ。


「蓮さん……お願い、わかって……!」


蓮は痛みに耐えるように歯を食いしばった。


「俺だって……わかってる!!

 でも……でも……!!」


夕凪の声が蒼光に乗って響いた。


『――たすけて……

 お兄……ちゃん……蓮……くん……』


その声だけで、

朔夜の膝が折れそうになった。


(夕凪……!

 待ってろ……必ず……!!)


蓮の瞳にも苦痛の光が走った。


「夕凪……!」


朔夜は叫んだ。


「蓮!! 時間を使えば使うほど夕凪が死ぬ!」


「わかってる!!

 ……だけど俺は……!」


蓮は短剣を朔夜の剣に打ち合わせる。


ギィィィン!!


防御に回った朔夜の足が一歩後退した。


蓮が震える声で言う。


「俺は……夕凪も、お前も……

 どっちも守りたいんだよ!!」


朔夜も叫び返す。


「なら道を開けろッ!!」


蓮の呼吸が止まる。


「……ッ……!」


その瞬間。


谷の奥の蒼光が、爆発した。


ドォォォォォン!!


影風谷全体が揺れ、

黒鋼軍の装兵が一斉に暴走し始めた。


装兵の目が赤く点灯し――

霧の中から突進してくる。


伊吹が焦りながら叫ぶ。


「くそっ! 来やがった!!

 暴走モードだ!!」


鷹守が刀を抜き、背後を守る。


「天城!! 早く行け!!」


明朱が大量の符を風に乗せて飛ばす。


「蓮さん!! あなたのせいじゃない!

 行って!! 蓮さんも来て!!」


蓮は目を閉じた。


夕凪の声が胸に刺さる。


『……こわい……

 ひとりに……しないで……』


朔夜は蓮に背を向けず、

まっすぐ名を呼んだ。


「蓮――

 一緒に行こう。

 それ以外の道なんて、もうない!」


蓮は震える手で短剣を握り直した。


(俺が……

 夕凪を守らなきゃ……

 朔夜と……行かなきゃ……

 でも宗六が……黒鋼が……俺を……)


心の中が、裂けていく。


そのとき――

蓮は見た。


朔夜が、

まっすぐ蓮だけを見ていた。


敵としてでもなく、

味方としてでもなく。


“幼馴染を信じる目”で。


蓮の胸に熱いものが込み上げた。


(……朔夜……

 お前は……俺を信じて……)


蒼光が、再び谷を照らす。


夕凪の声が、風に乗って届く。


『……おにい……ちゃん……

 ……れん……く……』


蓮は目を開けた。

迷いのない瞳で。


そして叫んだ。


「朔夜――!!

 俺も行く!!

 夕凪のところまで――一緒に!!」


朔夜の胸に電流が走った。


(蓮……!)


蓮は背後の暴走装兵に向き直り、

短剣を低く構えた。


「ここは俺が抑える!

 お前たちは――

 結界の核心へ行け!!」


朔夜は叫ぶ。


「蓮!!

 死ぬなよ!!」


蓮は笑った。

泣きそうな笑顔で。


「お前こそ……俺を置いて死ぬな!!」


そして――

桜花の三人は谷奥へ走り出す。


蓮は暴走装兵の波に立ちはだかる。


蒼光が裂け、

谷の奥に“扉の心臓部”が見え始めた。


そこに――

夕凪がいる。


(つづく)

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