第38話・余韻(表裏共通)
――雷の前
剣と剣の間に、風が通り抜けた。
それは、まだ衝突ではない。
桜花も、黒鋼も、動かなかった。
踏み出した一歩は、すでに終わっている。
これ以上の一歩は――始まりだ。
◇
街道は、異様なほど静かだった。
兵の呼吸。
革の擦れる音。
それらすべてが、遠く感じられる。
この場には、
もう「迷い」はない。
あるのは、
積み上げられた選択だけだ。
◇
守ったもの。
切ったもの。
通した道。
塞いだ退路。
それらは、
互いの背に、等しく載っている。
どちらかが軽いわけではない。
どちらかが正しいわけでもない。
◇
剣は、
もう理由を探していなかった。
抜かれた理由は尽き、
振る理由だけが、残っている。
◇
この一瞬は、
戦の始まりではない。
終わりでもない。
覚悟が、同じ高さに揃った瞬間だ。
◇
雷は、まだ落ちていない。
だが、
空はすでに、
それを許す色をしている。
次に動くのは、
言葉ではない。
選択でもない。
剣そのものだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
《雷哭ノ桜花戦記 ― 表裏双章 ―》では、
同じ戦を「表」と「裏」、
二つの視点から描いています。
どちらか一方だけでは語れない選択と責任を、
積み重ねてきました。
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田舎のおっさんが、
本気で書いている戦記です。
これからも、表と裏、両方を書いていきます。




