第6話 知らなかったんですけどォ!
「ふーん、カノセくんね。いいNameだ」
「苗字だけどな、それ」
「あっそう? それは失礼。シュウマくんね」
ザンダーとミングルで話がまとまったらしい。
俺はミングルに連れられ、いろいろ話をしつつ冒険者ギルドの階段を降りていた。
いやーそれにしてもマジででっかいな、この建物。ミングルが教えてくれたけど、六階建てらしい。俺が全力でぶっ壊したせいで、ザンダーはここの修理をしないといけないようだ。
ま、同情はしないがな。だって俺死にそうになったんだもん。
「ハルマントン旧街にいたんだっけ? よくあんなとこ行くねえ」
「いやまあ……俺も望んで行ったわけじゃないけど」
俺があそこにいたのはニルちゃんに転送されたからだし、危ない場所って知ってたら絶対行かない。
はあ……ちょっと憂鬱なり。
「あ、そうだ。『枯渇現象』って知ってる?」
「知らない。えーっと、そのハルマントンが特定枯渇領域ってのに指定されてるっては聞いたけど」
「Honestyでよろしい。じゃあボクが軽くExplainしてあげよう!」
ミングル曰く――。
『枯渇』と呼ばれるソレは、このシンセシア氷河国付近で、数年前から発生するようになった現象だ。
ほとんど何の前触れもなく、広範な領域を飲み込むような形で『枯渇領域』が出現する。その領域内では、その名前の示す通りに様々なものが『枯渇』していく。その大半は物質的なものではなく、魔力や生命力、精神力などが奪われていくのだそうだ。
その領域内で生存できるのは、あの狼みたいな魔物のみ。
あのハルマントン旧街は数週間前、その枯渇領域に飲み込まれたために放棄された街であるとのこと。
「……ん? ハルマントンって、シンセシア国の中心なんじゃ?」
「そうだよ。まあお察しの通りかなー」
終わってんじゃんこの国ィ!
ハルマントン旧街は一応首都ではなかったようだけど、国の中心がもうまともに住める状態じゃないってそれもう滅んでるだろ。
ニルちゃん、できたらもう少し下調べとかしてくれよな……時すでに遅しだけどさ! チクショウ。
「あー、その枯渇ってのは治せないのか?」
「軽いものならね。枯渇が発生するReasonが『慢性的な大地のエネルギー不足』なんだけど、その原因――例えば、大地のエネルギーを食べまくる魔物を倒すとかすればたいてい治るんだ。そういうのはザンダーおじさんみたいな冒険者たちが真っ先に|Investigation・Solutionしてくれるよ」
「ハルマントンはその魔物が強すぎて?」
「いや」
ミングルはふるふると首を左右に動かしたが、髪が乱れまくった。かわいい。
「……ハルマントンのケースは特殊なんだ。原因の魔物が見つからなくてねえ」
「わお……」
不明なのが一番怖えな……。
原因さえはっきりしてしまえば対策の立てようくらいはあるだろうが、敵の姿が見えないことにはどうしようもない、ってことだろう。
「だからハルマントンは厳重に封鎖して、今のところザンダーおじさんの使い魔、星胡と紗陣がEveryday異常がないか偵察をする、ってなってるんだ」
「なるほどな」
星胡はあのカラスか。紗陣は分からん。
……そういえばザンダーの使い魔たち、なぜか中国語っぽい名前だな。なんでだろう?
「ザンダーおじさんも別に悪い人間じゃないんだよ。キミがハルマントンの枯渇領域からReturnしたって話が広まると、一定数トライしようとかするバカが出てくるから、処罰はすごく厳しくしないといけないんだよね。許してあげて?」
「あんま許すつもりはないが……まあ、為政者だろ? 理解はできなくはない」
「ふふ。まあ、シュウマくんもザンダーおじさんと落ち着いて話したら分かると思うよ」
話をしているうちに、もうすでに一階まで降りてきていた。
上の階にいた時はすごい静かというか、何の物音も聞こえなかったから、もしかしたらまだハルマントンみたいなゴーストタウンにいるんじゃないかとも思ったが、降りてみると結構近くに喧騒が聞こえてきた。
まあ、この建物六階もある上に天井がマジで高いからな。一階一階が五メートルくらいあるから、単純に考えるとだいたい二十、三十メートルも離れていたわけだ。そりゃ聞こえないよな。
「冒険者ギルドの近くにボクのバーがあるんだ。とりあえずそこに泊まりなよ! ごはんも作るからさ、同居人が」
「いいのか?」
「もっちろん! おうちが賑やかになるのはいいことだし……あと、ボクの分のお皿洗いを分かち合えるからね!」
皿洗いか……まあ慣れてるしな。わざわざ俺を泊めさしてくれるんだったら、礼も兼ねてミングルの仕事を全部ぶんどってやってもいいか。
……あれ? 俺、家がないって言ったっけ?
「……まあいいか」
「?」




