お披露目試乗会 2
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「ギルド長。ご意見があれば何なりと言ってください。ご存知の通り、あの船は世の中を大きく変える可能性があります。船員の方にも良くも悪くも大きく影響があるでしょう。悪い影響を少しでも減らすためにお知恵を聞かせてください」
ミキストリアは目線だけで頭を下げた。船乗りギルド長はしばらく何かを夋巡した後重い口を開いた。
「聖ミキストリア様、ショーコ様のお考えに手向かうつもりはないのですが、あの船が広まると、帆の操作をする船員は要らなくなります。船員を減らすような活動に参加するのが心苦しいのです」
侯爵領では、聖ミキストリア呼びが広まっており、シェヴァニーでも当たり前のように、聖付きで呼ばれる。隣に座っていた船大工の棟梁がギルド長の肩を諦めろといわんばかりにポンポンと叩く。
「ギルド長、ありがとう。そのような率直な話が聞きたかったのですわ。
確かにこの仕組みが広まれば帆はいらなくなりますからそのための人は要らないと言うことになるでしょう」
「ええ、間違い無いでしょう」
ギルド長は項垂れた。
「ですが、その替わりにエンジンを操作し魔石を管理する人は必要になりますわ。とはいえ人数は今までよりも減るでしょう。減った人は別の船に乗れば良いのではないかしら」
「別の、船、ですか?」
「ええ、この仕組みが広まれば船はもっと便利になりますわ。一度に多くのものを運ぶと言うことでは陸よりも海が有利。風向きに大きく左右されず、多くの荷物が運べるならもっと船は使われるようになるでしょう。多くの船乗りが必要ですわ。帆がなくなっても船を降りるどころか別の船で活躍してもらうことになるのです」
「な、なるほど」
「棟梁とも相談が必要ですが、船を木ではなく鋼鉄で作ったらどうかという案も出ています」
「「何ですと!?」」
「あの魔導ジェットエンジンはもっと出力を増やすこともできると言うことです。ただそれをすると木で造った船体が持たないだろうと。鉄で船を作ればもっと強くできますし、大きくもできると言うことですわ」
「鉄が水に浮くなんてあり得ない」
「うまく作れば浮くのですよ、ギルド長」
「いやしかし……」
「面白ぇ。あ、いや、失礼しました。つい興奮しましてな。いやはや聖ミキストリア様、これは面白いことを聞きました。船大工は全面的に協力しましょう」
「棟梁!」
「ギルド長、良いじゃねえか。船も今のままじゃあ大きな発展は見込めねぇ。沖に出れば魔物もいる。どっちにしても速くて強い船は必要だったんだ。その発展の案が聖ミキストリア様ショーコ様から出された。やらねえ手はないだろ」
「しかし鉄なんて!」
ギルド長の態度は上位貴族相手にするものとしては無礼なものであったが、今日この場に呼ばれた貴族は上位ではあっても開明的であり、新しいものを進んで受け入れ、新しいものの登場で起こる混乱を自分のチャンスに変えたり、そうはならなくても面白がって見るだけの余裕はあるのだった。
「俺も鉄が水に浮くたぁちょっと考えられんのだがな、お2人ができるとおっしゃってるんだ。俺たちが信じねぇでどうするんだよ」
ギルド長が頭を振った。
「はぁ、棟梁がそこまで言うなら仕方ありません。ギルドも協力させていただきます」
「棟梁、ギルド長、ありがとうございます。さきほども言いましたが、侯爵領とヴァレリウス公爵領、辺境伯領への人と荷物の行き来はもっともっと増えますわ。船はもっと必要なことはあっても不要にはなりませんわ」
「うむ、ミキストリアの言う通りだな」
「公爵様」
「我がヴァレリウス家も辺境伯家も王都から離れているからな。そうそう気軽に行き来できぬ。だがこれが船で侯爵領など王都近辺まで簡単に行けるとなれば利用も増えよう。特に辺境伯らは海路は必須。船の改良の手助けは惜しむまい」
「おっしゃる通りです、ルーカス様。我が家も全力で支援しますよ。その代わり最初の船はうちに」
「リナス殿? 1号艦の話は別ではないか?」
「ルーカス様、リナス様、まだまだ先の話ですわ」
ミキストリアはやんわりと割って入った。
「そうですよ。最初の船、0号艦はまだまだ実験ですからうちの船ですよ。
その後、皆さまお手持ちの船をシーキージケスに廻して頂いて、それぞれ魔導ジェット船として改装するのはいかがでしょう? 船を廻すついでに船大工や魔道具師もお連れになったら、船大工は新しい船の議論に参加できるでしょうし、魔道具師は修理や保守を学ぶ機会にもなるでしょう」
「おお! ショーコ! それは良いな」
ルーカス様が祥子の案にすぐに飛びついてくださる。
「その船が皆さまの1号艦ですわね」
ミキストリアも祥子の話に乗った。
「あぁ、そうしましょう」
リナスも裏の無い笑顔であった。
「ハハハ、ギルド長! 良かったな! 大貴族の皆様がこんなに支援してくれる話もそうそう無いぞ」
「あ、ありがたいことでございます」
「棟梁、まさにその通りですわ」
ミキストリアは祥子と見合わせ、うまく行ったと満面の笑みを交わした。やれやれと言う顔のアキトのことは、もちろん全力で無視するのであった。
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