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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
6章 新領地編
85/135

魔導ジェット船試乗 2

感想、評価お待ちしております!!

誤字報告ありがとうございました!


「どうだ!」


桟橋に着けた船を降り、工房へ戻る道も待ちきれないと言うようにアキトが聞いてくる。


ミキストリアは笑顔を向けた。


「ええ、素晴らしいですわ。これで新領地との行き来も早く楽になりますわね!」


ミキストリアが褒めたにも関わらずアキトは逆に眉をひそめた。


「まぁそうなんだが、そうそう直ぐには行かねぇのさ。

エンジン自体の限界試験とか負荷試験もまだまださ。船にしても、今とおなじく木造船だから、むやみと出力を上げればいいってもんでもねえ。船体のほうが先に壊れちまうだろうからな。

とはいえ、嵐の日なんかは別にしても、逆風でもそこそこ進めるはずだから、風を待ったり、逆風でジグザグに進まなくていい分は早くなるな」

「なるほど」


アキトは、工房の庭に案内し、そこで弟子に茶を淹れさせようとするのを、ミキストリアの侍女が止めて茶を淹れてくれる。


「何度も言うがこれはまだ試験機だ。波の少ねぇ湖であの大きさの船を動かすには十分だと思うが、沿岸を行くような大きな船はもっと大きいのがいるだろう。小さいのを幾つもつける、4つとかのほうがいいって考えもある。当面は信頼性を考えると少し大きくして左右に2個ずつ4つっていうのがいいかもな。これなら1つ壊れてもそれまでの半分くらいの速度で進めるし、その間に直すこともできるかも知れねぇしな」

「なるほど?」

「まあどっちにせよ、海の波や風でどうなるかも試す必要がある。海の塩水も魔道具の大敵だ。要は、まだまだやることはあるってことだ」

「つまりはその資金もいるってことよね」

「話が早くて助かるぜ、祥子。エンジンだけならまだうちの工房でできねぇこともねぇんだが、船全体となるとうちの金だけでやるような事業じゃねぇしな。

船乗りがこの仕組みを受け入れるかどうかって話にもなるだろうし、良しとなってもこいつの扱いを船乗りに教える必要もある。簡単な修理ならできるように、港町に魔道具師を置いたほうがいいかもしれねえ。もっと言えば、これを機に船そのものを違う考えで作ることもあるかもな。帆柱をなくしちまうとかな。

 エンジンだけならまだしもそこまでいくと工房でやる仕事じゃねぇだろ」


アキトはミキストリアの向かいのベンチでそっくり返ると両腕を広げた。


「そのとおりですわね。

 でしたらお父様に、いえ、お父様だけでなく、ヴァレリウス公爵家や辺境伯家といった海に面している領地をお持ちの皆さまに一度見ていただきましょう。そして海を行く船のエンジンと船乗り、船そのものの話も相談するのが良いですわ」

「こ、公爵家? いや、そんな急に話を大きくしなくても……」


アキトが慌てたように見てくるがミキストリアは構わず進めた。


「いえいえ、何を言うのです。どなたもこのエンジンは欲しがるでしょうし、新しい考えの船ともなれば侯爵家だけでどうこうするよりも知恵を出し合ったほうが良いに決まっていますわ。何度も説明するより1度で済ませるほうがアキトも簡単ではありませんの? 各家からお一人ずつで5、6名、船乗りの長と船大工の長で5,6名というところかしら。3回ほど船を出せば皆さま試せますわね」

「ま、まぁ、そうだがよ……」

「場所はここでよろしいですわね? お茶や軽食などの準備はこちらでしますわ。アキトはエンジンと船を。

 お披露目が終わったら、シーキージケスで大きなエンジンの制作と沿岸船の改造をお願いしますわね。それまでに船乗りとは何とか話をして、改造船がうまくいけば、船大工と話をして専用の船を作ることも考える、と」


ミキストリアが今後のプランをざっとまとめると隣から祥子が追加してきた。


「修理ができる魔道具師も港町に要るって話もあったわね。エンジンを修理できる魔道具師はちゃんとした訓練と知識を持った人でないと怖いわよね? その研修はアキトにお願いしていいんだよね?」


そっくりかえっていたアキトだったが、弾けるように立ち上がった。


「おいおい、そこまではさすがに手が回んねぇぜ」


座ったまま見上げる祥子は容赦なくいう。


「そのあたりはお弟子さんにお願いするのね。お弟子さんが先生役を1人か2人教えて、その先生が何人か教えれば良いのよ。先生になるにはお弟子さんに教わらないとダメとかにしても良いでしょ」

「な、なるほど?」


アキトが力なく腰を下ろした。


「これは楽しみになってきましたわね。ああ、シーキージケスの拠点はこちらで準備しますわ。工房に必要な広さを教えていただければそれでよろしいですわ。海がこれほど重要になれば我が家の拠点も必要ですしね。シーキージケスに別邸を準備するついでに用意させますわ」

「お、おぅ……。なんか大事になっちまったなぁ」

「何を言っているのよ。工房だけでやる仕事じゃないって言ったのアキトでしょ! その通りなんだから大きな話になるのは当たり前じゃないの」

「まぁ、そうなんだがよ……」


ミキストリアは満面の笑みでお茶を楽しんだ。



読んだいただき、ありがとうございます。

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