第8話 好奇心は猫をも殺す?
「ふふふ」
なんというか……尚更底が見えねえな。
ミングルは何が楽しいのか、軽い笑みを浮かべながら俺に座るよう促した。……あれ、やっぱこいつちょっと酔ってね?
俺がチェアに座ると、一瞬だけビュウと風の吹くような音がした。同時に少し、肌寒さを覚える。
「彼らは枯渇現象、そしてそれにRelateしてそうな魔道具について話してたよね。それはシュウマくんも聞こえた?」
「ああ。あと、国外逃亡するとか……『あの方』とか?」
そのワード、典型的な悪の組織のお偉方の代名詞だよな……。まだあいつらが悪って決まったわけじゃないんだが、なかなか大規模なことをやってんだろうか。
「そうそう。キミってなかなか物覚えがいいじゃない!」
「おまえやっぱりまだ酔ってんじゃねえの」
「ん~? ボクはいっつも元気いっぱいオチャメなわんぱく美少女だよ」
「そうなのか……?」
元気いっぱいなのは否定しないが……まあ、ひとまずそれはおいといて。
「ミングルはあいつらをどうするつもりなんだ? ザンダーにでも報告するのか?」
「いや? シュウマくんに倒してもらおうかなって」
「あ、そう……」
……ん? 今こいつ、俺が倒すとか言った? 聞き間違い……じゃ、なさそうだな。
……無理に決まってんだろっ! マジかよ!!
「まあまあ――えっとね、枯渇を重く見てるのはこのシンセシアのギルドだけじゃないんだよ。ザンダーおじさんもちょっと言ってたけど、おそらく少ししたらキミへの何らかの重い処罰が本部から通達されるだろうね」
「マジ?」
「だから、そうなった時の反論材料としてExploitをいくつか引っ提げる必要があるんだ――ボクの経験から言って、Bランク上位くらいの実力と成果があればチャラになると思うよ! あれでもギルドって|Meritocracyな考え方だからねえ、ふふふ」
「マジか……」
そういえば、手柄と言ったらニルちゃんも、モノとの引き換えは手柄がどうこうって言ってたな……。
もしかしてこれは一挙両得のチャンスか?
よし、前向きに生きるとしよう! ミングルの言い方だと、このままのうのうとしてたら十中八九俺死ぬらしいし。チクショウ!
「ま、もちろんボクもシュウマくんをほっぽりだして万事解決するなんて思ってないよ。裏からお手伝いくらいしてあげるからね!」
「それはありがたい。でもお手伝いって言ったって、俺情報収集も戦闘もできねえんだけど」
「ふふ、まあミングルお姉さんに任せときなさい! なるようになる! ……かもね~!」
「最後で不安にするのちょっとやめてくれないか」
「ごめんごめ~ん。ならなかったらお詫びにボクの頭ナデナデしていいよ」
もうそれ死刑の直前じゃねえか。冥土の土産が猫耳美少女のなでなでってのはなんだろう……タイミングがタイミングなだけにちっとも喜べそうにない。
「……今さらなんだが、なんで俺にそんなわざわざ――」
ミングルは俺が言い終わる前に、俺の口の前に人指し指を立ててウィンクした。
「ヒミツ……僕ってSecretiveだからねえ」
……。
なんていうか、何かの上で俺が踊らされてる――と言ったら言い方悪いが、盤上のコマにされてるような感覚がすんなぁ……。
普通だったらありがたく思うんだろうが、ミングルって人間がどこかこう、なんというか。
率直に言うなら――『狂気の中』か。
どうしてそう感じるのかは分かんねえけど。
「シュウマくん、ボクのとこに泊まるでしょ? あともう一人ボクのFriendがいるからさ~、とりあえずそっちに合流しようか! ささっとお会計も済ませちゃお〜」
ミングルはガタンと立ち上がり、軽い調子でくるくる回転しながら屋内へ戻ろうとして――
――バチンッ!
「あでっ! ……風のBarrier張ってたの忘れてたぁ~!」
「……」
盗み聞きを防ぐためかな。用意周到なのかドジなのか……。




