ダンジョン 2F 2
リザードマン エンペラーの取り巻き4体が体を起こした。4体とも立ち上がった高さが2mから2m30cmはあり、長い尻尾まで入れた体長は5mになるくらいであった。左側リザードマンキングはコピシュを両手に持ち近づいてこようとし、リザードマンクイーンはキングの斜め後ろで杖を構えようとする。右側ではリザードマンジェネラルが円盾とコピシュ、その後ろでアドミラルが杖を捧げようとしている。
(<マルチプル ライトニング>!)
ミキストリアは無詠唱で5つのライトニングを同時発動させた。1つ50MPと足止め用である。ミキストリアの魔法発動はリザードマンクイーンとアドミラルよりも速く、先制攻撃となって着弾し、その電撃で一時的な行動不能に陥れた。
「<ストーンウォール>、<ストーンウォール>、<ストーンウォール>」
同じ頃アビーが水場を岩の壁で囲った。
「<フレイムランス>、<フレイムランス>」
「<ストームブレード>、<ストームブレード>」
シルバンとスエーレが取り巻きの4体に属性魔法を叩き込んだ。
殲滅の剣を抜いたカテリンと長槍をひっさげたグリンダ、盾に片手剣を持つホーウェルとラシードが突っ込んでいく。
「<ライトニング>!」
「<フレイムランス>!」
「<ストームブレード>!」
ミキストリアとシルバン、スエーレは、起き上がろうとするリザードマンエンペラーに向けて攻撃魔法を放った。その横ではジャクリーンとアビーが前衛職のためにアイスシールド、ストーンシールドをいつでも撃てるようにホールドしているはずである。
「ミキストリア様、エンペラーは火属性に耐性がある模様! ダメージが少ないです!」
「アビーと交代! アビーはニードル系で!」
自分の撃ったフレイムランスが思ったほどダメージを与えていないことを見たシルバンの報告に、ミキストリアは瞬時に交代を指示した。
「<ストームブレード>!」
その間もスエーレは攻撃の手を緩めない。エンペラーはライトニングの電撃ショックで行動不能になっており、やられたい放題であった。
「<ストーンニードル>!」
エンペラーの足元から石の針が剣山のように突き出しエンペラーを縫い付ける。
「<ポインタ>、<赤外線レーザー>!!」
電撃ショックから復帰し、唸り声を上げて攻撃に移ろうとしていたリザードマンエンペラーは、喉元に30cmの焦げたクレーターを空けられると、背後に倒れながら消えていった。
ひな壇下ではキングとジェネラルが倒されており、シルバンのフレイムランスがアドミラルを仕留めるところであった。
クイーンの攻撃魔法はジャクリーンが水魔法で打ち消して拮抗していたが、ミキストリアのライトニングで沈んだのだった。
「よぉーしっ」
殲滅の剣を突き上げて、カテリンが歓声を上げた。
「まだよ! 死体が消えないわ!!」
ジャクリーンが声を上げると、カテリンがクイーンに走り寄り、シルバンが詠唱を始める。リザードマンクイーンは閃々と煌めく白い光に包まれて立ち上がった。
「攻撃中止!! ちょっと待って!」
ミキストリアは大声を張り上げた。喉か少し痛む。
(<ヒール>)
こっそり無詠唱で治した。
リザードマンクイーンは立ち上がり、そのまま攻撃してくることなく、頭を下げた。首を差し出すような姿勢だった。
『仲間にしてあげなさい、ミキストリア』
どこからともなく声がする。
「え?」
「「「「「ええ??」」」」
ミキストリアはその声に驚いた。いつぞや以来の女神ユグラドルの声だったからである。そういえば、あの白い光も見覚えがある気もしなくも無い。
「「今の声は???」」
周りの隊員にもその声は聞こえたようだった。ミキストリアはクイーンに向き直った。
「あなたを仲間として受け入れます」
クイーンは頭を上げるともう一度お辞儀するように頭を下げた。こちらを見る顔はなんとなく喜んでいるように見える。
「「「「……」」」」
周りを見遣るとポカンと口を開けて呆然としていた。
