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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
1章 出会い編
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初めてのお金


「な、何? なんで?」

「クリーン魔法ですわ」

「ベッドが消えたのは?」

「収納魔法ですわ」

「しゅ、収納。あれが収納魔法……」

「もしかしてやっぱり使いたくなるかもしれませんから、捨てずに収納しましたわ」

「そのまま捨てることもできるってこと?」

「ええ、穴が空いた袋に収納するイメージですわ。収納した品は穴から落ちてしまうので取り出せなくなりますわね」

「なるほど。わからない」


目の前で起こる超常現象に、さすがについていけない、というような顔で祥子が言った。


「……ベッド出しましょうか?」

「い、いや、それはいい。大丈夫。驚いた。収納すごいわね」

「祥子が、要らないものと、使わないけど取っておくものを言ってくれれば捨てたり保管したりしますわ」

「そうね、そうするとあっという間に片づきそうね。

ところで収納魔法ってMPだっけ、魔力を消費しないの? 収納している間は時間が止まるって聞いたんだけど?」

「前も魔法の話していましたけれども、本当にこちらの世界には魔術師はいないのですか?」

「居ないわね。少なくとも普通には見かけないわ」

「では何故そんなに魔法に詳しいのですか?

 収納魔法はレアで詳しいことはわかっていないのです」

「そうなんだ。こっちにはフィクション、つまり事実じゃない作り物のお話があるの。その中に異世界を題材にしたお話はたくさんあってね。大体が魔法が使えたり、魔物がいて魔法で戦ったりとかいう世界が舞台なのよ。ステータスや収納魔法はそう言ったお話でよく出てくる魔法なの」


ミキストリアは、頭を振った。そうすることで今聞いたことがなくなるといいのにと思った。自分の秘密を知らない他人同士が話しているような、置いてきぼりにされた感覚だった。


「こちらの方が本当に良く魔法のことを知っているというか想像しているので驚きましたわ」

「そうなのね。わたしはミキの実際の魔法の方が驚きだわよ。

 ともかく、魔法は、収納魔法も人前では使わないでね。1人の時とかわたしとだけとか、そういう時だけにして。

 本当にヤバいから」

「ええ、そうしますわ」


祥子と一緒の時にだけ魔法を使うというのは2人だけの秘密を共有するようでくすぐったかった。祥子のからその言葉を聞くのも嬉しかった。


全てを収納して片付けを終わらせる事もできたが、収納すると祥子が仕分けできなくなるのと、明らかなゴミまで収納しておくのは祥子が嫌がったので、今は主寝室のクローゼットの中身だけ収納することにした。洋服のうちパッと見て上等な仕立てのドレスとスーツは思い出として残し、他は廃棄、アクセサリーなど小物類は残すと簡単に祥子が判断できたからである。


「細かい確認は後でやるにして、買い物に行きましょう」

「ええ」

「今日はこれから色々買い物して、支払いはもちろんわたしがするけど気にしないでね。侯爵家ほど予算はないけど、今日の買い物くらいならあるから」

「そうなのですか?」

「ここ数日、実家を整理してたんだけど、親がわたし名義の銀行口座にお金を残してくれていたのよ」

「ぎんこうこうざ?」

「銀行はね、お金を預けたり借りたりできる場所なの。銀行との取引が口座って単位で管理されているのよ。つまり親がわたしの知らないところで銀行にお金を預けてくれていたってことね」

「そうなのですね。口座通帳というのは何でしょう?」

「通帳っていうのは、銀行の口座でのお金のやり取りを記録した台帳ね。通帳がどうかしたの?」

「クローゼットの中のものを収納しましたが、その中に通帳というのがありましたわ」

「え?

 通帳があった?

 って言うか収納すると分類されるの?」

「ええ、収納内で分類したり同じ物も分けて置いたりできますわ」

「そうなんだ」

「ええ。クローゼットの中のものは、衣類、アクセサリー、小物、その他に分けられていますわ。通帳はその他に。印鑑というのもありましたわ」

「通帳の名義、つまり誰のものかってことなんだけどそういうのもわかるの?」

「少々お待ちに……祥子のですね」

「お、おぅ……」


信号で車を停めた祥子に見せて欲しいといわれて、ミキストリアは収納から通帳を出して渡した。


「ミキ、これすごいよ。一年分以上のお金が入ってる」

「そうなのですね」

「うん、ミキが言った通り、わたしの名前になってるし」


祥子が最初に見つけた通帳は祥子の両親が用意していたものだった。クローゼットにあったものは祥子の祖母が1人だけの孫だった祥子に残してくれたものだった。数年前に祖母が亡くなった時に祥子の母に託され、クローゼットの奥に仕舞われていた。祥子の母は、祥子がまとまったお金が必要になった時に渡す心算だったのだ。


祥子はしばらく通帳を開いて内容を確認していたが、ミキストリアに通帳を渡して収納するよう頼むと、安心と決心がまざったような表情で言った。


「わたしは凄く大事にされてたんだなって」

「ええ」


子供に財産を残す親の気持ちは、侯爵令嬢であるミキストリアも痛いほど理解できた。


「さっきのお金だけどミキのものにしようよ」

「それはいけませんわ」

「だってミキが見つけたんだよ。ミキのものでいいよ」

「そういう訳には行きませんわ。わたくしが収納で見つけなくても、祥子がいずれ見つけたはずですわ」

「それは無いような気がするんだよね。

 さっきも話したけどわたしは両親とは溝があったって。

 服なんてその人本人みたいじゃん。さっきも服はほぼ全部捨ててもらったけど、アクセサリーはともかく、それ以外はろくに調べないで全部捨てると思う。

 通帳があったことなんて気づかない」

「ですが」

「いや、そうなのよ。だからあれはミキがいなかったら無かったもの。ミキのものなのよ」

「そういう訳には行きませんわ」

「もう、妙に固いわね。

 ミキもわかると思うけど、あれはわたしの親が、わたしが好きに使えるようにって残したものでしょう?

 だからわたしはわたしの好きにする。ミキと半分こするわ。決まりよ」

「半分でも多いですわ」

「いいの。それにミキも自由になるお金は必要でしょ?

 わたしはミキのためにお金を使うのは構わないけど、ミキはどうなの?

 払ってもらってばかりというのは負い目みたいな気分になったりしない?」

 

昨日会ったばかりで、祥子がなぜここまで親身になってくれるのか、ミキストリアにはわからなかった。ミキストリアのためにお金を使うのは構わないという祥子の台詞はミキストリアをドキッとさせた。思わず顔が赤らむのがミキストリアもわかるが止められない。ミキストリアは、祥子に顔を赤らめていることが知られないようにそっぽを向くと諦めたように言った。


「わかりましたわ。半分いただくことにしますわ」


「そうしてちょうだい。

着いたわ。行きましょう」


(わたくしが自由にしていいとうことは祥子のためにわたくしが使っても良いということですわね)


突然、意図せず手に入れたお金だったが、これを祥子のためにつかうのは悪くないアイディアだと車を降りながらミキストリアは思っていた。



読んだいただき、ありがとうございます。感想おまちしてます。

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