ダンジョン1F ボス討伐報酬
「みなさん、怪我はありませんこと?」
ミキストリアは周囲を見回し、欠員も倒れている隊員もいないことを確認して言った。
「「「ありません!」」」
「カリン、コルビーに直してもらって今は問題ありません」
「そう、良かったわ。ここでしばし休憩します。ラシードとジョルジはドロップアイテムの収拾をお願い」
「「はっ」」
ミキストリアは殿を務めていたラシードとジョルジを送り出すと、その場で隊員と車座になる。収納からお茶セットを出し、カリンとコルビーに入れてもらう。お茶請けに甘いクッキーも出した。
「ミキストリア様、魔石と大剣、指輪を収拾しました!」
「ご苦労様」
ラシードとジョルジが戻り、お茶が全員に行き渡るのを待って続けた。
「隊員のみなさん、お手柄ですわ。ほとんど損傷なくオークキングとオークジェネラル4匹を倒したのは誇らしいことですわ」
「「「「ありがとうございます!」」」」
「そういえばレベルアップしたのですが、隊員のみなさんはいかが?」
ミキストリアはステータスを確認した。隊員もステータスを見ているようで、「おぉ」「やった」などと騒めいた。
ミキストリア ユリウス・マルキウス
種族: 人族
年齢: 20 (=24=)
職業:
聖人候補(推薦:ユリウス・マルキウス侯爵領)
侯爵家魔法師団 魔法研究分隊 分隊長
祥子の同性パートナー、養親
状態: やや疲労
LV: 39 [up +1]
MLV: 53 [up +1]
HP: 849/849 [up +32]
MP: 498/3130 [up +213]
腕力 74 / 体力 87 [up +1]
知力 152 [up +1] / 精神 163 [up +2]
速度 75 [up +1] / 器用 143 [up +2]
幸運 101
スキル:
聖魔法 IV、闇魔法 IV、雷魔法 IV [up]
魔法多重起動
術式改造 II
無詠唱 II
鑑定
パッシブスキル
魅了
三角関数
医学 (血液、整形外科、神経、皮膚)
魔法連携 II
高度回復
異世界言語理解(読む、聞く) ※チート
属性:
女神ユグラドルの導き(中)
養子x2
称号:
ボス討伐:オークキング (2%/2%) [new]
(久しぶりの戦闘でレベルも魔法レベルも上がるのはわかりますが、雷魔法の習得レベルがまた上がった? レーザーも雷ということですの?
そしてこの、称号? にボス討伐? 2%/2% とは一体……)
ミキストリアはステータス表示を睨み付けるように注視した。
【ボス討伐: オークキング】オーク全般への攻撃力上昇、相手の攻撃力減少
「そういうことですのね」
つい口にしていた。
「ミキストリア様? いかがされました?」
「あ、いえ、隊員のみなさんのステータスにも、オークキングのボス討伐称号がついているのではないかしら?」
ミキストリアは隊員を見回した。
「はい」
「あ、そういえばあります」
「今まさに、これは何だろうかと言おうとしていました」
「どうやらそれは、補正効果のようですわ。こちらからの攻撃はダメージが上昇し、相手からの攻撃はダメージが減少する、ということのようですわね」
「「「おぉぉぉ」」」
「「「なんと!」」」
「そしてその効果はオーク全般ということです。なのでオークキングだけでなく、オークやオークナイトでもそうなるということですわね」
「ミキストリア様、それはありがたいことなのですが、ミキストリア様はどうしてそれをご存知で?」
質問をして来たカテリンにミキストリアは笑顔を向けた。
「わたくしのステータス魔法は細かいことがわかるのですわ」
「それはまた、さすがミキストリア様といったところでしょうか」
ミキストリアはクッキーを頬張った。大出力の魔法を大盤振る舞いした身に甘さが染みた。
「だいぶMPを使いましたので長く休憩を取りたいのですが、いつまでもここに居る訳にもいきませんわ。回復の途中でオークキングと再戦するのは下策。
王領ダンジョンの記録によると、魔物ボスもまた一定時間ののちに復活というかまた沸いて出てくるそうですが、最短で6時間、間が開くということですわ。
今の時点で2階に降りた部屋にはリザードマンウォリアーが1匹。オークキングよりは容易な敵でしょう。オークキングがいつ復活するかはわかりませんが、2時間休憩ののち、2階に移動してリザードマンウォリアーを討伐、そこで長めの休憩としたいと思います。
2時間の休憩で次の戦闘ができるまで回復しますか?」
