魔導ジェット船試乗
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やり取りを聞いていた祥子が笑った。
「お弟子さんのほうがよっぽど礼儀がしっかりしているわね。それはともかく、帆の場合と同じくらいの速度が出るのなら風向きに関係なく進めるあの船のほうが最終的には速く目的地に着けるよね? あとはどのくらい魔石が持つのかしらね? 10分しか走れない、とかだと意味ないでしょう?」
「水の魔石を使うのは実は長時間運転のためでもあるのです。出力を上げれば運転時間も短くなってしまうのですが、朝から夕方まで魔石交換なしに運転できるようにするのが今の目標です」
「なるほど……。あ、帰ってきたわね」
アキトは桟橋に近づくとエンジンを待機状態にし、ゆっくりと桟橋に船を寄せてきた。桟橋まであと1mというところで弟子が投げたロープを桟橋に残った弟子が受けとり、引っ張って船を接岸させた。弟子2人が船を桟橋にロープで固定しているのを見やりながらアキトが降りてくる。
「どうよ!」
「まぁまぁね。操縦が上手いのは感心したわ」
「相変わらず祥子は辛口だな。まぁまだまだ試作だが良い線言ってると思うぜ」
「あと何人乗れるの?」
「そうだな、あと6人までは行けるな」
「そう。じゃあ私と、ミキも乗ってみる?」
「ええ、ぜひ」
「お二人が乗るのでしたら私たちも」
「私も」
「おっと、従者の人はまだしも護衛の騎士の人には鎧は脱いでもらうぜ? 問題ないとは思うが、もし万一船から落ちたときに溺れちまう」
「ぐっ、しかし……」
「しかしもかかしもねぇ。これは譲れねえぜ」
「ヨハン、諦めるか従うかにしなさい。アキトの言い分はもっともですわ」
「はい、ミキストリア様。鎧なしで護衛させていただきます」
「船の上で護衛もなにもねぇと思うがなぁ。まぁいいさ。エンジンがあるから船は桟橋から少し離れてる。踏板を伝って乗ってくれ。乗ったら前のほうにゆっくり移動して座ってくれ。ゆっくりだぞ」
頷くと、弟子に続いて、ヨハン、ジェスト、祥子、ミキストリア、従者マークの順に乗り込んだ。弟子がこんもりとしたものを一人ひとりに渡してきた。
「乗ったらそのベストを来てくれ。それはカポクとコルクが詰め込まれていて、もし水に落ちてもそれを着ていれば浮くようになってるんだ」
「へぇ、ライフジャケットっていうわけね。良く考えてあるわね」
「俺の魔道具がらみで人死にがでるのは困るんでな」
ミキストリアがモコモコするベスト、祥子が言うところの「ライフジャケット」を着ると周囲も着終わっていて、よくよくみると弟子もアキトも同じものを着ているのだった。着ると言っても袖を通し前を2本の紐を結んで閉じるだけである。
全員がベストを着込むのを待ったアキトは軽くうなづいた。
「こいつはちょっと邪魔くさいが、着たままで頼むぜ。それから船の上にいる間は前の紐もしっかり結んでいてくれ。そいつを着てれば、まず溺れることはないはずだ。
行くぜ」
アキトが操作盤をいじり、待機状態だったエンジンを動かす。エンジンがバァァァァーと大きな音を出すと先ほどよりはゆっくりと進んでいくのだった。
「流石に人が多いと遅くなるな」
湖は風も少なく波もほとんどたたない。その湖面を船はスルスルと進んでいった。
「これは大したものですわ」
ミキストリアは魔石を動力として動く、この世界初めての動力船に感心した。
「思ったよりはうるさく無いわね」
祥子も感心しているようだ。
「あ? ああ、音か。そっちは比較的静かだが後はやっぱり騒がしいぜ」
アキトが大声で言い返してきた。
「少し速度を上げるぜ」
アキトが操作盤をいじるとエンジンの音は一段と大きくなり船の速度が上がっていった。湖は波もほとんどなく、舟も大きく揺れるようなことはなく進む。
「「「おおおー」」」
「このくらいはなんとかなるようだな」
アキトは船を大きく旋回させて桟橋に戻るコースを取る。
「アキト! エンジン2つあるけど、1つ壊れたらどうなるの?」
祥子が声を張り上げて質問するとアキトはニヤリと笑った。
「良い質問だぜ、祥子」
アキトが操作盤を弄るとエンジンの音が小さくなり、船の速度も落ちた。さらにアキトは左側のエンジンを止めたようだった。船の速度がさらに落ち、左にと曲がり始める。
「見ての通り左のエンジンを停めたぜ。こうなると当たり前だが左に曲がる。なので舵をこう変えてやると無理やりだがまっすぐ進むってわけよ。速度は落ちるが何とかなるってところだな」
アキトが言う通り船はゆらゆらとしながらも直進していった。アキトは左のエンジンを再始動するとゆっくりと桟橋へ向かっていった。
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