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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
1章 出会い編
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ベッドを買って帰る


次の朝、祥子はホットサンドを作った。


「ここのところずっと家にいたりいなかったりだし、結局昨日もコンビニでパン買うだけで帰ってきちゃって家に野菜がないのよ。ごめんね。なのでハムチーズサンドよ」

「美味しい!」

「でしょ? 普通に食べるよりホットサンドの方がなぜか美味しいのよねー」

「焼くとこれほど美味しくなるとは……」


「ミキ?」

「はい?」

「お代わりはだめよ? 食べられると思うけど、流石に多いからね」

「わたくしはお代わりが欲しいなどと言っておりませんわ!」

「あらそう。そうなら良いのよ」

「ええ、言っておりませんもの。ですがこれは魔性の食べ物ですわね……」

「ま、魔性? そこまでいう?」

「ええ、魔物討伐の遠征に持って行けば士気が上がること間違いなしですわ」


ミキストリアは、ホットサンドを自分でも作れるように、あとで作り方を習おうと決心していた程だった。


「そ、そう、それは良いかもね。

 ところで、ミキはどっちの家でも良いということだったけど、それは今でも変わらない?」


「ええ、わたくしはここでも、祥子の実家でもかまいませんわ」

「わかったわ。わたしはあっち、実家が良いと思う」

「そうですわね」

「それで、そうと決めたらもうこの家は賃貸だからさっさと返そうと思うの。ミキの収納はこの家のものが入るくらい大きいのでしょう?」

「余裕で入りますわ」

「それならミキに収納してもらって、撤去の手続きを始めて、わたしたちはあっちでの生活を始めましょう」

「ええ、わかりましたわ」


どちらの家にしても、2人で生活することになるのだが、祥子に改めてそう言われたことで、ミキストリアの心は浮き立った。


「じゃあ始めましょうか。仕分けが必要なのはまずは冷蔵庫ね。

 この中の調味料とバター、あとハムとチーズは持っていきましょう。他は捨てるわ。

 冷凍庫の中は、コーヒーだけかなぁ。あとは……、うん、要らないわ。

 野菜室は……、これもちょっと古くなりすぎだから勿体無いけど捨てましょう」


祥子が仕分けしてどうするかを決めると、即座にミキストリアは収納に入れていった。捨てるものは『穴あき』の収納区間に入れている。穴あきの方は一日と経たずに取り出せなくなるだろう。


「冷蔵庫はあっちの家にあるものが大きいからそれを使うのが良いかしらね。中身はほぼ捨てるにしても。

 ミキ、冷蔵庫もお願い。リサイクルに出すのも向こうでやるわ」

「ええ」


ミキストリアが収納を発動すると、音もなく冷蔵庫が消える。残った埃も、ミキストリアはすぐさまクリーンで消した。


「ミキ、クリーンは最後の一回でもいいんじゃない? MP使うんでしょ、クリーンも」

「祥子、わたくしにとってクリーン魔法のMP消費など消費したうちに入りませんわ」


ミキストリアはドヤ顔で言った。


「そうなの? なら良いんだけど……」


そのあとも祥子の仕分けに従って、ミキストリアは次々と収納に入れていった。毎度毎度クリーンするのも忘れない。


「祥子、カーテンはどうしますの?」

「あ、それもあったわね。うーん、要らないかな〜。

 あっちにもカーテンはあるし、これを持っていってもサイズが合うか分からないし。そのうち新しく2人で選んで付け替えても良いんじゃない?」

「そうですわね」


ミキストリアは、祥子の新しく2人で選ぶという言葉に嬉しくなった。祥子も2人での生活を、重荷とか義務というのではなく、楽しみにしていることがわかったからだ。


「30分もかからず全部終わるとは……。ミキのおかげね」

「なんでもない事ですわ」

「忘れてるものはもうないわよね? あ、ミキに聞いてもわからないわよね」


「ちょっと待ってください。<サーチ>

 ええ、もうありませんわ」


サーチ魔法も闇属性魔法である。収納と同じくレベル0でも使えるもので、探し物が妙に上手という人は実はサーチ魔法を発動しているのだったが、収納と同じく、意識されて使われておらず、探し物ばかりする人もそうそういないので、収納と同じく無属性の高レベル魔法と勘違いされている。ミキストリアは闇属性を持っていることに加えて、闇属性のレベルも上がっているため高度なサーチ魔法が使えるのだった。


