グラリオン島で初治療
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翌日、ミキストリアと祥子はサラとヒラリーを連れて教会附属の孤児院を訪れた。この小さな町で、全員が知り合いのように暮らしていても孤児が出てしまうという事実にミキストリアは打ちのめされるような思いがするのだった。
普段あまり接点のない獣人族の子どもに、サラとヒラリーははじめこそ戸惑っていた様子だったが、領都で個人の子ども達と遊んだ経験もあり、慣れて仲良くなるまでは早かった。
祥子にサラとヒラリーを任せたミキストリアは、島に同行してきた聖魔法を使うミキストリアの弟子たち星組を連れて町長を訪ね、重症病者の居場所を聞いた。
「全部の重症者を知っているわけではないですが、何人か寝込んでいるというのは聞いたことがありますわ……」
「それで結構ですわ」
「若い者を案内につけます」
「それはありがたいですわね。では診てきますので。ごきげんよう」
案内役を言いつけられた犬人のローリーはミキストリア達に対する不信感を隠そうともしなかった。
(このような態度で接させるのも久しぶりでしょうか。なぜか懐かしい気までしますわね。案内とはいえ"監視"もお仕事のうちですわね)
ミキストリアはローリーに笑顔を向けると、ローリーの後を追った。徒歩である。ハーフしか住んでいないこの町を、護衛騎士、従者、侍女を連れて歩くミキストリア一行は非常に目立った。
(好意的な視線は半分、いえ、3割というところでしょうか。好意の内容もただ珍しいというのもありそうですわね)
「領主様は、本当に我々に回復魔法をかけようというのですか?」
この期に及んでまだ納得しかねるのか、ローリーが歩きながら半身で後を向き、護衛騎士を挟んでその後に続くミキストリアに声をかけた。
いきなり話しかける無礼に反応する護衛騎士を宥めて、ミキストリアはにこやかに言った。
「ええ、もちろんですわ。この島の住民はわたくしの民。民の繁栄無くして領地の繁栄も領主の繁栄もありませんわ」
「そんなに簡単に進まないと思いますがね。あぁ、一人目はこの家です」
最初に案内された家ではこの町では標準的な、つまり粗末な狭い家で土間の奥に簡単な厨房があり、土間につながる居間の奥に1つ2つ部屋があるというものである。土間には漁につかう網などの道具も置いてあった。奥の部屋では老いた猫人が、もう一人の老いた猫人を看病しているのだった。
「婆さん、新しい領主様が爺さんを診てくれるらしんだが、お願いしてもいいか?」
「新しい領主様が? そんなつまらない嘘を言っていないで仕事をしたらどうだい」
「いやいや、仕事で領主様を案内に来てるんだがな。診てもらわなくていいっていうなら次へ行くぜ」
「ホントなのかい?」
「ホントもなにももう来てるんだがな」
「わたくしが新しく領主になったミキストリア ユリウス・マルキウスですわ。よろしければ診せてください。今回は費用の心配はいりませんわ」
「え、あんたが領主様!? ホントなのかい? お爺はあっちで寝とります。魚の鰭の毒に当たってここしばらく寝たきりで……」
ミキストリアが部屋に入ると老人はむくんだ顔つきで唇は紫色になり息も浅く、ギリギリ生きているというような状況である。布団の外に出された左手は手首の後が赤黒く腫れておりそこを指されたのが一目瞭然であった。
「毒ははじめてですが、できるだけのことはしますわ。ステータス見ますわよ」
「え、あ、はぁ」
ミキストリアは同行している星組に頷くと、<ステータス>を掛けた。HP、MPと状態だけを見ることに特化した「医療用」で、余計なステータス情報を見ない代わりに治療に必要な情報が分かるというものである。最近になってようやく使えるようになったもので、まだまだ修行中であるのだが。
---ステータス---
HP: 10/56
MP: 20/20
状態: 毒(毒による呼吸系機能低下、消化機能低下、衰弱)
------
「あなた達どう? 何か見えて?」
ミキストリアはこの医療用ステータス魔法を星組メンバーにも教えており、星組メンバーも鋭意習得中である。
「毒ということはわかるのですが、そこまでです」
「「「私も」」」
毒状態にあるというのは通常のステータス魔法でもわかるので、星組はこの点ではまだまだである。
「まだ始めたばかりよ。少しずつ学んでいきましょう。毒によって呼吸系、消化器系が弱っていて、そのために知力も落ちているというところですわね。ではもう一度」
「「「「はい」」」」
早々簡単に新しい魔法が習得できることはないので、ミキストリアも星組も楽観するようなことは無かった。
ミキストリアは力づけるように頷いた。
「ではリディは解毒、レイチェルは呼吸系、メーシャは消化系、アルベルタは悪い菌を殺菌しつつ回復、と分担しましょうか」
「「「「はい!」」」」
「では、いきますよ。3、2、1、はい。」
「「「「ヒール」」」」
星組の聖魔法使いたちがそれぞれ、目的を特化させたヒールをかける。うっすらとしたしろいひかりが、爺と呼ばれた老猫人の体を包むと1秒ほどで消えた。
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