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プロローグ
街に金木犀の香りが漂う頃、私は一つの生命を誕生させた。そう、我が子である。無事に産まれてきてくれるまでは不安が絶えなかった。五体満足で産んであげられる保証は無かったし、妊娠・出産というものは何よりリスクが大きいからである。
だが、無事に産まれてきてくれて感謝している。私たち夫婦のもとに産まれてきてくれてありがとう。
小さな小さな我が子の命を抱いた時、今まで感じたことのない高揚感に包まれた。
この本の著者である私は、子供を産まない人生の選択をしようと考えていた。夫である綾斗と出逢う迄は。
私は子供という存在が得意では無かった。子供というのは自由気ままな生き物だ。上手な接し方が分からなかったのである。そんな私なので、自分には育てられないだろうと子供を持つ人生を諦めかけていた。
綾斗と出逢い、恋に落ち、一緒に過ごしていく時間の中でいつからか「この人との子供なら一緒に育ててみたいな」「お腹を痛めて産む価値があるのかも知れないな」と思い始めた。
綾斗は私とは反対に、子供が大好きなのだ。子供との接し方はとても上手だ。尊敬に値する。
出逢う人で自分の思想が変わってしまうこともある。不思議だ。人生とは面白い。つくづく思う。




