ダンジョン 5F 2
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ヴァンパイアは白く輝く銀髪で、膝までの黒いドレスを着ていた。
「わたくしたちがお相手しましてよ」
ミキストリアはジェフリーとアビーの後ろからヴァンパイアに声をかける。アビーは本来後衛なのだがミキストリアを守るためと言って後に位置するのを断りミキストリアの前で杖を油断なく構えているのだった。
「人間如きが3人で予の相手をするとは、随分と甘く見られたこと」
言うなりヴァンパイアは右手を上げると素早く振り下ろす。それは無詠唱でエアブレードを4つ発動するモーションだった。
ミキストリアはヴァンパイアが手を上げた時点で、何かが来るのを予測し、アビーに伝えていた。ヴァンパイアのエアブレードによる斬撃は、ミキストリアのイージスでは止まらず、だが威力は落ちてアビーのストーンウォールを壊して止まった。
(イージスで止められない。斬撃が速くて反応しきれていないのですわ。なら、もっと速く、もっと速く反応すれば良いのです!)
ミキストリアは気合を入れ直した。
「ほぅ、人間にしては少しはやるなぁ。これはどうだい?」
ヴァンパイアはそう言うと広げた両手を交差させる。10個の魔法の斬撃が飛んできた。
「<グリーンレーザー>」
「<ストーンウォール>」
ミキストリアは構わずレーザーを放った。ミキストリアの前でアビーも土壁を再び出す。
ミキストリアの2本のレーザーはヴァンパイアの斬撃2つと交差し斬撃を消滅させて、ヴァンパイアの右の手のひらを蒸発させる。ヴァンパイアの斬撃はイージスから連動して発動するライト魔法の光源を突き抜けて土壁で止まった。土壁は耐えて崩れなかった。
(発動の速いライト魔法をぶつけるだけでも効果あり! 押し切ります)
ミキストリアが追撃しようとするところにヴァンパイアの笑い声が響く。
「ふふふふふ。よもやここまでやるとは。予も本気を出すことにしようかねぇ」
言うなりヴァンパイアは魔力を集中させるとなくなった右手を直してしまうのであった。さらにヴァンパイアは使い魔のコウモリ何十と出すと周りに侍らせた。ミキストリアのレーザーもアビーの攻撃魔法も全て使い魔のコウモリが身代わりに受けてしまうのである。使い魔コウモリは消滅するがまだ多く残っている。しかも足りなくなればまた呼び出すということも明白だった。
「どうしたかい? もう終わりかい? 少しは楽しめたが、ここまでのようだねぇ」
(レーザーも土魔法の攻撃も魔法とはいえ物理現象。聖属性の攻撃魔法が必要ですわ)
「それなら、<ヒール>!」
とっておきとばかりにミキストリアはヴァンパイアをヒールした。ヴァンパイアの体が薄く白い光に包まれた。ただそれだけだった。
「惜しいねぇ。回復魔法は効かないんだよ。痛くもないが治りもしない。予はそう言う体なのさね。
そろそろ終わりにしようかねぇ」
ヴァンパイアはそう言うと右手を大きく振りかぶった。魔力を集めているようだった。
「シルバン! 杖を!!」
ミキストリアはスケルトンジェネラルと乱戦になっている中から素早くシルバンを見つけると声を張り上げた。シルバンがすかさず杖を投げてくる。が、杖はミキストリアまで届かず手前に落ちた。
「おや? 妙な杖を持っているじゃないか。まさか、それは……」
ミキストリアが杖に駆け寄ろうとすると、天井に張り付いていたアルティンが糸を伸ばし、杖に巻き付けてミキストリアに放った。
ミキストリアは杖を掴むと髪を振り乱してヴァンパイアに向き直りながら杖を掲げて魔法を放つ。
「<マルチプル ライトニング>!!」
必殺ショットに見せたそのライトニングは実は威力は弱めであった。ただし50本の多重化にした。50本の雷は残った使い魔コウモリを全て消滅させ、余った8本がヴァンパイアに襲い掛かった。
「<UVレーザー>!!!」
元々こちらがミキストリアとしては本命であった。レーザー魔法はライトニングと比べるとMP効率が良い。つまり同じMPならライトニングよりレーザー魔法の方がダメージが大きいのである。
