余韻回(表裏共通)
――戦いのあとに残るもの(表裏共通)
街道に、剣の音はもうなかった。
風が通り、土の匂いが戻り、鳥の声が遠くで響いている。
戦いは、確かに終わった。
だが――
何もなかったことには、ならない。
◇
桜花軍は、街道を押さえたまま陣を整えていた。
勝利を宣言する者はいない。
凱旋の声も上がらない。
それでも、兵の顔には疲労と同時に、
**「守り切った」**という静かな安堵があった。
守れた場所。
通した命。
剣を振らずに終わらせた戦。
それらは、確かな事実として残っている。
◇
一方、黒鋼軍は整然と後退した。
混乱はない。
追撃を許す隙もない。
勝たなかった。
だが、崩れなかった。
この戦で黒鋼が得たものは、
土地でも、物資でもない。
「これ以上斬らなかった」という選択そのものだ。
◇
この一戦で、世界は少しだけ形を変えた。
・街道は、依然として桜花側の管理下にある
・避難路は確保され、民は戻り始めている
・水源と橋は破壊されず、機能を保ったまま残った
だが同時に――
・黒鋼軍は主力を温存した
・戦力差は決定的に崩れていない
・両軍とも「次」を見据えている
勝敗はつかなかった。
◇
この戦は、
領土を奪う戦ではなく、
思想をぶつけ合う戦だった。
守るために剣を抜く者。
終わらせるために剣を下ろす者。
どちらも、正義ではない。
どちらも、悪ではない。
ただ、
それぞれの責任を引き受けた。
◇
桜花は、人の側に立った。
黒鋼は、兵の側に立った。
それだけの違いが、
この戦のすべてだったのかもしれない。
◇
雷は鳴らなかった。
だが、雲は消えていない。
次の戦は、
もっと分かりやすく、
もっと避けられない形でやって来る。
この戦で生まれた“余白”は、
やがて埋まる。
その時、
剣を取る者も、
取らない者も、
もう言い訳はできない。
戦は終わった。
だが、世界は前に進んでいる。
ここまで、第4部を読んでいただき、本当にありがとうございました。
この章では、
「勝つこと」よりも
「どう終わらせるか」
その一点をずっと描いてきました。
剣は抜かれ、ぶつかり合い、
それでも最後は振り切られない。
そんな戦いがあってもいいんじゃないかと、
書きながら何度も考えました。
桜花と黒鋼は、
同じ戦場に立ちながら、
違う責任を背負いました。
どちらが正しいかではなく、
どちらが何を引き受けたのか。
そこを感じてもらえたなら、この章は十分です。
田舎のおっさんが、
自分なりに「選択」と「責任」を考えながら
本気で書いた戦記です。
ここまで付き合っていただけたこと、
心から感謝しています。
第5部では、
空気が少し変わります。
戦は、もっと分かりやすく、
そして、より逃げ場のない形で戻ってきます。
もしこの物語を
「ここまで読んでよかった」
「続きを見届けたい」
そう思ってもらえたら、
ブックマークや評価で応援していただけると、
次を書く大きな力になります。
また、次の章でお会いしましょう。




