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芽生え  作者: 黒薔薇あず


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社会人一年目

ようやく社会人になった。憧れていた。早く大人になりたかった。お酒も飲めるし、脱毛するにも、携帯の機種変更をするにも親の誓約書は不要になる。だが、思っていた社会人生活では無かった。親の監督から離れるということは、自分が行う行動全てに責任が生じる。支払いも果てしない。

就職した会社は、福利厚生は充実していた。ある程度名の知れた企業だ。公休とは別に年二十日間の長期休暇が付与された。賞与も夏季と冬季、それから寸志程度だが、前年の業績によって変動する賞与が毎年五月頃に支給された。年三回だ。

社会に出ると連続した休暇は取りづらくなる。一般企業なら、ゴールデンウィークと盆休暇、年末年始休暇だろう。私が就職した会社は小売業だ。接客がメインの仕事だ。当然、世間が休みの期間は仕事だ。だが、公休とは別に長期休暇が付与されていた為、不満は無かった。旅行にも行きやすかった。職場の同僚と、韓国旅行にも行った。

業務内容は決して楽では無かった。アルバイト経験はあるが、正社員は初めてだ。上司も勿論いたが、それなりに責任が伴う。目まぐるしく過ぎていく日常に、私は趣味に費やす時間も無かった。社会人一年目の時だけは、あれほど夢中になったジャニオタの活動も興味が無くなった。

入社して、配属部署が決まり二ヶ月目頃だろうか。因みに希望していた部署ではないところだった。

ある日当時の上司に言われた。「明日、僕も田中くんも居ないから」と。震撼した。次の日の売場責任者は私になるのだ。言われた時から、不安で仕方なかった。

当日一本の電話が鳴った。商品のお問い合わせだ。私は電話口でお客様の要望に応えようと真剣に挑んだ。しかし、私はお客様に怒られた。

「そんな事も分からないの。分からないなら電話に出ないでちょうだい」と。社会人一年目に、そのお言葉はキツい。しかも、結構な勢いだった。見事に堪えてしまった。私はあろうことか、電話口で泣き出したのだ。頭が真っ白になった。

「申し訳ございません。」と平謝りするしかない。お客様にも私が泣いている事が伝わってしまった。

「ちょっと私も言い過ぎた。何軒か電話して此方ならあると言われたから。」と。お客様も電話をたらい回しにされて、食傷としていたのだろう。この出来事は、今でも鮮明に憶えている。


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