ダンジョン討伐報告2
感想、評価お待ちしております!!
誤字報告ありがとうございました!
激論は長く続いた。ローレンスの、宝具の一部を献上するという判断は良しとされたが、対人特攻付きの強力な剣が侯爵家の手に残ることへの懸念は根強かった。もし万が一の時、ミキストリアの仲間となった魔物を攻撃する必要がもし万が一にも出た場合、その対人特攻は侯爵家以外で補完する意味があるという意見の有効性はローレンスでも否定できなかった。一方で、強力だからという理由で持ち帰った宝具を全て王家に献上するという前例がここでできてしまうのは3公爵としても絶対に避けたい事であった。侯爵家に花を持たせつつ貴族間のパワーバランスを崩さないようにするという難題であった。
所有権はさておき、対アンデッド特攻、対人特攻は強力な切り札である。再びダンジョンが危機的な状況になった時には、宝具を使った戦いが必要になるというローレンスの主張は、誰の反論も許さないものだった。さらにローレンスは、必要な時に使えるのであれば所有権には拘らない、つまり宝具を王家に献上し、必要な際に借り受ける形でも良いと妥協案を出した。借り受けるのは宝具だけでも良いし、使い手と一緒でも構わない、とまで妥協した。ただし迅速に貸出が行われることが絶対であると念を押した。対価についても無償あるいはそれに準じた程度であるべきと主張した。実際に借りられないような費用が掛かるのでは意味がないからだ、と。
さらに、国宝級アイテムを献上する変わりに恩賞を、というローレンスの意見は落とし所としては妥当であった。ヴァレリウス公爵がまず初めに賛成し、中立派のガルシア公爵が続いた。内地派であり本来は貿易派であるヴァレリウス公爵、ユリウス・マルキウス侯爵とは対立する立場であったが、重々しく賛同した。
王太子は恩賞をケチることで事実上自分の元の意見に戻そうとする試みも見せたが、3公爵とローレンスのやんわりとした拒絶でその試みも成功しなかった。
3公爵としても、持ち帰った最高級のアイテムをはした金で取り上げられる未来も、自領で同じようなダンジョン騒ぎがあった時に有効となる宝具の利用ができなくなる未来も、どちらも到底受け入れられるものではなかったからだ。王太子は、冗談めかして意見を取り下げたが、この時の強欲さと他者への思いやりに欠ける態度は王家への信頼を揺るがすのに十分なものであった。3公爵もローレンスも、にこやかに対応していたが、このままでは拙いというのはお互いの眼に映る心情で良く理解できた。その一連を間近にし、リチャード王は微かに眉をひそめ、第二王子アーサーは表情を読まれないようにやや俯き加減にしていたが、それにすらエリックは気づいていなかったようだった。
恩賞の内容でも揉めた。ローレンスが領地を求めたからである。王家への献上品の見返りに領地を与えていたら何れ王家直轄地が無くなる様なことになりかねない。また一度与えた領地はそう簡単には取り上げられない。永代に残る価値を与えるのかという議論になってしまうのだった。
だがこの議論は、魔物を王都から離すというローレンスの説明でひっくり返った。ローレンスの領地は王都の隣であり、シェヴィニーは王都から遠いとはいえ4、5日の距離でしかない。もっと離れた所に住ませたほうが王都の民の心は休まるのではないか、と。
ローレンスは、侯爵家の領地ではミキストリアは広く知られ信頼されているので、領都の侯爵邸に魔物を置いても問題なく、王都から離れた土地を話に出したのはあくまでも王都や周辺の他家の領地を思ってのことだ、と言い切った。この話で揉めるのであれば恩賞は領地でなくても自分は構わない、と。この発言で領地を恩賞とすることはほぼ決まったが、場所についてもまた揉めた。
ミキストリアの異世界知識を取り込みたい貴族としては近くに来て欲しいが、魔物も一緒についてくるとなればまた話も変わる。小さな領地では何かあった時に周辺に直ちに影響が出るが、かと言って無闇に大きな領地を与えるわけにもいかない。魔物たちにそこに居続けてもらうためにも、それが可能となるだけの広さや収益は必要であった。
最終的にヴァレリウス公爵が開発の進んでいない王国南部の島を提案し、6時間にわたる議論に決着が付いたのだった。
(色々と理由をつけて欠席して本当に良かったですわ)
会議を終えシェヴァニーを訪れた、疲れた表情を隠さない父ローレンスからこの日の話を聞いてミキストリアは内心ため息をついた。
読んだいただき、ありがとうございます。




