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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
6章 新領地編
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魔導ジェットエンジン

感想、評価お待ちしております!!

誤字報告ありがとうございました!


「よく来てくれた。とにかくこれを見てくれ!」


魔道具師アキトは、ミキストリアと祥子が部屋に入るなり、挨拶もそこそこに興奮した様子で叫んだ。


場所はシェヴァニーの町の中心部から外れたアキトの大きな工房の一室。アキトはミキストリアと祥子に誘われて侯爵領に移って以降、王都時代と同じく生活に密着した魔道具を作っていたが、シャワーと浴場の仕組みを開発した後、それまでの商品の生産を弟子に任せて各地で作られる公衆浴場の建築に協力していた。その後、自動車開発の野望のために広い工房が必要になり、シェヴァニーに開発拠点を移し、領都では生産販売と忙しくしているという。


「ついに完成したのね?」


祥子が興奮した様子で答えた。ミキストリアは、アキトが「エンジン」を開発しているということを祥子から聞いていたし、祥子がネットアクセス魔法で探した知識をアキトに伝えるという形で協力していることも聞いていたが、それだけであり、エンジンなるものがどういうものなのかもよくわかっていない。


「これが祥子も協力していたという、エンジン、ですの?」

「その通り! もっとも完成じゃなくて試験機が動く様になったってところだけどな」


アキトは有頂天であった。ミキストリアについてきた従者や護衛が眉を顰めるのもアキトは気にしないようだ。気づいていないのかも知れない、とミキストリアは思った。


「最初はあっちの世界にあった自動車のエンジン、つまりは内燃機関ってやつを考えたんだがよぉ、まぁ燃料もねぇわけだし、金属の生産や加工もおぼつかねえ。じゃぁって蒸気機関まで立ち返るかっていうと、できねぇことはねぇがやっぱり何かするにはデカい仕組みが必要になって金属加工をどうするって話に戻っちまう。高速回転する部品をどう作るかってのはここでは難問だからな。

道路の整備はようやく始まったところでまだまだ時間もかかるだろ? なら、ミキストリア様も島を貰ったって話だし、船ならジェットもつけられなくもねぇ。ってわけで幾つかあったアイディアを元に作ってみたわけよ。でこれがその試作機だ」


興奮して話すアキトは誰も止められなかった。


祥子が発案した街道整備はようやく街道の幅や構造、土魔法を活用した作り方が決まり、領都からシェヴァニーへ向けて舗装工事が進んでいるところであった。従来の交通もある中、「一車線規制」をしながら拡張もしつつの工事であるため順調に進んではいるが時間がかかるのも事実だった。


(島の話以降、土魔法使いは島で町の造営も手伝っていますからね。街道整備は少し後回しになっていますし……)


ミキストリアは思わずはるか南方の島で働く魔術師達に少しの間思いをはせた。


「確かに色々調べて教えたけど、それにしてもジェットエンジンなんてよく作ったわね。でも燃料はどうするの? 燃料がないのは変わらないでしょう?」


祥子が、そんな遠い目をしているミキストリアの横から聞く。


(祥子はさっきのアキトの説明を理解しているのでしょうか? 祥子のこの様子だとわかっているのかも知れませんわね)


「そこよ。燃料はねぇから魔石を使うのさ。火の魔石でフレイムバーストを起こせば燃料が燃えるのと変わらねぇって気づいたのさ。さらに! 水の魔石と風の魔石を補助に使って出力を上げるってことに気づいて実現した俺はやっぱ天才だろ」

「なるほど。わからない」

「わたくしにもよくわかりませんでしたが、仕組みについてはアキトの発明でもありますしそれはいいですわ。要するに火と水、風の魔石で動くと言うことですわね?」


この世界で動物と魔物を分けているのは、魔石の有無である。魔物は体内に魔石と呼ばれる石を持っており、これによって魔石を持たない動物にはない能力を発揮する。魔物を狩ることで魔石を得ることができ、そうして得た魔石を活用しているのが魔道具である。ジェットエンジンもその意味では真っ当な魔道具なのであった。


「その通り」


アキトは傍のジェットエンジンを手で指しながら頷いた。そのジェットエンジンは直径60cmほど、長さ70cmほどの円筒形で鋼鉄でできているようだった。こちらから見える側の円筒の端は開いており、中には短くて太いサイの角のような形状のものが見えた。


「とりあえず動かして見せるぜ。出力を上げるとちぃっとばかりうるせぇから、アイドリング、あー、待機状態にするだけだけどな」


そう言うとアキトは弟子に向けてクイっと顎を動かした。弟子はエンジンの後方の扉に近づくと扉を開け放った。扉の外側にはキアイスナ湖が広がっており、扉から湖畔までは柵が続いている。


ミキストリアの視線に気付いたのか、アキトが続けた。


「このエンジンは後ろから火を吹くからな。万一が無い様に湖畔に向けて設置してるし、柵で人が入ってこない様にしてあるのさ」


ミキストリアが軽く頷くと、隣の祥子も感心した様だった。


読んだいただき、ありがとうございます。

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