「え、なに? 魔法?」

「ええ、サーチ魔法で探しましたわ。この家の中のもので祥子の所有物は、そのバッグと玄関にある靴だけですわ」

「そ、そう。確認できてよかったわ。ていうかサーチ魔法ってそんなことまでわかるの?」

「レベルが上がると色々詳しくわかるようになりますわ」

「ミキの魔法にはびっくりしてばかりだわ」

「わたくしにはこちらの世界全てがびっくりですわ」

「「ふふふ」」


「3年ちょっと住んでいろいろ思い出もあるけど、ミキに出会ったのが一番の思い出になりそうね」


そんなことをいう祥子がミキストリアにはまぶしかった。


「さぁ、行きましょう」


家を空にしてあとは撤去の手続きだけという状態にして、祥子は北欧家具を売るIKE○に車を向けた。


ベッド売り場でミキストリアは、躊躇うことなく一番大きな160cm幅のベッドに向かった。90幅のシングルは使用人・平民用だと思ったのである。祥子はそれに気が付いて苦笑していたが、ミキストリアはベッドを検分していたので気づかなかった。


「これにしますわ」


ミキストリアはいくつか並んでいるものの中からシンプルなヘッドボードが付いたものを選んだ。


「いい品ね。じゃあそのタグ、細長い紙がついているでしょう? そのタグの番号を写真に撮っておいてね?」

「写真、ですか?」

「スマホ持ってきたわよね、新しく買ったやつ」

「ああ、そういう事ですのね」


ミキストリアは買ったばかりのショルダーバッグ、すでにお気に入りになっているバッグからスマホを取り出すと、まごつきながらも写真を撮る。ミキストリアがまごついている間、ずっと祥子が見つめてくるのでミキストリアは少し恥ずかしい思いだった。


(スマホの使い方にも早く慣れないと困りそうですわね。やることが次々と増えますわね)


ミキストリアのやることリストは無限に増えていくようだった。


「マットレスもそれで良いのよね?

 その辺一式写真撮ると良いわ」

「わかりましたわ」


ラその他必要なものをカートに入れて、倉庫エリアにいく。大型のベッドはスタッフに聞く必要があるらしい。


「お客様、その商品はこちらです。ベッドとマットレスは配送を手配しますね」

「あ、持って帰ります」


聞くまでもないというように手配を始めたスタッフを祥子が止めた。。


「え?」

「持って帰るので配送はいりません」

「え、あの、ものすごく重いですよ。普通の車では大きいので積めませんし」

「そのつもりで準備してきているので大丈夫ですよ」

「……」

「こっちのカートに乗せちゃいますね。ミキ、そっち側お願い」

「はい」


ミキストリアは運んできた大型カートをベッド部品が入ったパッケージに近づけると、自分に体力強化魔法をかけ、パッケージの端を持ち上げてカートに斜めに乗せるとそのままパッケージがカートに完全に乗るように引き寄せた。


「え、うそ、だって……」


スタッフが固まっているのを横目に、祥子とミキストリアは残りのパッケージも同じように大型カートに乗せた。


「ありがとうございましたー」


祥子が明るくお礼を言い、2人で精算コーナーへ向かう。


「祥子、あの方まだあのまま立っていますが、大丈夫なのでしょうか?」

「うーん、大丈夫じゃないかな。気を失っているとかじゃなくて、単に固まってるだけだと思うから、ひっくり返って怪我とかにはならないと思うし。多分そのうち復活するでしょ」


支払いの際にも配送しなくて良いのかとスタッフと揉めたが、祥子が押し切った。


荷物が大きいのでエレベーターに乗る。他の客もいたので事前の打ち合わせ通りミキストリアは何もしなかった。エレベーターから出ると、祥子は車を停めた場所がわからなくなったフリをして、他の客をやり過ごす。祥子は入ってくる客、出ていく客の視線が途切れるタイミングを待っていた。まだ来る。もう少し………。


「ミキ」

「はい」


祥子の声に合わせて、ミキストリアは大型の荷物を同時に収納に入れた。事前に準備した通りだった。


「バッチリね」


そういって笑いかけてくる祥子が眩しくみえて、ミキストリアは心臓がぎゅっとなったかのような気がした。


「う、うまくいきましたわね」


ミキストリアは、そう短く答えるだけでいっぱいいっぱいだった。


読んだいただき、ありがとうございます。感想おまちしてます。

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