出逢い①
歳を重ねる度に、多数の人々との「出逢い」がある。家族、恩師、友人、職場の同僚、上司、先輩、後輩、恋人、配偶者との出逢いが人生の中での大きな出逢いだろう。私自身も、幾度と出逢いがあった訳だが、特に印象に残っている出逢いをここに記しておく。
先ずは、恩師との出逢いだ。話は、中学生時代に遡る。学生時代に好かれる教師というと、一般的には、ノリが良く、生徒の意見に常に賛同してくれる先生のことだろう。だが私は、そういう教師が、本当の意味で生徒自身を見てくれている先生だとは思っていない。私が思う、「良い教師」とは、真面目で厳しすぎる先生のことだ。例に挙げると、生徒指導部に所属しているような教師のことである。こういった先生は、生徒から嫌われ者だ。もしかすると、「一部の親」からも嫌われているかも知れない。一部の親とは、所謂「モンスターペアレント」と呼ばれている親のことである。こういった親に、絡まれるととても厄介だ。話を戻すが、私は、中学生時代に二人の恩師に出逢った。
一人は、剣道部の副顧問だった。この先生は、学年主任も務めており、生徒指導部だった。病み期に入る前までは、私も同級生達と同じように、余り得意ではなかった。だが、剣道部に所属している時期に、この先生に救われた出来事があった。三年生が受験シーズンに入るので、退部した後のことだったと記憶している。剣道の試合は、個人戦と団体戦がある。剣道初段を取得することを目標に日々研鑽していた訳だが、個人戦では、一回戦突破までしか成し遂げられなかった。表彰状なんて、夢のまた夢だった。これは私の実力不足なので仕方がない事だと、当時から諦めていた。話は団体戦のことである。剣道の団体戦は、「先鋒・次鋒・中堅・副将・大将」または、人数が少ない学校であれば「先鋒・中堅・大将」のポジションで戦う競技だ。私は経験した事はないが、七人制も存在している。当然、試合の最後を任される大将を担うのは、実力がある選手が選出されることが多い。私は、大将を任されることは一度も無かった。が、その事態は悔しくはなかった。小学生の頃から剣道を習い、部活でも日々努力し続けている実力のある生徒が居たからだ。それでも、団体戦の試合のメンバーに選出された事はある。まぁ、部員が少なかったので、当然なのかも知れないが。正直、何処のポジションを任されていたかまでは覚えていない。私なりに一生懸命、責務を全うしたことは記憶している。剣道には、「気合」と呼ばれる声出しがある。これは、自分を奮い立たせ、相手を威圧する目的がある。私も、声出しを必死に行っていたつもりだ。だが、当時から地声が低かった私は、応援席から「もっと声出して〜!」と、声援が幾度と飛んで来ていた。私は内心、「精一杯出してるよ!」と思いながらも、試合に励んでいた。地声が低い上に、普段から声が通りにくいせいもあったのかも知れないと今は思っているのだが。結果は、相手に「一本」を先に取られてしまったので、敗戦した。そしたら、顧問に呼び出され、「次の試合には出なくて良い」と告げられた。所謂、戦力外通告だ。私は、悔しくて悔しくて涙が出てきた。周りに悟られないように、武道館の外に出て一頻り泣いていた。そうしていたら、副顧問だった恩師がやって来て、こう言った。「そんなに泣かなくても大丈夫、黒薔薇さんが、一生懸命に頑張っていた事は分かっているから」と。私はこの言葉に、また涙が溢れて来た。その時に、悟ったのである。「嗚呼、この先生は普段は厳しいけれど、しっかり生徒自身を見ていて、優しい人なのだ」と。この先生に救われた出来事は、これだけでは無い。病み期時代に、泣きながら登校したと先述しているが、母の佳織が学校に電話を掛けた際に、「電話を取った相手はこの先生だった」と大人になってから聞いた。そして、校門で迎え入れてくれた先生もこの方だった。ボロボロの状態の私を、温かく迎え入れてくれたのだ。
そしてもう一人は、美術部の顧問だ。この先生は、普段の美術の授業も担っていた。確かこの先生も、生徒指導部だったと記憶している。第一印象は「変わった先生」だ。美術を教えているだけあって、個性的で独創的なのだろう。日頃から、黒い服を着用しているところしか見たことがない。この先生も、生徒からは余り良く思われていなかった印象がある。だが、生徒一人一人のことを良く見ている先生だった。私が、通常クラスに登校出来なくなった時には、顔を見掛けたら「黒薔薇、大丈夫か〜」と声を掛けてくれた。美術部に入部することが決まった時には、温かく迎え入れてくれた。油絵もこの先生に描き方を教わった。
二人は、私の代の卒業式で袴を着用していた。とても凛としていて、美しかった。中学時代の恩師なので、連絡先は知らないでいる。何処かの機会で、また巡り会えないかと願っている。高校時代には、恩師と呼ぶほどの教師には出逢えなかった。これもまた、人生なのだと思っている。




