ダンジョン 3F 2
「これはどういうことだ!?」
ダンジョン3Fの草原を渡り、岩山の中の地下型ダンジョンを進んだ先の部屋から通路に出たらはじまりの部屋に戻ってきていたのだった。
「ジェフリー、隊の半数を率いてこの階段を進み、どこに出るか確認。周囲を確認したらすぐ戻るように」
「はっ」
「残りはここで警戒」
「「「「はっ」」」」
ジェフリーが半数を引き連れて階段を昇って行くと、待つ間も無く全員が戻ってきた。
「ミキストリア様、この先は先程通った平原と思われます」
「ご苦労様、先ほどの部屋からは一方通行ということね」
「はい、その通りかと」
「なるほど。このことをブーディカは教えてくれていたのですね」
「ギャイ」
ミキストリアが話しかけると、ブーディカは嬉しそうに頷いた。
「ありがとう、ブーディカ。でもここに戻ってきて良かったとも思うわ。こんな大事なことは実際に目で見なくては信じられませんですから」
「ギヤイ」
ミキストリアはもう一度、地下通路と部屋を進み、ケルベロスを討伐しながら、強制転移される出入り口のある部屋までたどり着いた。
「あれが偶然なのかどうか確認のためもう一度進みます」
ミキストリアはそう言うと、部隊を東側の出入口へ進めた。出口の先は最初の部屋だった。
「これは毎回必ずここに戻ると言うことですわね」
ミキストリアは再び通路を部屋を進み、件の部屋から南側出口へ進んだ。進んだ先にはエルダーケルベロスが4体待ち構えていたが、問題ではなかった。次の部屋はボス部屋であり、ミキストリア達はここで野営した。
〜〜〜
ミキストリアたちがボス部屋に入るとそこは土の円形のグランドで、野球場くらいの大きさであった。その部屋の奥中央に寝転がっていた人喰い馬が立ち上がってこちらを睨んでいる。
人喰い馬は体高が2m以上ある白馬で燃えるような眼であった。
ミキストリアが部隊を展開させ、ライトニングを発動するころには、人喰い馬はすでに地面を揺らすような音を立て急速に接近してきていた。人喰い馬は察知したのか首を振って斜めに機動しライトニングを躱すのであった。
「アビー! 斜めに壁! 総員壁の後ろへ!」
「<ストーンウォール>!!」
ジェフリーの采配でアビーが左後ろに流れる岩の壁を作り、ブーディカ含め、全員で壁の後ろに移動したときには、人喰い馬は壁に体当たりをかましていた。10cmほどの厚さの岩の壁は体当たりに耐えきれず、ガラガラと崩れる。
人喰い馬は壁を壊したものの、斜めになっている壁のせいで左後ろに走り去った。
「アビー、ジャクリーン、足場を悪くする! 50cmくらいの岩や氷の塊をまき散らして!
ブーディカは岩や氷の無いところに水を出して!」
「「はっ」」
「ギャイ」
ミキストリアは立て続けに指示を出した。
「シルバン、スエーレ、足元を狙って! 機動力を削ぐ!」
「<ファイヤーランス>」
「<ウィンドカッター>」
岩や氷の塊が散乱して走りにくくなったエリアを避けて人喰い馬は奥側に場所を変えようとしていた。
ミキストリアもロックバードが落とした大岩を収納から人喰い場目掛けて落としたが、これもうまくかわされたのだった。
(自由に走る邪魔になるだけでも十分ですわ)
「<ファイヤーランス>」
「<ウィンドカッター>」
追い打ちと言わんばかりの魔法攻撃も神業のようなステップで避けられてしまう。
{ブーディカ、水お願い!」
「ギャイ」
「<ライトニング>!」
足元を襲った魔法は避けた人喰い馬だったが、横っ飛びに動いた先にはブーティカが水たまりを作り出しており、その水に入るタイミングを測ってミキストリアはライトニングを放つ。
このライトニングも躱されたが、それはミキストリアの予想の範囲で、ライトニングは水溜まりに着弾し、電撃を人喰い馬に与えた。
ギヒヒン、と短く鳴いてゆっくりと人喰い馬が横倒しになった。ビクビクッと動いている。
ミキストリアは威力制圧スキルを載せて魔法を撃つ。
「<ライトニング>!!」
大容量MPをつぎ込んだ、全力ライトニングは轟音と閃光を巻き起こした。金属が焦げたような臭いが立ち込める中、人喰い馬は白い光に包まれて立ち上がった。
(ふぅ、やっと成功したようですわね)
「あなたを仲間に迎え入れますわ。
あなたはクサントス。クサントスと名付けます」
人喰い馬を包む白い光が眩しく光り、消えた。一回り小さくなった人喰い馬が穏やかな目つきで立っていた。
ミキストリアはヒールをかけてクサントスを回復させた。クサントスが懐いてくるので、ミキストリアが首を撫でると、クサントスはヒヒンと短く鳴き、喜んだような表情になるのであった。
ー---
クサントス
種族: ディオメデスの人喰い馬
年齢: 5
職業: ミキストリアの従魔
状態: 仲間入りして高揚
LV: 50
MLV: 43
HP: 5397/5397
MP: 1700/1700
腕力 258 / 体力 273
知力 140 / 精神 102
速度 287 / 器用 103
幸運 59
スキル:
危機察知
身体強化
体術
ブレス
属性:
物理攻撃耐性
強者の誇り
【強者の誇り】 敵対する相手が馬種の場合、可能な限り血を流すことを避ける。
ー---
「いつものようにここで休憩しましょう」
ミキストリアが言うと、隊員が車座になるように集まり、ミキストリアの後ろにはブーディカとクサントスが座るのだった。
「ミキストリア様、ジョルジと魔石の収拾に出ます」
ジェフリーの声にミキストリアは待ったを掛けた。
「ジェフリー? 今回はクサントスを倒していませんから、魔石は落ちていないのではないかしら?」
「そういえばそうですね。いや、念のため、警戒がてら一周してきます」
「そう? よろしくね」
ミキストリアはステータスを見た。
ーーステータス (差分)ーー
ミキストリア ユリウス・マルキウス
LV: 41 [up +1]
HP: 1028/1028 [up +85]
MP: 550/3130
腕力 77 [up +1] / 体力 88 [up +1]
速度 78 [up +2] / 器用 143
幸運 104 [up +1]
称号:
ボス討伐:人喰い馬 (2%/2%) [new]
従魔:ブーディカ、クサントス [new]
ーーーー
(まぁ、こんなものですわね。毎度毎度、聞いたこともないスキルが増えたり、スキルが上がっていたりしたらそちらの方がおかしいと言うものですわ)
ミキストリアは自分のステータスがレベルアップ以外には特段変わった変化がないことで、納得していたが、そもそも一般的にはスキルは滅多に増えたりしないし、習得レベルがどんどん上がると言うこともないというのは失念していた。
「ミキストリア様! 宝箱がありました!」
ジェフリーが勢いよく走り込んでくると、目を爛々と光らせて報告する。
「宝箱? ですか?」
「はい、この部屋の隅にありました。ジョルジが確保しています」
ミキストリアは立ち上がった。
「ここまで、そういったものはありませんでしたわね。以前読んだ物語には、ボス部屋毎に宝箱があるというお話が多かったのですが、今まで全くなかったので、お話の世界だけの事かと思っていたのですわ」
ミキストリアが歩きながらジェフリーに言った。
「はい。王領のダンジョンでも宝箱があったという記録もあるようです」
「それは存じませんでしたわ」
部屋の一角に着くと、確かに宝箱としか呼べない大きなチェストが置いてあるのだった。
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