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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
4章 侯爵領編
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七海へのメール


ミキストリアは、母にこってりと絞られて以来、祥子の部屋での「お泊まり」も適度に日を空け、無茶もしなくなっていた。あくまで「当人比」ではあったが。


そんなお泊まりのなかった朝、まだ起きたばかりのミキストリアの部屋にサマンサを伴った祥子が興奮して入ってきた。もちろんナイトドレスにガウンを羽織っただけの格好で、他の人に見られたらまずいことこの上ない状態である。先導するサマンサも諦めたような表情であった。


「祥子。どうしましたか? そんなに急いで」

「ミキ! それどころじゃないのよ。七海に連絡がつくかもしれないの」

「例の手紙は届いたと思いますわ」

「いやあれじゃなくって!」

「ちょっと落ち着いてくださいませ、祥子。マリア、今日はここで朝食にしますわ。準備をお願いね。お母様や、サラ、ヒラリーにも伝えておいて。サマンサもよろしくね」


ミキストリアは、マリアとサマンサが準備のために部屋を出ていったのを見届けた。


「これでしばらくは2人ですわ。祥子、一体何があったのです?」


祥子がした話は異世界を1年間経験したミキストリアにも、驚きの話であった。


祥子は、魔法の練習も兼ねて寝る前には出来るだけMPを使い切って寝ることにしていた。その際に使うのは異世界のネットをアクセスする恐らくは祥子固有である天属性のチート魔法<ブラウザ起動>である。昨晩、ブラウザを起動した祥子は、今まで検索するだけにしか使っていなかったのだがふと思いついて、メールのサイトを開いたところ呆気なくメールのポータルが出てきたと言う。昨晩はそこまでしかできなかった。そこでMPが切れたからだ、と。


だが、メールのポータルにアクセスできたと言うことは、ログインしてメールが読み書きできる、つまりメールで七海とやり取りができるかもしれない。


「それは驚きですわね。祥子がナイトドレスのまま飛び出してくるのも頷けますわ」

「でしょ? わたしがマナーをまる無視したって事じゃないのよ」

「祥子、この件は誰にも言ってはダメですわ。この家の者もだめです。危険すぎますわ」

「そ、そうね。うん、この件はミキとわたしだけにする」

「ええ、お願いしますわ。で、やってみますの?」

「うん、ミキにも見えないけど、一緒にいて欲しいから」


祥子が小首を傾げて頼んで来る姿は意図したものではないのだろうが、ミキストリアは抵抗できない。この場合には抵抗する気もなかったが。


「わかりましたわ」

「ありがと。じゃあやるね。<ブラウザ起動>っと。<メールポータルを開く>

 うん、今メールのポータルまで来たよ」

「ドキドキしますわね」

「<メールアドレスに shoko………を入力>、ちょっと待って?」

「どうしました?」

「メールポータルにログインするんだけどパスワードが要るじゃない!」

「はい、そうですね。わたくしもまだ覚えていますわ」

「ネットアクセスはいちいち魔法で操作することになるからパスワードも詠唱しないといけないのよ」

「そうですわね」

「パスワードがバレるじゃない!」

「そうですわね………。でもパスワードがバレても誰もネットアクセスは出来ませんわ」

「あ、そう言えばそうね。いやそうじゃなくって、恥ずかしいじゃない!」

「恥ずかしいのですか? パスワードが?」

「くぅう。自分の部屋でやってくる。すぐに戻るから」


祥子は顔を真っ赤にすると勢いよく出ていった。

朝食が載ったワゴンを押してきたマリアが驚いた。


「ミキストリア様、また一体何をしたのですか? ショーコ様が真っ赤なお顔で出ていかれましたが?」

「わたくしにもよくわからないのですわ。ですが問題もないはずですから、すぐに戻ってくると思いますわ。それで朝食の用意ができたら祥子と2人で話があるので、マリアとサマンサも楽にしていて」

