0013 [本の紹介] ゼロサム社会
第二次大戦後アメリカは積極的にグローバル社会推し進めていました。
しかしながら、今日偏狭的な自国優先の行動に陥っています。
その原因として考えられるアメリカ国内の問題点は半世紀前に既にありました。
表題 ゼロサム社会
著者 レスター・C・サロー
出版年 1981年
出版社 TBSブリタニカ
本書籍は、アメリカでは1960年代前半からの1980年代初頭までの
構造的な問題点の列挙と長期不況に対する対策等について
解説されています。
出版前の15年から20年の間は、土地や株などの資産を所持していても
横ばい状態でした。
国家としての成長率は緩やかに上がっていますが、短期間で見ると
明確に勝者と敗者が別れていて全ての合計するとゼロになるので、
「ゼロサム社会(零和社会)」との表題になったようです。
他国の成長率と比べてしまうのはどの時代でも同じようです。
この本の中では、比較対象として西ドイツや日本が挙げられています。
(西ドイツの響きが時代を感じますね。)
アメリカでは第二次世界大戦後に国家総力戦で培われた軍需を中心とした
産業構造から民間で使用する産業へと社会構造を変更しようとしました。
軍需産業は、国家主導で行われます。
本来一企業では不可能とされる、大規模な新規・潤沢な予算を使用しての
開発・設備投資をする事が出来ます。
常時であれば費用対効果等の検討はされますが、特に戦争や紛争などの
非常時であれば疑問や否定について検討はされにくくなります。
企業にとってのは、顧客が国であるために大きなディスカウントを
要求されません。入札などで他の企業との競争はありますが…
逆に初期に安くしてランニングコストで収益を上げる方法もあります。
設備や商品の安全・安定性を重視するので、安易に規格や形式が
変更出来ないため同一の商品を長期間にわたって製造します。
従業員の仕事と収入を安定して得ることができます。
逆に民間産業に於いては、市場規模が大きい事です。
各種の許認可されていれば国外にも輸出できるので、顧客のニーズが
あれば販売網を作り顧客を増やせます。
しかし、国内だけでなく海外の企業との激しいシェア争いが発生します。
多数の顧客ニーズから必要とされるものを拾い出し、新規開発や商品が
陳腐化しないように定期的に変更し市場に投入するので、開発・設備
投資に莫大なコストが掛かります。
型落ちになったものは大きくディスカウントする必要があります。
社会の好景気・不景気に左右されるので短期的な目標に囚われます。
結果として従業員の仕事と収入を長期的に安定させることが出来ません。
アメリカは第二次大戦後に、軍需産業から民間産業への構造転換を
することに失敗しました。皮肉にも戦争に勝利したことによって
社会が成熟したので各種の問題点が出てきました。
1 人件費の高騰
2 企業の設備老朽化
3 政府による国際影響力の施行範囲を拡大
4 国防費の増大
2025年時点の日本にも当て嵌まる内容が数多くあります。