大出力UVレーザーはヴァンパイアの右胸にヒットし、斜めに抜けた。ヴァンパイアは背中から血や、肉や骨の破片を撒き散らかして倒れた。
「よしっ!」
ジェフリーが短く完成を上げる、倒れたヴァンパイアが起き上がった。
「そんな……」
アビーが絶望したような声を出す。背中から臓物を撒き散らしながら倒れてそれでも復活するような敵をどう倒せば良いのか。困惑し、打つ手を無くして絶望している声であった。
「くっ」
ミキストリアはMP回復ポーションを収納から取り出すと一気に飲み干した。不味い味に文句を言う暇もない。レーザーでだめならライトニングだ。効率は関係なかった。
ミキストリアが杖を構え直すと、ヴァンパイアは白い光に包まれてにこやかにこちらを見返しているのだった。
「「え?」」
ジェフリーとアビーの驚く声が重なる。
(威力制圧しましたっけ? していないような? もしかしたて咄嗟に? まさか常時発動してはいませんわよね。
いえそれよりヴァンパイアさんですわ)
ミキストリアはため息をつくと姿勢を正してヴァンパイアを見つめた。
「あなたを仲間に受け入れますわ。
あなたの名前はラミーア」
「ふふふ、それこそ予の前からの名。その名を取り戻してくれたこと感謝する、ミキストリア」
「貴様、ミキストリア様を呼び捨てとは!」
ジェフリーが噛み付いた。
「ジェフリー、それよりもスケルトンジェネラルよ。まだ終わってませんわ」
「はっ」
ミキストリアがジェフリーを抑えてスケルトンジェネラルに向かう。スケルトンロードは既に倒されており、クサントスとブーディカもスケルトンジェネラルとの戦いに加わっていたが他の隊員との間合いが違いすぎてうまく連携が取れず、決着がつかずに長引いていた。
そのやりとりを聞いてラミーアが手を挙げる。
「あやつ如きは手土産代わりに予がやろう」
ラミーアが挙げた手を下ろすなり、スケルトンジェネラルは糸が切れたようにバラバラになってその場に崩れ落ちると消えていった。
ミキストリアは頭を振った。馬鹿げた威力の魔法だったからだ。
「ラミーア? なぜこの力を先ほどの戦いで使わなかったのです? この力があればわたくしたちに負けることはなかったのではなくって?」
「ほぅ、ミキストリア。よく見ておるな」
「貴様! 一度ならずミキストリア様への無礼、許さん!」
「ジェフリー!」
「おや? 小僧は予の力を見ても、なんとかできると思っておるのかぇ? オホホホ」
「くっ、貴様」
「おやめなさい! 2人とも!!」
「ミキストリアに救われたな、小僧。
予は女王にして神の妻。人間にして魔を従える者。
故あってミキストリアの世話になることになったが、予はミキストリアに仕えてはおらぬ。
恩ある故、行動を共にするがそれだけの事」
「そんなでまかせを信じるかっ」
「ステータスを見るが良い」
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ラミーア
種族: ヴァンパイア始祖
年齢: 621
職業: ミキストリアの食客、元女王
状態: 普通
LV: 50
MLV: 60
HP: 4048/4048
MP: 11,189/11,189
腕力 181 / 体力 195
知力 183 / 精神 226
速度 132 / 器用 156
幸運 61
スキル:
再生
風魔法 III [レベル封印解除]
影魔法 III [封印解除]
飛魔法 III [封印解除]
無詠唱
隠蔽
属性:
聖属性以外の魔法耐性
不眠耐性
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ミキストリアがラミーアのステータスを見て魔法レベルや最大MPを伝えるとジェフリーだけでなく他の隊員達も静まり返った。
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