最後の部分をミキストリアは魔術師たちを見やりながら聞いた。
「1、2匹であれば問題ありません」
「同じく問題ありません」
火属性のシルバンと風属性のスエーレが答える。ミキストリアは笑みを深くした。
「それでは2時間後に出発、2階でリザードマンを倒して昼休憩としましょう」
ミキストリアの言葉に隊員達が頷いた。
(そういえば、ドロップアイテムの大剣は見事な拵えでしたわね)
ミキストリアは傍らに置きっぱなしにしていた大剣を改めて眺めた。
(そういえば鑑定スキルを意識して使ったことがありませんでしたわね。試しにやってみるのも悪くありませんわ。<鑑定>)
ミキストリアは無詠唱で大剣を鑑定した。
【オークの宝剣 殲滅の剣】
オークキングに代々伝わる秘宝の一つ。鞘から抜かれた殲滅の剣は血を吸うまで鞘には戻らない。
抜刀時にMP消費。抜刀中は速度5%減。
オーク以外の人型生物に対して攻撃力増。雄に対して攻撃力増(効果重複)。
増加量は消費MPに依存。
(これはまた、日本のラノベに出てくるような剣ですこと)
お茶で喉を潤しつつミキストリアは利用法を考えた。
(すくなくとも討伐で使う分には鞘に戻らないデメリットはないはずですわね…)
「カテリン?」
「はい、ミキストリア様、いかがされました?」
ミキストリアに呼ばれたカテリンが近寄って来た。
「先ほどのオークキングがドロップしたこの大剣ですが、カテリン、あなた、使ってみませんこと?」
「何か曰くがありそうですね」
「ええ。話を全部聞くまで大剣には触れてはなりません」
「……はい、もちろんです」
「この大剣は、オークの秘宝とされるもので、銘は殲滅の剣とのことです」
「それはそれは……」
「ええ。かなり物騒な名前ですわ。この大剣は一度抜くと、血を吸うまで鞘には戻らないそうです」
「えぇ!?」
「先ほど、ステータス魔法で細かいことがわかると言いましたが、実はそれは、鑑定というスキルの効果なのです」
「「「「えぇぇぇー--???」」」
そば耳を立てていた他の隊員も驚きを隠せないようだった。
「隊員のみなさんにも聞いてもらったほうが良いですわね。繰り返しますが、この剣は抜くと血を吸うまで鞘に戻せない、とうことです。殲滅の剣という銘からも、『血を吸う』は、単に傷つけるということではなく、相手を倒す、ということになるかと思いますわ」
「「「……」」」
「ですので、無暗な使用は厳禁。魔物討伐のみの利用とするのが良いでしょう」
「あ、はい」
「使用する際にはMP消費し、また抜刀中は速度が5%遅くなるようですが、その替りにオーク以外の人型生物への攻撃力増と雄に対して攻撃力増、という効果があるようです。オークの秘宝の大剣に相応しいといえばこれほど相応しい効果も無いのかもしれませんわね」
「オークは女性を攫いますから、雄は敵ということですか。なるほど……」
ミキストリアは眉を顰めて続けた。
「ええ、不愉快な話ですが。性別の無い魔物もいるでしょうから半数とまではいかないにしても、半数近い敵に対して攻撃力増というのは対魔物戦で有利ではないかしら?」
「そうですね。はい、使わせていただきます」
「速度低下には要注意ですわよ」
「はっ」
「この討伐が終わったら宝物庫で保管し、討伐にのみ使用するよう厳密に管理するよう、お願いしますわ」
「承知いたしました」
ふと気になったミキストリアは、一緒にドロップした指輪も鑑定した。
【疾風の指輪】
オークキングに代々伝わる指輪。
戦闘中の速度を5%上昇させる。
効果は大したことは無いが、宝剣と同時に使用することで宝剣のデメリットを打ち消す。
「ふふふ」
「ミキストリア様?」
つい笑みをこぼしたミキストリアに、横にいたグリンダが怪訝な目を向けてくる。
「この指輪も収拾したのですが、これは戦闘中の速度が+5%する、というものなのです。大したことの無い効果ですが殲滅の剣とセットで使うべきアイテムですわ。カテリン、これを」
(大したことはない、とは鑑定スキルもなんというかお茶目ですわね)
〜〜〜
2時間後、休憩を切り上げてミキストリアは2階へ降りる階段に向かう。階段はボス部屋の奥にあった。サーチの結果、やはりリザードマンウォリアー1匹なので近接戦闘役に当たったグリンダは長槍に獲物を変えて降りて行ったのだが、カテリンの殲滅の剣の一振りで、リザードマンウォリアーは沈んだ。長槍も遠距離からの魔法攻撃も要らなかった。
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