表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷哭ノ桜花戦記 ― 奪われた鍵を求めて  (表)  作者: 田舎のおっさん
第4部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/110

第41話(表)

――残ったもの


 剣が、わずかに下がった。

 それは、敗れたからではない。


 桜花は、自分の中で何かが削れ落ちたのを、はっきりと感じていた。


「……なるほどな」


 息を整えながら、低く呟く。


 守る理由。

 終わらせる理由。

 退かない理由。


 それらが重なり合い、絡まり合っていた芯が、

 黒鋼の剣によって、静かに削り落とされている。


     ◇


 桜花は、剣を構え直さなかった。

 構える必要が、なくなったのだ。


 代わりに、

 足を止め、黒鋼を見た。


「……黒鋼」


 声は、驚くほど静かだった。


「お前は、

 私から理由を奪いに来たんじゃない」


 黒鋼の剣は、動かない。


「……選ばせに来たんだな」


     ◇


 桜花は、ゆっくりと剣を下ろした。

 地を指す刃先。

 だが、捨てたわけではない。


 いま残っているものを、

 確かめるためだ。


「守るため。

 終わらせるため。

 責任のため」


 一つずつ、言葉にしてみる。


「……全部、違う」


 違う、というより――

 足りない。


     ◇


 桜花は、目を閉じた。


 間に合わなかった場所。

 守れなかった責任。

 通した道。

 終わらせた精算。


 それらすべてを削ぎ落とした先に、

 まだ、何かが残っている。


     ◇


 桜花は、目を開いた。


「……それでも」


 黒鋼を、まっすぐに見る。


「私は、

 ここに立っている」


 理由を並べなくても、

 言い訳を重ねなくても。


 立っている事実だけが、残っている。


     ◇


 矢上が、遠くで息を呑むのが分かった。

 だが、今は声をかけない。


 これは、

 将が一人で立つ瞬間だ。


     ◇


 桜花は、剣を再び構えた。


 先ほどまでとは違う。

 重さが、変わっている。


「……黒鋼」


 声に、迷いはない。


「理由は、もう削られた」


 だから、

 ここから先は。


「立つために、斬る」


     ◇


 剣先が、わずかに前を向く。

 力も、速さも、殺気も、過剰ではない。


 だが、

 これまでで一番、揺るがない。


 桜花は、一歩踏み出した。


 守るためでもない。

 終わらせるためでもない。


 ここに立つと決めた者としての一歩。


 削られた先に残ったものは、

 理由ではなかった。


 ――意志だ。


 戦は、

 ついに最深部へと踏み込んだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


《雷哭ノ桜花戦記 ― 表裏双章 ―》では、

同じ戦を「表」と「裏」、

二つの視点から描いています。


どちらか一方だけでは語れない選択と責任を、

積み重ねてきました。


もしこの物語を

「続きが気になる」

「ここまで読んでよかった」

と感じていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


田舎のおっさんが、

本気で書いている戦記です。

これからも、表と裏、両方を書いていきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