「承知しました。隣におりますので御用の時にはベルでお呼びください」


マリアとサマンサが朝食をテーブルに準備し部屋を出ていくと、すぐ入れ替わりに祥子がドヤ顔でもどってきた。


「メールにアクセスできたわ!」

「ふふ、まずは第一歩ですわね。ところで祥子、先程のパスワードですけど、無詠唱でやればよかったのではないかしら」

「そ、それを先に言ってよね!」


祥子が崩れ落ちた。


「広い侯爵邸を急いで行ったり来たりしたのに……」

「わたくしもいま思いついたことですし。次回からでも良いのですわ。それで、メールは読めたんですの?」

「まだ読んでないけど、ここまで来たら読めると思う」


祥子は気を取り直したようで、朝食が用意されたテーブルについて、お茶を口にした。


「沢山来てるメール読んでもしょうがないから、いきなり七海にメール送ろう。何て言おうかな?」


ゆっくり朝食をとりながら相談し、こちらの状況を手短に伝え、ミキストリアが今悩んでいる攻撃魔法について質問することにした。メールの作成と送信でMP切れを起こすことは想定内だったため、ミキストリアと祥子は朝食を終え、ベッドに腰掛けた。



ーー 七海へのメール ーー

宛先: 七海 <nanami773@……>

題名: 異世界より


七海、元気? 手紙届いた?

ミキも私も元気。私達結婚した。事実婚ってやつ? それで、子どもできた! 2人。もちろん養子。3歳と4歳。めっちゃ可愛い。

ミキに静かな攻撃魔法が必要。アイディア求む。


これ書くのも魔法でまだ短いのしか書けない。また明日やるね。

祥子とミキより

ーーーー


「ふーっ。これでいいわね。<メール送信>っと」


送信を終えるとやはり祥子はMP切れを起こしミキストリアに倒れかかってきたのであった。


「マリア! サマンサ!」


1人では祥子を動かせなかったミキストリアはマリアとサマンサを呼んだ。ベルに手が届かないので、大声を出す。


「「ミキストリア様!!」」


普段耳にしたことがないミキストリアの大声に慌てて2人が入ってくる。


「ショーコ様!」


ミキストリアが抱えていた祥子をサマンサが引き取ってくれた。


「ミキストリア様? ショーコ様に何をしたのですか!?」


ぐったりとしている祥子を見たマリアは何か誤解をしているようだった。


「マリア? 違うのよ? とりあえず祥子をここに寝かせて」

「後で説明していただきますよ。とりあえずはそのまま横に」


マリアとサマンサの手を借りて、祥子をミキストリアのベッドに寝かせることができたのだった。


「マリア、サマンサ。何か勘違いしているかもしれないけど、祥子がMP切れになるまで魔法を使ったのです。こうなるかもしれないとわかっていたのでベッドでやっていたのですわ」


(マリアとサマンサの視線が冷たいですわね。解せません……)



〜〜〜



七海は朝起きて一瞬自分がどこにいるかわからず戸惑った。


「ここどこ? ってショーコの家に泊まったんだったっけ」


七海は異世界からのチート手紙を受けとった後、仕事を早めに切り上げられる日にちょっと高級な惣菜とパン、ワインを買い込んで祥子の家に泊まった。家は広く、快適で、楽しかった記憶があちこちに残っていた。


「でも、ここでずっとっていうのは違うかな」


天井を見上げて昨晩のこの家での生活を思い出してつぶやいた。楽しい記憶は残っているが、それに一人で浸るのはこの先辛くなりそうだった。


勢いをつけて起き上がり、ベッドサイドに置いてあったスマホを取る。


「はぁ〜〜〜? 何これ!?」


祥子からのメールが来ていたのだった。


「悪戯や詐欺ってことはないなぁ、流石に『異世界より』はないでしょ、詐欺だったら」


メールを開いた。


「はぁ〜〜〜〜〜? 結婚〜〜? 子ども〜〜〜? ぶっ飛んでんな〜、異世界。

 チート貰ったってまさかのネットかーい。しかもメールできるなんてインチキすぎるじゃん。ふふふ、ははは。可笑しすぎる」


七海はコーヒーを淹れると、ノートパソコンを開いてメールを書き始めた。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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