「あなたに名前を授けましょう。ブーディカ。これからあなたはブーディカですわ」
ミキストリアがクイーンに名を授けると、クイーンを包む白い光は一瞬強く輝いて消えた。
ー---
ブーディカ
種族: エンデミック リザードマンクイーン
年齢: 4
職業: ミキストリアの従魔
状態: 仲間入りで高揚
LV: 40
MLV: 50
HP: 1464/2929
MP: 4048/4048
腕力 223 / 体力 230
知力 160 / 精神 113
速度 103 / 器用 103
幸運 67
スキル:
水魔法
属性:
水魔法耐性
物理攻撃耐性
王家の誇り
【王家の誇り】
敵対する相手がリザードマン種の場合、可能な限り血を流すことを避ける
ー---
(戦う前にサーチした時には、リザードマンクイーンでしたが、そこからエンデミック リザードマンクイーンになったということでしょうか? 固有種ということですわね。なかなか侮れない強さですわ)
ミキストリアがテイムしたリザードマンクイーン、今やエンデミック リザードマンクイーンのステータスを眺めていると、フリーズから復帰した隊員が押し寄せてきた。
「ミ、ミキストリア様、説明してください」
「ご説明をお願いします!」
「魔物を仲間にするとは、どういうことでしょうか!?」
誰もが必死であった。
「隊員のみなさん、落ち着いて。
先ほど見たように、あの白い光は女神ユグラドル様の手によるものですわ。
隊員のみなさんも、仲間にしろという女神様のお声はききましたでしょう?」
「あ、あれが、女神ユグラドル……」
「ミキストリア様はどうしてあの声が女神様のものとわかったのでしょうか?」
ミキストリアはカリンに微笑んだ。
「これは侯爵家の秘匿事項ですが、わたくしが失踪していた間、女神ユグラドルのご指示で別の場所で研鑽を積んでいたのです。いわゆる、修行というやつですわ」
「修行……」
「ええ、その際も、あの白い光とあの御声でご神託を頂いたのです」
「「「……」」」
「隊員のみなさんも見ての通り、先ほども仲間にせよとご神託を頂き、その通りにすると、ブーディカはあの通り、わたくしたちの仲間になったのですわ」
ミキストリアがそう言ってブーディカに視線を移すと隊員たちも同じくブーディカを見るのだった、ブーディカは話が分かるのか,にこにこというような顔つきで待っており、皆が振り向くと、軽く頷いて見せた。
「こちらの話が分かっているような反応ですね……」
「そういうことでしたら、もうあの魔物は敵ではないということで???」
「ホーウェル? あの子はもうブーディカという名を持っています。魔物呼ばわりなどするものではなくってよ?」
「ははっ、失礼しました」
「謝るならブーディカにね」
「え? あ、はぁ。ブーディカ殿、大変失礼した」
ミキストリアの軽く怒気を含んだ声に怯んだホーウェルが、ブーディカに向き直って謝ると、ブーディカは、ギヤァと一声鳴くのであった。
ミキストリアは、アビーが部屋の最奥に造った土壁を撤去してもらうと、そこにあった水も遠隔で収納した。ミキストリアがかなり離れた距離にある水を遠隔で収納するのを見た隊員達はもう驚くのに疲れたような表情であった。
【リザードマンエンペラーの恵の宝水】
ダンジョンによって生成された魔力を含む水。竜やワニ、トカゲ、カメ、ヘビなど竜己類のHPとMPを75%回復する。
リザードマン貴種のHPとMPを100%回復する
「なるほど、この水は良いものですわね」
誰にともなくそう言うと、ミキストリアはブーディカに近づき、恵の宝水を1L収納から出した。宝水はブーディカの前に小さな水たまりを作る。ブーディカは、ギュゥ、と小さく鳴くとその水を舌を使って飲み干したのだった。
「地上にもどったら、飲みやすい器をさがしましょう」
ミキストリアが語り掛けるとブーディカも嬉しそうに見返すのだった。
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